22.幼孤リオン
過去ログを遡って、変な固有名詞「幼孤リオンたん」の発生原因を突き止めた。
「お、おい、この、よ、幼孤リオンたんは本当に莉緒なのか?」
「「たん」はいらないです。この人達が勝手に呼称しているだけなんで。
・・・この検証班の言っている事は本当です。大学時代に、友達に誘われてコスプレをしたのがキッカケでした。友達に押し切られて、子供の頃から習っていたダンスと組み合わせて動画をアップしたら、思いの外バズりまして。暫く続けていたのですが、起業の方が忙しく楽しくなったので、2年前からアップはして無いです。」
そう言って、タブレットを操作して、某動画サイトのショート動画を見せてきた。そこには、◯リーレンのコスプレをした美少女が、キレッキレのダンスを踊る動画が映し出されていた。
「は?これお前?え?別人だな。お前、眼鏡取ったら可愛いんだな。」
動画を見ながらそう呟くと、前の方からボフンと音が聞こえた気がした。目を向けると、莉緒が顔を真っ赤にさせてフルフルしている。
「うん?どうした。顔が赤いぞ。飲みすぎたか?」
「・・・(もう、そういうところですよ。ひとたらし!)」
「なんか言ったか?」
「・・・なんでもありません!」
なんか怒って、グビグビと缶酎ハイを飲み始めた。酔い潰れるなよ。
「それはそれとして、この動画から足が付くって事は無いのか?」
「動画サイトの運営会社のセキュリティは、世界トップレベルなので、早々抜かれる事はありませんし、仮にセキュリティを突破して、IPから追おうとしても、海外プロバイダーを何社も経由してます。暗号化しているので不可能ですね。登録している個人情報もデタラメです。仮に動画広告収入の振込口座を突き止めても、こちらも海外の銀行を経由してマネーロンダリングしているので、私には辿り着けません。」
「や、闇バイト組織みたいだな。」
「失礼な。平穏な生活をする為の最低限の処置です。あ、因みに、今回の幼孤リオンの動画は先輩の口座に紐付けてありますから。」
「は?え?怖いんだけど・・・」
「大丈夫ですよ。私と同じ処置してるので、足が付く事はありませんよ。」
「そっちじゃねーよ!いや、そっちも怖いけど!なんで俺の口座番号知ってるの!?」
「あぁ、先輩子供の頃、友美子さんに先輩名義の口座作って貰ってましたよね。カードは就職した時に受け取ったと思うんですけど、通帳は預けたままでしたよね。友美子さんに、動画広告収入用に写真撮らせてくれって言ったら、快くOKしてくれましたよ。」
「おふくろー!俺の個人情報管理もっとしっかりしてくれー!」
「いいじゃないですか。損する訳では無いですし。寧ろ来月の預金残高が楽しみでね。閲覧回数がとんでもない事になってますよ。」
「映っているのはお前なんだから、お前の口座でよかったんじゃ無いか?」
「いえいえ、魔法は歴とした先輩の技術です。当然の権利ですよ。」
「うーん。過去ログ見る限りリオンのお陰で拡散している気がするが・・・」
「私の動画だけではここまでバズりません。まあ、諦めて素直に受け取って下さい。」
「・・・そういう事にいしておくか。よし!明日も早いし、それなりの距離運転するから、そろそろお開きにするか。寝坊したら置いていくからな。」
「え、だったら・・・」
「寝ないのは無しだ。しっかり睡眠取ってないと酔うぞ。」
「ぶー。」
ブーブー言っている莉緒を横目に、片付けを始め、早々にベッドに入った。おやすみなさい。
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