1.覚醒
暗闇から浮上するように意識が覚醒する。
目を開けると知らない天井が目の前にあった。横に顔を向けると、ダルトンが椅子に座って舟を漕いでいる。一晩中看病をしていてくれたのだろうか。ダルトンを起こさない様、静かに身動ぎして寝ながら周りを見渡しても、見覚えのない部屋だ。
相変わらず、祐希からリノ、リノから祐希に切り替わった直後は気力・体力共に充実している気がするが、今回は猛烈に空腹だ。ステータスを確認してみる。
リノ
27歳(8歳) 男 人間
状態:健康(空腹(大))
保有魔力量:47/47
所持スキル
魔力操作Ⅰ(56/200)
魔術適正Ⅰ(13/200)
魔紋Ⅰ(6/200)▼
察知Ⅰ(30/200)
建築設計Ⅱ(302/1000)▼
並列思考Ⅰ(98/200)
剣術Ⅱ(255/500)
観察Ⅰ(89/100)
健脚Ⅰ(97/100)
習得魔法
生活魔法
称号
夢を渡りし者▼
ステータスの数値は最後に確認した時と変わりはない。ただ、空腹が(大)になっている。初めてリノになった時も(小)だったが、この子はいつも腹を空かせているな。
そんな事を考え苦笑をしていたが、あまりにも空腹なので、ダルトンには悪いが起きてもらう事にした。体を起こして呼びかけようとしたが、起こした瞬間、眩暈をおこし体が傾いた。咄嗟に腕で支えようとしたが、思うように体が動いてくれない。
ヤ、ヤバッ。これベッドに顔面直撃コースだわ。
柔らかそうなベッドなのでそれ程の衝撃では無いだろうが、痛みに備えて目を瞑ると、がしっと体を支えられた。
「大丈夫かい?無理しちゃだめだよ。」
支えてくれたのはダルトンだった。た、助かったー。
「痛いところは無いかい?目立った傷は無いようだったけど・・・」
「・・・お・・・」
「お?」
「お、お腹が空き過ぎて倒れそうです。」
「プッ!ははは。そりゃあそうだね。ちょっと待ってね。今、人を呼ぶから。」
そう言って、俺をベッドに持たれ掛らせると、入口のドアに向かい台の上に置いてある呼び鈴を振った。小気味いいベルの音がなった直ぐ後に、ドアがノックされクラシカルなメイド服を着た妙齢の女性が入ってきた。
「お呼びでしょうか。」
「うん、リノ君が目覚めたから軽く食べられ物をお願いします。あと、レイモンドさんにリノ君が起きた事を伝えてもらえますか。」
「畏まりました。少々お待ちください。」
そう静かに返事したメイドさんは、綺麗なお辞儀をして出て行った。
「ちょっと待っててね。直ぐに食事が用意されると思うから。」
「あ、あの、ここは何処ですか?あ、あの後どうなったのでしょうか?」
「まぁまぁ、落ち着いて。一つずつ順番に片付けよう。こちらも幾つか聞きたいことがあるしね。まず、ここが何処かって事だけど、ここはアルルの実家だよ。」
「アルルの実家?確かにあの時、僕は気を失いましたけど、孤児院ではなく何でアルルの家にいるのでしょうか。」
「そりゃあ、君がアルルの恩人だからだよ。うーん、順番に説明した方がいいかな。君が野盗のリーダー格の男の首を切って気を失った後、しばらくは、それはもう阿鼻叫喚の絵面だったよ。血飛沫は舞い、アルルは腰を抜かして泣きじゃくり、騒ぎを聞きつけたテンペストの皆が集まったおかげで、他の野盗が逃げ出そうとするし。あ、でも、あの弓使い君、クリス君が即座に鎮圧したけどね。その後、テンペストのリーダーのルーク君が場を沈めて、何とかその日の夕方にはイスタールに到着する事が出来たんだ。
イスタールに到着したはいいけど、今度は衛兵が大騒ぎさ。そりゃあ国営の乗合馬車が襲われたんだからね。直ぐに野党は逮捕されて牢屋送りになったよ。」
「あ、あの、皆さんにお怪我は?」
「君のおかげで、誰1人怪我をした人はいないよ。ありがとう。」
「それは、良かったです。・・・それで、や・・・」
と、その時、部屋のドアがノックされた。
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