11.フルスイング
スマホのアラームの音で目を覚ます。魔力枯渇で熟睡?(気絶)出来ているので、凄くスッキリしている。
身支度を整え、ご飯を炊く準備をして、ウォーミングアップを始める。なるべく1日おきに走るようにしている。
いつものコースを1時間程走って、家に入る前に野菜達に水遣りをして、小松菜ときゅうり、トマトを収穫して家に入る。炊飯器と洗濯機のスイッチを入れて、シャワーを浴びる。シャワーを出る前にバスタブを洗い、帰ってきたら湯を張れるだけにしておく。
手早く味噌汁を作りながら、今日の弁当を仕込む。卵焼きとウィンナー、後は冷凍のミニハンバーグ、小松菜ときゅうりを細切りにして、胡麻油とみりんで味付けする。炊き上がったご飯を、そのままおにぎりにすると、衛生的に怖いのでラップの上に広げて冷ます。
冷ましている間に、洗濯物を干して朝食を済ませる。朝食はご飯、味噌汁、弁当用の残りの卵焼きとウィンナーだ。食べ終わった後、片付けをして、冷めたご飯をおにぎりして、家を出る。
実家に車を停めて、電車に乗り継ぎ出社する。
自分のデスクに着いたら、立花さんにメールを送っておく。さて、業務を開始しよう。
足立は相変わらず、始業時間ギリギリに来て、ブツブツ言いながら仕事をしている。
暫く仕事をしていると、立花さんが俺の後ろを通り過ぎながら、肩に手を置き耳元で、
「ありかと。」
と、囁いた。ビックリして通り過ぎた立花さんを見上げると、軽くウィンクして颯爽と歩いていく。
うーん、クールビューティ。
暫く見惚れていたが、慌てて仕事に戻ろうと正面を向くと、向かいにいる足立が物凄い形相でこちらを睨んでる。
「お前、茜ちゃんと、どういう関係だよ。」
「え?誰ですか?茜ちゃんって。主任の行きつけのキャバクラのキャバ嬢ですか?」
「そっちじゃねぇよ。立花茜ちゃんだよ。なんだよ、さっきのやり取りは。」
「あぁ、立花さんの事ですか。下の名前で呼んだ事無かったので気付きませんでした。主任、女の人を下の名前とか「ちゃん」付けで呼ぶとセクハラで訴えられますよ。ハラスメント講習受けましたか?」
「んな事はどうでもいいんたよ。どういう関係なんだ。肩に触れて囁かれて、羨ましぃ。」
「どういう関係も何もただの同僚ですよ。肩にゴミが付いてたから、取ってくれたみたいです。」
「本当かぁ?それにしては距離が近かったぞ。茜ちゃんは俺が狙ってるんだから取るなよな。だけど、肩にゴミはいい手だな。後でやってみるか。」
「ですから、不意に触ったりするのもセクハラですよー。捕まりますよー。って、聞いてない。」
本当にやりかねないので、メールで立花さんに警告しておく。直ぐに対処法は考えがあると返事がきた。大丈夫だろうか。
その後、仕事をしていると、悲鳴と共にパチーンと小気味良い音が聞こえた。皆が何事かと、音のした方を見ると、手を振り抜いた格好の立花さんと、頬を押さえて膝から崩れている足立がいた。
「ご、ごめんなさい。私急に後ろに人に立たれると、すっごく怖くて・・・昔、痴漢にあった事があって。触られそうになったから、思わず手が出ちゃったんです。まさか、足立主任とは思わないで。・・・大丈夫ですか?」
膝立ちのまま、頭をフラフラしている主任。どうやら、顎にクリーンヒットしたようで脳震盪を起こしているようだ。ナイススイング。
立花さんは返事の無いに事に不安になり、足立の肩を揺すろうとしている。それは流石に不味い。
「立花さん、ストップ。軽い脳震盪を起こしていると思います。揺らさない方がいいです。田中君、給湯室からビニール袋に氷を入れて持ってきて。」
俺は直ぐに駆け寄り、足立の頭を固定したまま、仰向けに寝かせた。
「あだちしゅにーん!聞こえますかー!しゅにーん!」
意識があるか声を掛けると、「うーん。」と曖昧な返事が返ってきた。
「ポニーのアリサちゃんからスマホに返事きてますよー!」
起きそうなフレーズを適当に言ったら、カッと目を見開いた。体を起こそうとしたので、肩をグッと押さえて起きれないようにする。
「急に起き上がったら危険です。主任、躓いて机の角で頭打ったんですよ。覚えてます?」
丁度、田中君が氷を持ってきてくれたので、後頭部に当てる。脳震盪を起こした時は頭を冷やすといい。
「あ、え?そうだっけ?なんか頬が痛いけど・・・」
「倒れた時に打ったのかもしれませんね。頭打って軽い脳震盪起こしているので、今日は帰って安静にしてたほうが良いですよ。課長良いですか?」
「うん、しょうがないね。少し休憩してなんとも無かったら帰宅しなさい。くれぐれも遊びに行ったりしてはダメだよ。君は実家暮らしだったね。気分が悪くなったら迷わず救急車を呼んで貰いなさい。」
足立は首を傾げながら帰っていった。
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