第30話 トンビがタカを産むのではなく、アホなトンビを反面教師にした子トンビがタカに近づいただけの場合もある
「俺に乗っ取りを止めて欲しいってことか?」
「違うアル」
「違うのかよ! じゃあなんでウチに来たんだよ」
「乗っ取りは止められないし、地上げも必ず行われるアル。でもマサヨシさんにはお世話になったアルから、これだけは伝えておこうと思っただけアル」
「なるほどな。お前の優しさだったわけか」
まあ下っ端のこいつからしたら、商会のアタマが変わろうと、商会の方針が大きく変わらない限り関係ないもんな。
「優しさじゃないアル。この情報で地上げ屋の件は帳消しアルネ」
「……お前は商会の人間ってことか」
他のやつに情報を押し付けてきて、貸しを帳消しにすると言われたらムカつくが、こいつの場合は元があれだから、成長したと思えば嬉しくも思えるな。
「ん? 私は元々商会の人間アル」
「そういう事じゃねえよ。元奴隷のリンとしてじゃなくて、商会リンとして来たのかってことだよ」
「私は元奴隷で、商会で働いているレー・リンアル」
「はぁ……もういいよ」
こいつはサイカと違う方向のポンコツなんだよ。
それにしても、何故だかうちに来る語尾キャラは、ポンコツな奴だけなんだよな……フラグが立ったか? いや、そんなわけない。ポンコツで語尾キャラの奴なんてほとんど居ないはずだ。確率的に、有り得るわけない。
「じゃあ失礼するアル」
リンは言いたいことを言って帰った。
それにしてもペシムス商会が黒幕だったのか。あの巨大組織が地上げを行っていると分かった上で邪魔するとなると、かなりの覚悟がいるな。
「ご主人様、リンさんは帰られました」
「そうか……お前も元は商人だからペシムス商会は知っているだろ」
「はい。親の事業が失敗したのは間接的にペシムス商会のせいですから」
「なに? それは初耳だぞ」
「聞かれませんでしたので」
「まあ自分から話すようなことじゃな……いや、借金奴隷になった理由はお前から言ってきたよな? 別に聞くつもりはなかったのによ」
「あー、それはご主人様からの出資を分捕るために言った気がします」
あの話から将来は自分の商会を作って、そこに俺が出資するって話に繋がったから、ルーダの思惑通り俺は出資する約束をしたわけだ。
「まあその話はお前が解放される時にするとして、事業失敗に間接的に関わっているってどういうことだ?」
「……あれはまだ振り積もった雪が溶け始めた春の日でした」
「いや、お前の地元は積もるほど雪降らねぇだろ!」
「雰囲気作りですよ。……話を続けますよ。私の両親は生活用品を扱う商会の会長でした」
「そうだな。それは聞いていたぞ」
「母は商会のお金を横領して、歓楽街でお金を注ぎ込んでいました」
「ん?」
「父はそんな母を見限り、商会の若い女性を喰いまくってました」
「いや、ちょっと待て!! お前の両親終わってるだろ!! 父親もやばいが、母親に至っては犯罪者じゃねぇか!!」
「……」
ルーダは声も出さずに俯いてしまった。
言い過ぎたか? そうだよな。いくらやばい親だとしても、こいつにとっては肉親だもんな。しかしなんて声をかければいいんだ。
「そのー、なんだ。 言い過ぎた、悪かったな」
「なんで謝るのですか? ただ親のことを思い出したら、ムカついてきて唇を噛んでしまった痛みから、俯いていただけですよ?」
ムカついてただけかよ!
「私はあのクソみたいな親たちのせいで奴隷になったんですよ? そりゃあ、思い出すだけでもムカついてきますよ」
「……俺は何も言っていないが?」
「ご主人様の考えていることくらい、手に取るように分かります」
ルーダみたいなやつに考えていることがバレるのは、なんか怖いな。
「私のことを怖いと思っていることは、後で話し合いをしましょう。今は回想を続けますよ」
そういう所が怖いんだよ! 奴隷なのに主人に対して遠慮なく説教できる胆力とかが怖いんだよ!!
「そんなクソ親たちでも、商会を少しずつ大きくできるほどの才覚は持っていました」
「なるほど。性格に難はあっても、商人としては有能だったわけか」
「いえ、商人としての才覚ではなく、上手いこと言って出資を受ける詐欺師としての才覚です」
「詐欺師……嘘八百で投資を受けていたのか!? ……もしかしてお前も俺の出資金を持って飛ぶのか!?」
「……なわけないですよ」
「なんだよその間は!!」
「関係ないことはここまでにして、回想を続けますよ」
「俺からしたら重要な事なんだが!?」
ルーダは俺の叫びを一切無視して回想話を続けた。
ルーダの回想は次回に続きます。
リンは言葉の言い回しをできないポンコツさんでした。サイカに続き、ポンコツ語尾キャラ二人目ですよ。
二度あることは三度ある
なんとなく頭に浮かんだ言葉です。特に意味はありません()
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いつか呪いが降りかかったSSを書くかもしれません




