20.金銭感覚
「ただいまー」
「おかえりなさい。先輩。ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ・た・・・」
「いわせねーよ!」
軽く頭にチョップをして止める。
「いったー、冗談じゃ無いですか。あ、でもお風呂は沸かしてありますよ。あと、惣菜ですけど夕飯と用意してあります。」
「お、どうしたんだ。珍しい。」
「いや、流石に上げ膳据え膳で、居候も不味いかと思いまして、はい。」
「良い心掛けだ。じゃあ風呂入って来るわ。今日は飲みたいし。」
「お付き合いしまーす。あ、もちろん晩酌ですよー。もしかしてお風呂かと思いました?いやらしい。」
「言ってろ。とりあえず入ってくるわ。」
サッサと風呂に入る。風呂から上がりサッパリしてリビングに入ると、テーブルに刺身盛りや馬刺し、サラダや各種チーズやベーコンのオードブル、唐揚げや海老フライの揚げ物の盛り合わせが置いてあった。
莉緒はタブレットをスワイプしながら何かを眺めている。
「なんだ、なんだ。また、豪勢だな。なんかあったのか?」
「いえ、久しぶりにスーパーに行ったら、あれも食べたいコレも食べたい目移りしちゃって、結局全部買っちゃいました。」
「コレだから大学出てすぐの会社役員様は・・・金銭感覚がズレとる。お前はもう少し常識を学べ。普通のサラリーマンはな、こんないっぺんに惣菜は買えないんだよ。普段何食ってんだ?」
「仕事の時は面倒なので、買いだめしてるカロリーバーとエナジードリンクです。休みの日はウーバーで適当に。」
「うん、マジ体壊すわ。・・・決めた。ここにいる間に自炊出来るように鍛えてやる。異論は認めるが、その場合は魔法関係はお預けな。」
「ぐぬぬぬ。よ、よろしくお願いします。」
「うむ。じゃあ、勿体無いしコレはありがたく頂くか。と、言っても、コレを全部食べきるのは無理だな。日持ちしそうな物は、タッパーに入れて冷蔵庫、冷凍庫に入れておこう。明日の朝食と昼飯だな。」
俺はキッチンからタッパーを持ってきて、取り箸でパパっと取り分けてしまう。サラダも半分は明日の朝食でいいだろう。
生ものは残して、火が通った物は冷蔵庫にしまい、席についた。
「では、いただきます。」
「いただきます。」
プシュっと缶ビールのプルタブを開け、グイッと一気にビールを流し込む。
「ぷはー、美味い!」
「先輩、それオッサンくさいです。」
「いいんだよ。俺もアラサーだ。十分オッサンの仲間入りだ。で、何見てたんだ?」
「昨日のスレッドを流し読みしてました。」
「なんか目ぼしい情報でもあったのか?」
「いえ、今のところ有力な情報はありません。偶に、自分も異世界に行ったというレスがありますが、全部出鱈目ですね。」
「なんで分かるんだ?」
「すぐに誰かが詳細を聞くのですが、内容が見当違いなものばかりです。私達はそれが分かりますが、スレ民は分からないので、辻褄が合っているぽい話に盛り上がるのですが、魔法を見せろの話の流れになると消えてしまいますので、釣りだったかが、一つの様式美になりつつあります。」
「じゃあ、情報収集は失敗か?」
「いえ、今はまだ掲示板界隈で盛り上がっているだけです。今、Yにも飛び火していますので、コレから一気にバズる可能性があります。そうすれば情報量は桁違いになると思いますよ。」
「それを一々チェックするのは大変じゃないか?」
「そこは抜かりありません。あちらの部屋に置いたPCに、言語検索AIプログラムを組込みました。Yからイン◯タ◯Tik◯ok等あらゆるSNSを監視させて、先輩から聞いた、向こうの世界の都市名や国名、人物名が書き込まれると、ピックアップして保存、追跡するように仕込みました。スレッドにも固有名詞は出していませんので、向こうの固有名詞が出れば当たりの可能性が高いです。」
「・・・お前、やっぱスゲーな。頼って正解だったわ。」
そう言って、俺もスマホでスレッドを覗きに行く。おお、すげー。既に15スレまでいっている。ん?
「そんな褒めても何も出ませんよ。テレテレ・・・って、何見てるんです?」
「ん?俺もスレッド覗いてみようかと思って。そしたらなんか変な固有名詞が出てきて、過去ログ見てるんだわ。」
「せ、先輩が気にするような事じゃ無いですよ。さ、さ、ご飯早く食べちゃいましょう!」
はい、ダウトー。
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