表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/13

7.孤児院院長

 あれよあれよという間に、ベッドに寝かされた俺は、次にどうやって抜け出すかを思案していた。


 子供達は、男の子は土木現場、女の子は、何処か大きな家の家事手伝いに出掛け、仕事に出られない小さな子供達は、庭で遊んだり、シンシアや他の職員の手伝いをしたりしている。


 こっそり抜け出すにしても、誰かに見咎められたらズル休みが疑われて、直ぐにも土木作業に送り出されかねない。なかなか抜け出す算段がつかないまま、時間を浪費していると、廊下から騒がしい声が聞こえてきた。


『院長、リノはもう少し安静にしていないと・・・』


『私はただアンタや子供達の報告が正しいか、本人にも確認するだけだよ。それとも本人に聞かれて困る事でもあるのかい?』


『そんな事は無いですけど、何も今日じゃなくてもいいではないですか。明日もあるのですし・・・』


『こういうのは早ければ早いほうがいいんだよ。「リノ!」』


 そう叫びながらドアが思いっきり開いた。開いた瞬間、体がビクッと跳ねる。ん?体が強張ってる?


 入ってきたのはシワがれた老婆だった。一見ニコニコと目尻を下げて優しそうに見えるが、外の喧騒や名前を呼ばれた時の声音が表情と一致しない。彼女はバーバラ、この孤児院の院長だ。


「アンタ、昨日ダンカンところ若造にやられたんだって?詳しく話な!」


 入ってくるなりワンワンと捲し立てられ


「うわ、えっと・・・、その・・・」


 混乱して、シドロモドロになっていると


「サッサとおし!」


 と、急かしてくる。

 どうにか昨日の出来事を順を追って話す。


「ふーん。コッチに非が無いわけでは無いのかい。でもやりすぎだね。見ていた子供達の証言とも一致する。こりゃ搾るだけ搾り取ってやるかね。」


 何か不穏な事を呟いている。


「まぁ状況は分かった。アンタは動けるようになったら、また仕事に戻んな。ここに、無駄飯食らいを置いとく余裕は無いよ!」


「い、院長ー!子供にそういう事を言わないで下さい!」


「なんだい!ホント事だろ。ここの経営はいつもギリギリなんだよ。それともアンタが娼館で稼いでくるかい?わたしゃ一向に構わないよ。ケケケ。」


「い、行きません!そ、そういう事も子供の前で言わないで下さい。」


 顔を赤らめて反論するシンシア。


初心(うぶ)だねぇ。とにかくリノは早く復帰しな。いいね!」


 こくんと頷く。それを見たバーバラはフンと鼻を鳴らして出て行った。


「院長はあんな事言ってるけど、リノは怪我してるんだから、ゆっくり休んでね。」


 と、言って俺の頭を一撫でして、部屋を出ていこうとするシンシア。


「ま、待ってシンシアお姉ちゃん!」


 俺に呼び止められて、振り返ったシンシアに、俺は告げた。


「ぼ、僕、少しでもお手伝いする。ちょ、ちょっとでも役に立てるように頑張るから!」


「いいのよ。無理しなくて。今日はゆっくりや・・・」


「ううん!手伝う!シンシアお姉ちゃんの役に立つ!買い物行く時に荷物持つよ。」


「・・・あらあら。嬉しいわね。じゃあ、お昼過ぎになって、痛みとか無かったら、お願いしようかな?」


「うん!僕、頑張るね。」


「ほら、今は少しでも休みなさい。じゃあ、後で声を掛けに来るから、無理そうならその時に言うのよ。」


 そう言い残し、シンシアは今度こそ部屋から出て行った。


 ふぅ、どうにか街に出る算段は付けられた。街に出た後は、また出たとこ勝負になるが、動かない事には何も始まらないからな。


 思いがけず時間ができてしまった。こうなれば昨日、強制的に中断されたステータス確認をしよう!


 そう思い、ステータスウィンドウを開き、俺は困惑するのであった。



お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ