19.自動翻訳
「種は蒔かれました。後は野となれ花となれです。」
F5を押すたびに、凄い勢いで流れるレスを見ながら莉緒が呟く。
「凄い勢いで拡散されてるな。もう3スレ目が立ったぞ。」
「ピークはこれからですよ。とりあえず、情報収集は暫く放置していてもいいでしょう。さて、先輩質問です。」
「なんだ、改まって。」
「先輩は魔法を唱える時なんて言っているんですか?」
「いや、普通に「ライト」とか「ウォーター」って言ってるけど。」
「それが実はそう聞こえていません。UPした動画には音声入れてませんが、こちらが元データです。」
そう言ってタブレットを見せてきた。
そこには先程UPした動画が映っていた。その動画の初めの方で俺の音声が入っていた。そこで、俺は「ライト」と言っているはずなのだが、聞こえてきた音声は
「※※ツゥ※※」
と、聞き取れない音声が聞こえた。
「は?なんだこれ?俺は「ライト」って言っていたし、そう聞こえていたぞ。」
「はい、今は「ライト」と聞こえています。この事から、先輩は向こうの言語を自動翻訳しているのではという事が推察されます。」
「自動翻訳・・・魔法を使おうと思って文言を言うと翻訳されるのか。随分と高性能だな。」
「この事から、魔力を得られれば私にも魔法が使えるかもしれません!先輩!ミッションです!向こうで魔力を持っていない人が、魔力を得る方法を探り出して下さい!」
「リノの記憶では、使える回数に差はあれど、ある年齢から誰でも生活魔法が使えているな。」
「逆にいうと、ある年齢前に何か魔力を得る儀式みたいなをしているかもしれませんよ。リノ君の記憶には無いですか?」
「うーん、物心ついてからの記憶には無いな。6歳ぐらいなって、そろそろ良いだろうって言われて、生活魔法の使い方を習った感じだ。」
「向こうの人は生まれつき魔力を持っているのでしょうか?その辺も含めた調査をお願いします。」
「わかった。生活環境問題が落ち着いたら調査してみるよ。」
「私的には最優先課題なんですが、リノ君の命が掛かっているので仕方無いですね。でも、絶対ですよ!ぐふふ。コレで私も魔法少女でござる。」
「しょ・・・う・じょ?・・・おまえ、いくつ・・・そ、そうだな!見た目的には確かに少女だ。」
「どっちにしろ失礼です!とにかく、魔法を早く使いたいでござる!」
「わかった!わかった!なるべく早く調査するよ。てか、今日はもう大人しく寝ろ!お前全然寝て無いだろ。寝て頭スッキリさせないと、良いアイデアも出ないぞ。」
「ぶう、どうせ寝ないって言ったら、検証に付き合ってくれなくなるんですよね。今日は素直に寝ます。」
「当たりだ。調査もしないからな。お前はもう少し自分の体を労われ。その内体壊すぞ。」
「私的には、全然平気なんですけどね。」
「そう言っているヤツほど、急にガクッとくるんだ。普段からコツコツとケアが大事だぞ。」
「先輩こそ、いくつなんですか?ジジくさ・・・」
「あー、もう異世界とかどうでも良いかなぁー。」
「うそ、うそです!先輩は若い!格好良い!よっ!イケメン!」
「調子良すぎだ。寝るぞ。」
こうして、俺達はそれぞれの部屋で眠りについた。
次の日、俺は朝食と昼の弁当を2人分作り、1人分を冷蔵庫に入れ、テーブルに書き置きを置いて出社した。うん、莉緒が起きれるとは微塵も思ってない。一応、書き置きに、当分の間の着替えや日常品を取りに帰るように書いておいた。
今日の職場は平和に時間が流れていた。立花さんが他所他所しかったり、課長がいつも以上に忙しく連絡を取り合ったりする以外は、通常業務だった。
足立は、頭痛がして気分が悪いと言って欠勤している。課長は病院に行くように言ったが、安静にしていれば大丈夫の一点張りで、病院に行こうとしないらしい。多分、仮病だろう。
今日は久しぶり何事も無く帰宅する事が出来た。
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