44.初魔物に遭遇
グリッド村を出て、長閑な街道を西へと乗合馬車が進む。乗合馬車は早歩き程度のスピードでゆっくりと進んでいるので、行きの荷馬車と違って揺れが少ない。朝食のサンドイッチを食べられるくらいなので、雲泥の差だ。さらに俺やアルルは、行きの時に使ったクッションを貰ってきているので、お尻へのダメージもない。
ダルトンは他の商人と情報交換をしている。さすが商人。情報収集に余念がない。フードを被った旅人風の人は俯いて寝ているようだ。昨日よりは揺れていないと言っても、それなりに揺れている。旅慣れるとこの揺れでも寝れるのか。凄い。
そんな風に周りを観察していたが、さすがに暇になってきた。ダルトンと一緒に情報交換をしたいが、8歳児がいきなり大人の会話に入ってきても、ウザがられるし異常に映るだろう。
アルルに字を教えてもらおうかと思って隣を見ると、顔面蒼白にさせたアルルがいた。弱いな、おい!これはそっとしといてあげよう。
手持無沙汰になったので外をみていると、少し離れたところに動くものがみえた。目を凝らして見ているとその動物が頭をピョコっと出した。垂らしていた長い耳をピコピコと伸ばして動かしている。向こうを向いているが恐らく兎だろう。可愛いなぁとみていると、屋根からピュッっと風切り音がして、兎に向かって矢が飛んでいく。音を聞いた兎は振り向いたところで、丁度眉間に矢が刺さった。
うさちゃーん!!
「よし、昼めしゲット!!」
俺が驚愕していると、そんな声が上から聞こえ、走っている馬車の屋根からヒラリと一人の冒険者が飛び降りた。
「そのまま、走っててください。すぐに追いつきます。」
そう言い残して、その冒険者は自分が仕留めた兎の所へ走って行った。
「へぇ、彼らやるねぇ。あの距離からの弓の腕といい、あの身のこなしといい。僕の若い頃よりも格段に上だね。」
ダルトンが彼らを見てそんなことを言っている。ダルトンに褒められた弓使いの彼は、仕留めた獲物にたどり着くと、後ろ足を持ち上げて持っていたナイフで首を切り、血抜きをしている。首から出る大量の血が額の角を伝って、地面へと滴り落ちる。
ん?額の角?え?うさぎにつの?
「ダ、ダルトンさん、あれは何ですか?」
「ん?あれは血抜きと言って、狩った獲物の血を抜くことによって、なまぐさ・・・」
「あ、いえ、その血抜きをされている獲物なんですけど・・・」
「ああ、リノ君は魔物を見るのは初めてなのか。あれは、ボーンラビットといって、草原や森に生息する魔物だよ。イスタール周辺にも生息しているから、リノ君がEランク冒険者になったらお目に掛るかもね。
普段は大人しいけど、攻撃を加えられたり大きな音を聞くと、兎だけど攻撃してくる好戦的な魔物なんだ。さっきも、馬車の音を聞いて耳をピクピク動かしていただろ。あのままにしていると、この馬車に突撃していたかもしれないね。あの弓使い君、いい判断だよ。」
ほぇぇ。見た目に騙されるところだったよ。
「剣で討伐する時はどう対処するんですか?」
「おや、もう冒険者になった時の予習をしておくのかな。気が早いなぁ。うーん、近接武器なら盾で受けて怯んだところを、肉質の柔らかい首への一撃で終わりかな。ただ、気を付けなければいけないのは、盾を正面で受けるとあの角は意外と固いから貫通する事があるよ。角度をつけて受けて、逸らす事が大事なんだ。」
ほほう。俺は盾を持つつもりは無いから、剣で逸らすか、避けて刺すかだな。
おお、楽しみになってきた。
「他にイスタール近辺に生息している魔物って何がいるんですか。」
「ははは、そうだね。あとは・・・」
こうして、暇を持て余していた俺は、冒険者になった時の予習の為に、ダルトンを質問攻めにするのであった。情報収集してたのに、なんかすまん!
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