47.急襲
本日、2話投稿します。きりがいいところで切ったのでこの話は少し短めです。
昼休憩が終わり、乗合馬車が休憩所を出発した。乗合馬車は他の馬車に比べるとスピードが遅い。なるべく揺れを少なくし乗客への負担を減らすためである。
その代償として午前中は前方に他の馬車がいたり、追い越す馬車がいたのだが、午後になるとめっきりとそういう馬車が減る。さらには中間地点を過ぎているのですれ違う馬車もいなくなっている。
何が言いたいかというと、噂の野盗がいる森を抜けるのに、この馬車1台のみで抜かなければならない。公共の乗合馬車じゃなければ絶好の的だ。
森に入る前までは皆、乗合馬車は襲われ可能性が低いという安心感から談笑をしていたが、森に入ると1人、また1人と無言になっていき、森の中腹辺りで皆が無言になり、周囲を見渡している。
かく言う俺も、緊張して森の奥を凝視している。アルルだけはまた具合が悪くなったのか俯いたままだ。
それは、突然だった。
ズドーンという音と共に、馬の嘶きがし、急制動による慣性の法則で前方にバランスを崩す。前方を見ると、切り倒した丸太が街道を塞いでいる。
馬車の中はパニック寸前だ。それはそうだ。この馬車を襲って捕まれば極刑だ。襲われることはあり得ない、そう思っていたところに襲撃してきたのだ。誰でも想定していない事が起きればパニックになる。
だが、すぐにその混乱を収める者がいた。
「落ち着け!俺達がいる。野盗が何人だろうと俺達の相手じゃない。馬車から出ないでくれ。」
Dランク冒険者パーティーリーダーのルークだ。彼は颯爽と御者台から降り、馬車の後ろに回った。長剣はすでに抜いて後方を警戒している。他2人の槍使いも左右に展開して警戒し、屋根の上でクリスが待機しているようだ。
「おお、いい動きじゃねぇか。こりゃあ、はずれを引いたかぁ。」
森の中から、下卑な声と共に男が出てきた。その後ろからゾロゾロと人が出てくる。
うん?昨日の襲われた商人の報告では6人じゃなかったか。どうみても20人はいるぞ。
しかも、一番前の大男って・・・
「ふん!雑魚が何人集まろうと僕達「テンペスト」の相手じゃないさ。大人しく投降しろ!」
「おうおう。威勢がいいねぇ。さて、何時までその威勢が張れるかね。おい!さっさとしろや!」
大男が馬車に向かって叫んでいる。なんだ?
と、思考しようとした瞬間、後ろからガタガタと音がし
「う、動くな!動いたらこのガキがどうなっても知らねぇぞ!」
全員が声の方振り向く。旅人風の恰好をした男に、腕で首を絞められショートソードを突き付けられたアルルがそこにいた。
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