第28話 案外大人になっても子供心は忘れない。
「よくも私を攫ってくれたな!」
燃え盛る炎はルナの怒りと共に火力を増している。魔力っていうのは感情に左右されるのが普通だから変なことではないが、あいつのは他の魔法使いとは比にならないレベルで増加しているな。
「燃えて灰になるがいい! 【炎爆覇】」
ルナが魔法を使った瞬間、俺たちの視界は真っ白な光によって埋め尽くされた。そして数コンマ遅れて肌を焼くような熱風が全身を襲った。
「……“獄炎の女王”の二つ名に恥じぬ威力だな」
光の影響から復帰した瞳に映ったのは、高熱によってガラス化したクレーターだけだ。超高熱の炎によって生じた爆発から逃れたのは、俺と近くにいたヴィルヘルム、少し離れたところにいたルーダとカエデ、爆発を発生させた張本人であるルナ、そしてルナの近くにいたサイカだけだ。
誘拐犯たちや関所を守っていた衛兵たちは、灰も遺さず燃え尽きていた。
「まじかよ。誘拐対象がこんな化け物だったなんて聞いてないぞ!」
「言うわけないだろ」
「ガルム……お前もやるつもりか?」
森の中からガルムと、手勢と思われる者たちが数人出てきた。やっぱりルーメイル辺境伯だけではなく、ギルドもグルだったか。
「何言ってるんだ? 俺たちはルナ様を助けに来たんだ」
「白々しいな。それ“俺たち”?」
「私のことだよ」
「ルーメイル辺境伯」
少し遅れてルーメイル辺境伯も出てきやがった。
だが、こいつらは何しに来たんだ? 俺たちを消しに来たのだとしても、戦力が足りていないし、全く予想ができない。
「深く考えなくていいよ。私は可愛い娘が誘拐されたと聞いて、慌てて助けに来ただけだからね。まあ、隣のハメラレタ子爵が誘拐に絡んでいたことが発覚したから、次いでに制裁はして帰るけどね」
「俺は、ウチの冒険者が誘拐に加担していると聞いて自らの手で潰しに来ただけだ」
この誘拐事件は全てルーメイル辺境伯とガルムの掌の上だったってことかよ。
ルーメイル辺境伯は子爵領に攻め入る口実のため、ガルムは素行の悪いA級冒険者を消すための正当性のために二人は結託して、誘拐事件を起こさせたって訳か。ということは、俺たちが動かなくてもルナは助けられたってことか。助かったとしても許せはしないよな。
「お前は根っからの政治屋だな。しかし親としてはクズだ」
「ははは……クズ勇者にクズと言われるとは思わなかったよ。確かに娘の誘拐を誘発させた私はクズなのかもしれない……けど君に比べたら全然クズじゃないさ」
俺がクズだってことは俺が一番分かっている。
「ここからは、俺たちの仕事だ。お前らは帰れ。まあギルドに所属するって言うのなら話は別だがな」
こいつ、俺がギルドに所属することはないと高を括っているな……まあ所属しないけどな。
「帰るぞ」
「いいんすか!?」
「俺たちの目的はルナの救出だ。目的が済んだ以上、俺たちが残る理由はねえよ」
サイカは不満気だったが、帰宅することに賛同してくれた。問題は被害者であるルナだったが、
「そうか、帰ろう」
一番あっさりしていたため、拍子抜けだ。
しかし帰宅中ルナは口を開かなかったから、ルーメイル辺境伯に何処か思うところがあるんだろうな。だが、そこに俺は入ってはいけない。これは家族の問題であり、部外者である俺が入っていけば、事をややこしくするだけだ。
「それにしても酷い親っすね」
「少し黙ってろ」
「なっ!? マサさん酷いっすよ!!」
お前は空気を読んでくれ。ほら、お前のせいでルナが俯いちまったじゃねえか。
「ルナ大丈夫か?」
「――!!」
ルナは俯いていた顔を上げ、こちらに向けてきた。そして――
「ぐごごご」
いびきを鳴らしながら、地面へと倒れて行った……っておい!! お前、悲しんでいたわけじゃなくて、ただ眠たかっただけかよ!!
「誘拐された時は睡眠中だったみたいっすから、睡眠不足だったのかもしれないっすね」
「そうだ――いや、ルナは昨日の夜から俺たちが家を出るまでしっかり寝ていたぞ!」
「あー、魔法を使ったっすから」
俺は魔法を使ってもそこまで疲れることは無いが、ルナの燃費が悪い可能性もあるし、否定はできないな。
「そうかもしれないが、普通今寝るか?」
「そこはまあ、ルナさんっすから」
今までで1番説得力がある言葉だな。
「ご主人様、そろそろおんぶしてあげて下さい。地面に寝かせたままは、さすがに可哀想です」
「……はぁ、仕方ねぇな」
この場で1番力があるのが俺なため、仕方なくルナのことをおぶってやった。前から思っていたが、凄まじい存在感だな。何とは言わないがな。
「……ご主人様」
ルーダがジト目でこっちを見てきているが、無視だ。お前がおんぶしろって言ってきたんだ。文句言われる筋合いはねぇ。
「うぐっ――」
邪な感情を読み取ったのか、一瞬だけ俺の首を絞めてきやがった。
「自業自得です」
ルーダは笑いながら言っていた。
もう首を絞められるのはゴメンなので、俺は街のある方へと駆け出した。
「競走っすか!」
サイカも俺に釣られて走り出した。
「カエデ、あんな大人を見本にしてはダメですよ」
「……大人になっても子供心を忘れないところに憧れるよ?」
「はぁ、もう毒されてしまってます。……まあ私も人のことは言えないのでしょうが。カエデ、私たちも走りましょうか」
「うん!」
俺たちは日常に戻るため、街まで走り出した。
これにて【第2章おてんば娘編】は終了になります。
最終回のような終わり方ですが、まだ続きます。
マサヨシはあんなに言われるほどクズか? そう言った疑問があるかもしれないですが、クズにも種類がありますよね。
ちなみにマサヨシたちが帰ったあと、ガルムたちとヴィルヘルムの戦闘が起きています。
詳細は近況ノートにサポーター限定SSとして出すかもしれません。
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長くなりましたが、【第3章 解放奴隷編】でお会いしましょう。




