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第33話 ギャンブルは引き際を見誤ると破滅する。そもそもギリギリで生きている人がギャンブルに手を出せばそれはもう破滅したも同然。

 結局ルナもついて来ちまった。せっかく遊びに来たって言うのに、こいつがいると何を仕出かすか分からないから、気が休まらねぇんだよな。


「ここがカジノか。よし! ブラックジャックとやらに全額ベットだな!!」


「ルールも分からないのに挑むなんてポンコツだろ!」


「私はポンコツではなく、バカなだけだ!」


「あー、そうだったな。バカだったとしてもスって終わりだから、バカもポンコツも変わらねぇよ」


 なんでこいつはバカに拘るんだろうな。てか、バカも悪口なんだから、否定すればいいのにと思ってしまうが、否定するのが憚られるほどのバカなんだろうな。


「マサさんの言う通りっす! この中で一番知識のある私に任せれば、2倍、3番……いや、5倍にしてみせるっす!!」


「いや、1度破滅経験のあるやつなんかに任せられないだろ。それに5倍なんて絶対に無理だろ」


「やらなきゃ分からないっす! そしてやらない奴には、絶対に無理なのだけは確定しているっす!!」


「それはそうだが……チッ、正論ではあるから、反論ができねぇ」


「ふふん」


 ない胸を張って自慢気な顔をしているこいつは、ムカつくよな顔をしているな。だがカジノ内で頭をグリグリしようものなら、すぐに追い出されてしまうだろうから、動けなくてもどかしいな。


「……来月の給料は減給な」


「なっ!? 不当減給っすよ!! 私は断固戦うっす!!」


「お客様。それ以上騒がれますと強制的に追い出しますので」


 引き締まった身体に、俺たちを警戒しているであろう立ち居振る舞い……こいつ、かなりやれるな。まあ治安が悪くなりそうなカジノで、治安を維持するにはそれなりの人材が必要だし、当然だけどな。


「すいません。ほらお前らも謝れ」


「すいませんっす」


「なぜ私が謝らなければならない!」


「ここで謝れないのなら、バカではなく非常識だ」


「むっ、それは良くないな。悪かった」


 全く頭は下がっていないが、相手も仕事で、ここら辺で引き下がるだろうから、これ以上ルナに謝罪を強要するのは悪手でしかないから、ここら辺が及第点だろうな。


「……次騒いだら、追い出しますから」


 そう言って黒服の男は部屋の奥へと消えていった。ふぅ、遊ぶ前に追い出されて出禁を喰らうところだったぜ。だが、


「お前らと一緒にいると追い出されそうだし、早く遊んで、早く帰るぞ」


「そうっすね」


 俺とサイカはルナのことを見て言った。当の本人は何も分かっていないのか、どんなギャンブルがあるのか見渡していた。


「おっ! あれは楽しそうだ」


「お前一人で行っても、金がないだ……ろ? って俺の財布がねぇ!! あいつ俺の金でやるつもりか!! 追いかけるぞサイカ!!」


「マサさん、騒いだら本当に追い出されるっすよ!!」


 確かにと思い、さっきの黒服の方に目をやったが、明らかにこっちを睨んでいた。このまま騒げば追い出すぞという目をしているな。


「そうだな」


「あっ! やばいっすよ! ルナさんが何か分からないっすけど、席に着いたっす!」


「お金を賭ける前に止めないと! ……そもそもチップに変えてないから使えなくないか?」


「いや、ディーラーは現金とチップの交換をできるっす!」


「なら急ぐぞ!」


 走ると追い出される可能性が高くなるため、俺たちは競歩のようにカジノ内を歩く。

 しかし俺たちの努力虚しく、ルナの声がカジノ内に響き渡った。


「赤に全ベットだ!!」


「なっ!? 全ベットってバカだろ!! 見た感じルーレットだろうから、確率は2分の1になるだろうが、どうにでも細工できるルーレットでいきなりの全ベットはバカとしか言えないだろ!!!」


「ルナさんはバカっすよ」


「そんなの分かってる!」


 もう賭けてしまったものは後から取り止める事はできないため、赤に入ることを祈ることしかできなかった。

 いくら金を持っていても、大金が一気にゼロになるのは心が痛むから、嫌なんだよ。そもそも俺は一度の収入は大きいが、滅多に働かないから収入があるのは数ヶ月に一度だし、出費も大きいから、貯金がある訳では無いんだ。

 ルナの全ベットに息を飲むのは俺たちだけでなく、周りの客、ディーラー、黒服、近くにいる人全員がルーレットに目が釘付けだ。なぜなら俺の財布には大金が入っていたからな!!


「赤の16」


 ディーラーのコールがした後、一瞬静まり返ったその場は、ルナを称える声が響き渡った。こいつはタダのバカじゃなくて、豪運なバカだったのか。


「よく分からないが、勝ったのか。私は飽きたから先に帰る」


「相変わらず自由だな」


 帰ろうとするルナは、俺に全チップを渡してカジノを後にした。こういう場合、女性の繁華街からの帰り道は心配するものだが、ルナに限って言えば襲った相手の方が心配になる。まあ襲った時点で自業自得としか言えないけどな。


「ルナさんが帰ったっすから、私たちでカジノを楽しむっすよ!」


「ああ、ルナにできて俺にできないわけないからな」


「あれ? マサさん、ムキになってるっすか? もしそうなら止めておいた方がいいっすよ」


 俺はサイカの忠告は一切無視して、カジノに勤しんだ。その収支は……


「マサさん、やばいっす。一時間でこれは、まじでやばいっす」


 サイカの語彙が無くなるほどやばいみたいだな。まあ、サイカに語彙は元々ないけどな。


「……あれだけの大金がゼロになるなんて、ある意味才能っすよ」


「……金はまだあるんだ」


「通帳をどうするつもりっすか! 流石にこれ以上はやめた方がいいっすよ!!」


「いや、ここが勝負のときだ!!」







「なるほど、それでご主人様の全財産がゼロになったという訳ですか」


「はい」


 カジノから帰った俺は、ルーダの前で正座をさせられていた。いや、自らの意思でしていたと言う方が正しいか。


「私はご主人様の奴隷なので、お金の使い方に文句は言えませんが、ご主人様にはルナさんを除く私たちを養う義務があるので、早めに資金を集めることをオススメします」


「奴隷は分かるが、サイカは……」


「サイカさんの場合は養うと言うより、賃金の支払いでしたね」


「私を仲間外れにするなー!」


「ぶべら!」


 何故だ。話していたのはルーダなのに、ルナに殴られたのは俺だ。

 そしてルナよ。殴りに来るのがワンテンポ遅いから、会話が変な感じになっただろ。



マサヨシはお金を集められるのでしょうか! こういう時、ファンタジー世界には魔物の素材という大金の原石がゴロゴロしているので、内臓を売らずに済みますね。


皆様に☆やブックマークを押していただけると、ルナの運がマサヨシに分けられる……かもしれないです。

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