1.再び訪れた日常
本日2話投稿しています。前話がありますのでお気をつけ下さい。
ピピピピピ
いつものアラーム音で目を覚ます。
ん?いつものアラーム?
バッと起き上がり、自分の体を弄る。
ぷにぷに柔らかい掌や二の腕ではなく、ガッチリと剣ダコの出来た掌と、適度に鍛えられた二の腕だ。お腹もぷにぷにな子供のお腹では無く、うっすらと割れた腹筋のある成人の腹だ。
「戻っている?・・・夢??」
あんなリアルな夢があるだろうか?
と、周囲を確認する為に顔を起こす。
うん、天野祐希の部屋だ。そして、気付いた。
「やっぱり、あんなリアルな夢があるわけないよな。」
33/33
目の端に、ここ最近見慣れた数字が浮いていた。
未だに鳴り続けているアラームを消す為に、スマホを枕元から取る。アラームの停止ボタンを押すと、ホーム画面に戻る。
202X/09/17(月)
05:02
時間が経っていない。いや、正確にはこの体で寝てから7時間経っている。
どういう事だ?俺がリノだった間は、少なくとも6日はあったはずだ。もう訳が分からん。とりあえず、今日が月曜日ということは、仕事があるという事だ。
訳の分からない夢をみたので、検証の為に休みますなんて連絡しようものなら、まず病院に行けと言われてしまう。
日課のランニングの為に、朝の身支度をして玄関から外に出る。昼間はまだまだ残暑が厳しいが、朝晩はすっかり涼しくなってきた。
朝靄が煙る中、ウォーミングアップをしながら体の調子を確認する。何故かいつもよりも体力も気力も満ち溢れている。
確か一昨日に筋トレをして、昨日今日は筋肉痛を覚悟していたのだが、それもすっかり無くなっている。
不思議に思いながらも走り始める。うん、すっごく順調だ。これに魔力循環を加えたら、更に調子が良くなるなと思ったところで、並列思考で魔力循環をしていない事に気付く。
自分の体に戻った事でリセットされたのか?とりあえず、魔力循環を始めようとしたが上手くいかない。
リノの時に初めて魔力循環をした時のようだ。いや、あの時よりも通りが悪く感じる。走りながらやるのは難しいので一旦諦める。
他に違いがないかステータスを確認する。
天野 祐希
27歳(8歳) 男 人間
状態:健康
保有魔力量:33/33
所持スキル
魔力操作Ⅰ(24/200)
魔術適正Ⅰ(11/200)
魔紋Ⅰ(5/200)▼
察知Ⅰ(27/200)
建築設計Ⅱ(300/1000)▼
並列思考Ⅰ(74/200)
剣術Ⅱ(252/500)
観察Ⅰ(79/100)
健脚Ⅰ(84/100)
習得魔法
生活魔法
称号
夢を渡りし者▼
ステータスは最後に確認した時と大きく変わっているのは、魔紋解放が魔紋Ⅰに変わった事だろう。
これには心当たりがある。と、言うか、自らの意思で変えたと言うのが正しい。
アルルが人質にされたあの時、何か出来る事はないかと、ステータスを確認していた時に、魔紋解放があと少しで魔力のストックがフルになる事に気付いた。
急いで魔力を流し込み、フルにすると
『魔紋が解放出来ます。解放しますか? YES/NO』
の選択肢が出てきた。迷わず、「YES」を選ぶと
『魔紋を解放します。「身体強化(魔紋使用時)」を獲得しました。「魔力ストック(200/500)」を拡張しました。』
と、ウィンドウが出てきた。
魔紋Ⅰを確認すると
魔紋Ⅰ(0/200)▼
身体強化、魔力ストック(200/500)
となっていた。
魔紋を意識すると、左手の甲に盃?優勝カップのようなモノを抱えた竜の紋章が浮かび上がってきた。今考えると厨二心をくすぐるシチュエーションだが、その時は切羽詰まっていたので、そんな事を意識する事なく、力を貯めてタイミングを見計らっていた。
野盗が目線を切ったタイミングで飛び出した時は、正直焦った。思っていたよりも勢いがあり過ぎたからだ。
何とか根性で姿勢を制御して、蹴りを繰り出せたけど、やっぱりぶっつけ本番は良くないね。
あの大男が、最後っ屁でアルルを襲った時は、なんとなくそうなるだろうなとの予感があった。
絶対に目を離さなかったし、いつでも動けるように魔紋は待機させていた。
奴が動き出した時には、既に飛び出していた。
「旋風」は小太刀の特性を活かした素早い回転運動による遠心力で、威力と手数を増やす技である。
旋風を繰り出す時に、覚悟を決めた。
リノの仇を取る為、アルルの命を守る為、奴の命を狩る事。
だけど、未だ首を切った感触が手に残っている・・・
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