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第15話 おっさんと美女のケモミミだったら、おっさんのケモミミの方が珍しいが価値はない

「てめえ、あれだろ。うちの下請けを潰したっていう勇者だろ。喧嘩売る場所間違えたんじゃねえか?」


「間違ってねえよ。俺の知り合いの借金を返そうと思ったら邪魔されたんで潰したら、君らのカモレラファミリーが黒幕だっていうじゃないですかぁ……まあそんなわけで潰しに来たってわけだ」


「……俺らは合法的な手段で地上げをしてきたわけで、君の知り合いとやらが借金をしたのが元の原因だろ。だからうちが喧嘩を売られる筋合いなんてねえんだよ」


「私、カモレラファミリーの資金源が、非合法の薬であるケモミミ化薬――通称フレンズってことを知ってるっすよ!」


 マニアックな薬だな! 確かにこの国は獣人の数に対するケモナーの割合は高めで、薬の需要はあるだろうが、犯罪組織がばらまく薬と言えば快楽を得られるような薬が定番だろ。……いや、性癖を現実で満たせるのは十分な快楽になるか。


「……知らねえな。ただ喧嘩は買ってやるよ! おい、侵入者だ!!」


 チッ、援軍を呼びやがった!


「あいつらを始末しろ!!」


 建物の中から出てきたのは、屈強な男どもだ。ただ、全員頭部にケモミミのカチューシャを付けており、正直似合っていない。


「いい歳したおっさんがケモミミを付けているなんて誰得だよ!! 正直言ってキモイぞ」


「あっ、言っちゃいけないこと言ったな!? 俺らだって付けたくて付けてる訳じゃねえんだよ!! なぁ!!」


 ケモミミおっさんズの先頭に立っていたモブAが叫びながら後ろの仲間を見ていたが、全員目を逸らしていた。俺も何か事情があってつけていると思っていたが、先頭の奴以外趣味なのかよ。てことはカモレラファミリーじゃなくてケモミミファミリーだってことか!? 


「まじかよ……仲間の性癖なんて知りたくなかった」


「それがお前の冥途の土産だ!!」


 俺はモブたちとの距離を一気に詰めた。先頭の男は知りたくもない性癖を知ってしまったせいでやる気が感じられなかったが、他の奴らはすぐに剣を抜いて俺のことを警戒している。

 俺の剣は唯一のケモミミ性癖ではない男の身体を捉えた。無防備な男は大量の血と共に嘆きを漏らしていた。


「――バニー最高」


「結局獣じゃないっすか!!」


 サイカがツッコんでいたが、訂正しておきたい。


「サイカ、ケモミミとバニーは似て非なるものだ。ケモミミは獣感と人感のマリアージュを楽しむ物だが、バニーはバニースーツで引き立てられた人間の肉感を楽しむ物だ」


「知りたくもないことをツラツラと言うなっす!!」


「隙だらけだ!!」


 俺が熱弁していたところを無粋にも斬りかかって来やがった。ただ、今の俺を隙だらけと言うあいつらは、節穴としか言えないな。

 斬りかかってきたケモミミおっさんズを一人ずつ斬り裂いていく。一人は剣による攻撃を剣で受け止めてから、無防備な腹を蹴り上げ、浮いたところを斬りつけ、一人は剣を振り上げてがら空きになっている腹へと横に剣を振り払って斬りつけた。そのあとも簡単に倒していった。


「やっぱりモブはモブの域を出ないな」


「本当のこと言っちゃダメっすよ! モブなんて悪口」


「俺はモブを悪口なんて思ってねえぞ。お前が一番悪いんじゃねえか?」


「……早くカチコミに行くっすよ!!」


 あからさまに話を逸らしやがった。モブでも主人公になったりする時代だ。モブを悪口と考えるのは時代遅れの遺物だな。



 ――俺たちは建物中へと進んでいった。角を曲がるたびにモブたちが出てきて道を拒んできやがる。ただ、建物のサイズに対して出てくる人間の数が多い気がするが、気のせいか?


「侵入者め!? ぐべらッ!」


「ロリッ子!! ぶべらッ!」


「ウホッ、いい男。うーん気持ちいい!!」


 最後の二人は少しだけ変な性癖をしていたような気がしたが、まあ聞かなかったことにした方が俺たちのためだろう。


 建物の最奥と思わしき場所で最初の幹部らしき男が会った。こいつ以外の気配は感じられねえし、こいつがボスなのかよ。普通見張りの異変に気づいたら部下に行かせるだろ。 


「まさか全員やって来たのかよ。勇者を少し舐めてたか」


「勇者なんて千差万別なんだから、お前が悪いわけじゃねえよ。男になんか舐められたくないがな!」


 俺は叫びながらぶん殴ってやった。

 あとは裏の情報が分かりそうなものでも探すか。


「契約を守ってもらうぞマサヨシ」


 ギルド長であるガルムが、ギルドの構成員と思わしき人を二名引き連れて出てきやがった。


「ガルム……早いじゃねえか」


「お前のことは信用しててな。このくらいの時間があれば制圧してくれると思ってな」


「はあ、そうかい。それじゃあな」


「待てよ。俺はこのカモレラファミリーの権利を全てもらうという条件で根回しをしたんだ。」


「……そうだな」


 まあ元締めを倒したからおばちゃんのところに害が行くことはねえか。

 それにしてもあのおばちゃんの土地に地上げするほどの価値があるとは思えないけどな……。

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