表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢だと思っていたら現実だった件 ~死にたくないのでソウゾウリョクを駆使して全力で抗います~  作者: 神子島 航希
第2章 動き始める日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/110

24.星陰流道場

 俺の記憶にある道場は、明治の頃からある宗屋根の日本家屋だった。道場主も今のご時世で、剣術を習う人間が減っているので、自分の代では門下生は取らないと言っていた。当主は農協の職員、直紀も自営農業をしている。ワンチャン、農地を売って建て替えた可能性もあるが、道場を大きくする理由が分からない。


「よし、直紀。警察いっど。自首すれば少しは刑も軽くなる。」


「なんでよ!」


「なんか悪い事(わりこち)したどが。ワイがこげんビル建てられる(たつらるっと)は思えん。はよ行っど。」


「コイ建てた(たつたん)はオイじゃなかど。真紀が建てたとよ。」


「真紀ちゃんが?」


「あ、あのー・・・」


「「ん?」」「どうした莉緒?」


「に、日本語で話して貰って良いですか?」


「「日本語だよ(じゃが)!」」


「ヒィー!」


「ん?そう言えばこの小さい子(こんこまんか子)(だい)ね?ま、まさか、誘拐か!祐希(ワイ)が警察行った方が良かど!」


「ちげーが。大学の後輩だ。ココを見てみたいって付いてきたと。」


「初めまして。上中莉緒です。先輩がいつもお世話になってます。」


「これはご丁寧に。星野直紀です。祐希がお世話になっています。ふーん、祐希、彼女か!」


「ち、違っ・・・」


「ちげーって。唯の後輩だよ。」


「ぶー。」


 直紀が俺と莉緒を見比べている。


「くくく、祐希は相変わらずやねー。でも莉緒ちゃんを見たら真紀が発狂せんかね。くわばらくわばら。

 あー、こげん所ですまん。ウチに入らんね。」


 直紀が俺達2人をビルの中に案内してくれた。ビルの入口は自動ドアになっており、中に入ると大きな玄関ロビーになっていた。右手に靴棚が有り、左手にはカフェの様な空間があった。


「そこに靴を置いてスリッパに履き替えくんやい。とりあえず、そこでコーヒーでも飲んが。」


 カフェに入ると、正面はガラス張りになっており、ガラスの向こう側はテラスになっている。あちらでもお茶が楽しめそうだ。入って右手もガラス張りになっているが、こちらは外では無く奥の部屋に臨んでいる。


「ど、道場?」


「あぁ、道場は道場でも、チャ・・・」


「ゆ、祐希先輩!?」


 カウンターの方から大声で呼びかけられる。そちらを見ると、エプロンをした黒髪ポニーテールの細身の女性が立っていた。


「おぉ、真紀ちゃん久しぶり。何年ぶりけ?」


「3年半ぶりです!こっちに来るなら連絡下さいよ!」


「直紀には連絡してたんだけどな。知ってるとばっかり思ってたよ。」


「バカ兄貴!どうせサプライズとか何とか思ってたんでしょ。もう、準備とか色々あるのにー!」


「せーかい。しししっ。」


「◯ね!それで今日は何でこっちに?あと、其方さんは?はっ、まさか!結婚報告・・・。」


「ははは。違うって。久しぶりに直紀と手合わせしたくなってね。こちらは莉緒。大学の後輩だ。」


「上中莉緒です。先輩がお世話になっています。」


「星野真紀です。()()()祐希先輩がお世話になっています。」


「ねぇ、何で皆、俺が世話になってる前提の挨拶するの?俺が世話してる事だってあるじゃん。」


「・・・先輩、相変わらずですね。安心しました。莉緒さん、暫くは休戦という事にしませんか?まずは本人の意識を変えないといけないと思います。」


「・・・はい、そこまでの関係ですらありませんがので異論はありません。」


「お互い面倒な人を・・・。あ、お二人ともこちらへ。・・・何で兄貴も座ってるのよ。」


「オイもコーヒーを飲もうち思って。」


「もう!もう直ぐ子供達が来るんだから準備してよ。」


「げ、もうそんな時間け。祐希わりー。事情は真紀に聞っくんやい。」


 そう言って、直紀は慌ててカフェを出て行った。


「アイツも相変わらずやね。で、直紀がこのビルは真紀ちゃんが建てたって、言っていたけど本当?」


「え、えぇ。もちろんローンはまだありますけど、頭金は殆ど私が出しました。兄貴もローンは払ってますけど。」


 真紀が苦笑いしながら事情を話してくれた。


「祐希先輩はスポーツチャンバラって知ってますか?スポンジの剣で戦うあれです。私、星陰流がこのまま廃れて無くなるのが嫌で、何か残せる方法がないか探している時に、スポチャンの動画を見たんです。」


「これで少しでも星陰流を知って貰えないかなと思って、兄貴との地稽古を動画で配信したんです。そうしたら、その動画があるインフルエンサーの目に止まって、あれよあれよとバズりまして、問い合わせが殺到したんです。」


「未就学児、小学生や中学生の入門者の他に、ストレス発散にと大人の入門者も増えまして、隣の保育園からも入門している子の礼儀が良くなったと好評で、週に1度のレクリエーションも受託出来て、順調に売り上げが伸びて・・・。で、今度は元の道場では手狭になったので、思い切って建て替える事にしたんです。」


 SNSすげぇ。


お読みいただきありがとうございます。評価・ブックマーク頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ