第44話 とある部分が触れた場所は熱くなる。
「私の寝かしつけにかかれば、ご主人様は直ぐに寝られますよ」
「放置してくれるのが、一番の寝かしつけ方法だよ」
俺のツッコミ虚しく、ルーダは俺の首元に腕を回し、優しくお腹をポンポンと叩いてきた。
「俺を子供かなにかと勘違いしてんじゃねぇのか?」
「私には、こんなに大きい息子はいません」
「その言い方だと、小さい子供はいるみたいになるぞ」
「――///」
「なんで頬を赤く染めてこっちを見るんだよ! 俺とお前はそういう関係じゃねぇだろ!」
カエデも居るんだから、勘違いされるような反応は止めてくれ。眠りについてはいるが、いつ起きるか分からないんだから、配慮をしてくれよ。
カエデの方に目をやったが、近くで声を上げているにも拘わらずスヤスヤと眠っている。
「安心してください。私はまだ処○なので、処〇厨のご主人様でも安心してやれますよ」
「俺は別に処〇厨じゃねぇよ! それにやれるとか言うんじゃねぇ!!」
「何変な妄想しているんですか。ただ私は将棋をやれると言っただけですよ」
「いや、急に将棋をやれるって意味分からねぇよ」
ルーダは将棋なんてやったことないだろ。
そもそもこの世界に将棋なんてもの存在しないんだからよ。ん? この世界ってなんだ? 将棋ってなんだ?
メタい考えはここまでにして、どうにかしてこいつらを自分の部屋に帰らせて、安眠を確保しなければ、明日のポテスト商会で起こるであろう襲撃に備えられねぇ。
「そろそろいいだろ。お前たちは自分の部屋に帰れ」
「そんな……酷いっすよ」
「そうですよ。あー、ご主人様酷いです」
サイカは涙ぐみながら、ルーダは棒読みでこちらを見つめてきた。
だが俺は知っているぞ。サイカは左手に目薬を持っているだろ。それを俺が見てないところで差して、泣いているように見せている。
そしてルーダは思っていないことを隠すつもりがないだろ。
「はぁ、帰るのは諦めるから、せめて静かにしてくれ」
「はいっす!」
「人が寝ようとしているのですから、当たり前です」
その当たり前をできないのがお前らだろ。
俺の両端にいるカエデとルーダは俺の腕に抱きついてくる。そして俺の上に乗っているサイカは眠りについた。
カエデは無意識なため仕方ないが、ルーダは分かっててやっているだろ。お前はそこそこあるんだから、抱きついてきたら嫌でも温もりを感じるぞ。まあ別に嫌ではないが。
「羊が1匹むにゃむにゃ……羊が2匹むにゃむにゃ」
こいつ寝言でも羊を数えるのかよ。でも起きている時に比べると語尾の“っす”が消えているから、まだマシな方か。
このくらいの声なら寝れそうだ。
睡魔が襲ってきて、俺の意識は深い暗闇へと消えかかっていた。
しかし扉が開く音が邪魔してきやがった。
4人がここにいるんだ。扉を開けられる奴なんて1人しか居ない。
「寝れない。なにかいい方法を教えろ」
睡眠に対しての一番の敵であるルナの襲来だ。
ツッコンで部屋から追い出そうとしたが、サイカたちはもう寝ているため、声を上げることができない。
「無視するんじゃない!」
「ぐへぇっ」
やばい! 俺が無視していると思って突撃してきやがった。俺の布団へ勢いよくダイブしてきた。俺の真上から降ってきたルナの身体は、俺の上に乗っているサイカを押し潰した。
変な声を上げたサイカは深い眠りについてしまった。完全に力の抜けたサイカとルナが上に乗り、両脇はカエデとルーダに抑えられている事で、俺は完全に身動きが取れなくなった。
「あっ、この匂いはなんか寝れそうだ」
こうして女性陣は全員眠りについた。
俺が一番眠りたいのに最後まで眠れないなんて、最悪なオチだ!!
俺が眠るまでこの話は終わらない。
どうにかして眠りたいが、全身に感じる圧迫感のせいでなかなか眠れない。
「羊が3769匹むにゃむにゃ……羊が3770匹むにゃむにゃ……」
「ぐがぁぁぁぁ」
胸元では嫌がらせの如く、大量の羊を数えているサイカと爆音のいびきをかいているルナ。
両脇は腕が鬱血するほど抱きついてくるカエデとルーダ。
寝てもなお、こいつらは俺の睡眠の邪魔をしてくるのか。
そろそろ眠くなってきたな……明日は俺にとって転機となるのか、命日となるのか、ポテスト商会の子飼いたちは、どれほどなんだろうな
そんな考えを抱きながら、睡魔へと身を任せていった。
次回マサヨシがポテスト商会に出向します。
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