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第20話 暴力系ヒロインはフィクションだから許されるキャラクターである

「……それでルナさんはウチに来て何をするんだ?」


「私のことはルナと呼べ」


「ルナさんはウチに来て何をするんだ」


「マサさんすごいっす。貴族令嬢相手にNPCみたく定型文のみで勝負してるっす」


 こいつはバイオレンスで我儘だからな。こうでもしなきゃ要望を無理矢理通して、こっちの生活を脅かすに決まっている。


「ルナと呼べ」


「何をするんだ?」


「ルナ――」


「何を――」


「すごいっす! 両者譲らぬNPC力っす!!」


 NPC力ってなんだよ。俺は絶対に折れないからな! 我儘に育ってきたこいつの方が先に折れるに決まってる!!


「……」


 ルナさんがついに黙った。やっぱり我儘な貴族令嬢が、勇者養成所出身の俺に我慢強さで勝てるわけないからな。

 だが、黙られ続けるのも話が進まなくて困るな……はっ! もしかしてこれが狙いか!? これは、自分が納得する言葉を相手から引き出すまで黙り続けることで、相手の心を折る政治的技術か! だが俺は俺折れないぞ……


「……」


「……」


 おいサイカ! 気まずい雰囲気をどうにかするのがお前の役割だろ!! なんでお前も黙ってこっちを見ているんだ! 必要ない時に騒いで、必要な時には黙る学生かよ!!


「……はぁ、ルナはウチに来て何をするんだ?」


 折れてしまった。いや、心が折れたわけではない。

 ここはルーメイル辺境伯に仕える文官が住む公舎であり、俺たちは部屋を占拠している部外者だ。連絡は行っているだろうが、長時間黙って部屋を占拠している俺たちを不審がってヒソヒソと話している人が増え始めていた。

 俺たちの評判がいくら下がろうと気にしないが、巻き込んでルナの評判も下げてしまったら、ルーメイル辺境伯に借りを作ってしまいそうだったから諦めただけだ。断じて心が折れたわけではない!


「うむ。元々は勇者の技術を盗んで自分の力にしようと思っていたが、お前を見て考えが変わった。お前が勇者にふさわしくないってことを証明してやろうではないか」


「光属性の上級魔法を使えれば誰でも勇者として《《強制的に任命》》されるから、相応しいも何もないんだぞ。そもそも勇者ってガラじゃないのは俺が一番分かってるしな」


「そもそもその制度に納得いっていない。初代勇者様のような人が任命されるべき、由緒正しい称号だ!」


「まあ、今の勇者のほとんどが貴族に囲われて、貴族の利権を守るために働かされてるからな」


「そんなわけないだろ!! 勇者は魔族と戦っている!!」


 こいつ、バカなだけじゃなくて英雄症候群も患っているのかよ。

 そもそも魔族との戦争だって、中央の貴族が儲けるためのマッチポンプに過ぎない。この国の中枢は魔族側の貴族と繋がりがあって、向こうの要望で戦争を起こしているって噂もあるしな。

 それに戦争で一番割を食う末端の貴族だって、一般の強者やどこにも所属していない勇者が魔族の土地を解放した時に権力を笠に着て、安値で土地を分捕っているから、文句は言えないだろうしな。

 俺には関係ないし、口に出すつもりもないけどな。


「まあルナがそう思うならこれ以上は言わねえよ。せいぜい俺の生活を見て絶望しないように頑張ってくれ」


 いろいろ考えていたからか、頭が疲れてきたので無理矢理話を終わらせて家へと帰宅した。

 帰宅中の雰囲気は最悪だった。




「……ご主人様、奴隷の分際で出過ぎた真似になるかもしれませんが、少し女遊びが過ぎるのではないでしょうか?」


 家の中はもっと地獄であった。

 ルーダから発せられる空気は氷のように冷たく、疲れて眠たくなっていた俺の意識を一気に覚醒させた。


「お前、女好きだったのか……まさか私も狙って!?」


 俺の家へと一切の遠慮もなく入ってきたルナは、ルーダとカエデの姿を見て何を勘違いしたのか、俺から見えないように自身の腕で胸を隠していた。ただ、大きすぎる胸は腕では隠しきれず、強調するだけに終わった。


「ご主人様、鼻の下が伸びていますよ」


「カエデちゃんは私とあっちでお話するっすよ」


 ルーダから放たれている絶対零度の空気を肌で感じ取ったサイカはカエデを連れて、奥の部屋へと急ぎ早で行ってしまった。


「鼻の下なんか伸ばすわけないだろ。お前は知らないかもしれないが、こいつはすぐに暴力を振るうバイオレンス女だぞ」


「おい、こいつじゃなくてルナだろ」


「彼女は有名人ですからね。私でも知ってますよ。ルーメイル辺境伯の娘にして、あまたの魔族を屠ってきた火属性の上級魔法から、“獄炎の女王”と呼ばれている人ですよね」


「ずいぶんと物騒な二つ名だな」


「ご主人様の“クズ勇者”に比べたら全然マシですけどね」


「こいつに比べたら俺の性格もマシに思えるんだが、やっぱり戦功ってのは大事なのかね」


「……だからルナと呼べって言ってるだろうが!!」


 こいつには獄炎の女王よりもバイオレンスヒロインって二つ名がお似合いだよ。

 ルナは俺のことを激しいツッコミと共に殴り飛ばした。




バイオレンスヒロインも一定の人気があると思っているんですが、どうなんですかね。

今現在は愛がないのでタダの暴力になっていますけどね。


Umi「ルナのことが好きな人は星やハートを押していただけると喜びます」

ルナ「誰が?」

Umi「お前が」

ルナ「お前って呼ぶな!!」

Umi「ぶべしっ! (喜んでくれるんだ……)」


今後は日常回を挟みつつ進んでいきますので、少し話のスピードは遅くなりますが、これからもご愛読お願いします

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