表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/9

5.孤児院の生活環境

「おい、リノ!そろそろ起きないと朝飯抜きになるぞ!」


 そんな声で覚醒する。

 パッと目を開け、目に飛び込んできたステータスウィンドウにビックリする。

 慌ててウィンドウを消して、声の主の方を見やるが、彼は心配そうに俺の頬に目をやり


「腫れはだいぶ引いたみたいだな。お前、あれだけ殴られて良く平気だったよな。俺、お前がグッタリした時は死んだかと思ったぜ。」


 と、頭をガシガシと撫でてから


「ヤベっ!うかうかしてると本当に朝飯抜きになるぞ!」


 と、言いながら部屋から飛び出して行った。

 彼はカイト。リノと同部屋の男の子だ。年は、リノよりも4つほど上のはずだ。赤髪でキリッとした眉毛が印象的だ。


 院の子供達の中では年長者で、率先してみんなを引っ張ってくれる活発な子だ。正義感が強く、よく院の職員と衝突している。口も達者な為、トラブルメーカーの一面もある。


 そんな事を考えつつ、ベッドから起き上がり部屋の外へと向かう。ステータスウィンドウはカイトには見えていなかったんだなと思いつつ、ドアを開けるとドアの前に女の子が立っていた。


 銀髪のボブカットが、同じ衛生環境にも関わらず透き通って見える。整った顔立ちが、何処かの令嬢かと思わせる可憐さだ。


 彼女はソフィー。リノの一つ年上の女の子だ。


「リノおはよ。大丈夫?痛いところ無い?」


 と、言いながら少し腫れている頬に優しく触ってくる。俺が少し慌てて頷くと


「もう、リノは少し体弱いんだから無理しないで。」


 と、腰に手を当ててお姉さんぶって嗜めてくる。

 そんな態度に苦笑しつつ


「ソフィーおはよ。早くしないとご飯無くなっちゃうよ。」


 と、食堂に向かって小走りに走る。


「あ、待ってよー。」


 と、慌てて追いかけるソフィー。

 二人で一緒に食堂に入る。既に自分達以外の子供達は集まっていて、食事の準備をしている。


「二人とも遅いわよ。早く準備しちゃって。リノは大丈夫?」


 一人の女性が声を掛けてくる。

 彼女はシンシア。この院で唯一子供達に優しく接してくれる職員だ。茶色のロングヘアを後ろに一つ結びにしている。年は20歳位だろうか。この子も綺麗な顔立ちをしている。


 シンシアはこの院の出身で、恩返しをしたいとの事で住み込みで働いてくれている。他は通いの職員だけなので、朝の食事の用意はシンシア1人で行っている。

 年長の子などは一緒に手伝ったりしている。


 彼女に頷き返しながら、並べられている食事を自分の皿に乗せていく。自分のいつもの席について周りを見渡す。


 この院には、12人の子供が保護されている。リノよりも年上の子供が4人、同年代が3人、年下が5人だ。


 昔はもっと沢山の子供がいたらしいのだが、この頃は周りで戦争も無く、街の景気も安定しているらしく、食い詰めて子供も捨てる親も減った事で、孤児が減ってきていると、シンシアが嬉しそうに話していた。


 俺達が席に着いたところで、シンシアが合図して皆が一斉に食べ始める。特に食事前の挨拶は無い。

 

 俺は苦笑しつつ、小さな声で「いただきます。」と呟いてから食事をみる。今日のメニューというか、今日も変わらずなのだが、黒パンとクズ野菜のスープである。以上!


 本当に毎朝これだけなのだ。育ち盛りの子供に足りる量とは思えないし、俺を含めた年上の子供達は、これから力仕事に出なければならないのに、朝食がこれだけでは力も出ない。


 岩の様に固い黒パンをスープにつけて、何気無く周りを見渡した。


 カイトは黒パンを意地でも噛み切ってやると、躍起になって顎を動かしている。ソフィーも無言でモソモソと顎を動かしている。他の子達も、物足りなさそうに食事を進めている。


 小さな子達の手伝いをしているシンシアも、時折り皆の様子を見ながら、申し訳無さそうな顔をしている。


 リノの記憶を追体験した後に、環境を変えなければと思ったが、食事改善が最優先だ。俺は、モソモソと黒パンを噛みながら食事を改善する方法を思案した。


お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ