43.出発
魔紋解放Ⅰ(1/200)
192/200 解放不可
次の日の朝、魔紋開放のステータスを確認すると、満タンまで残り8ポイントとなっていた。惜しい。
これなら、今送り込んでも満タンにすることができるが、今日イスタールに帰るので、何か不測の事態があってもいけないし、温存しておくことにした。
ダルトンの過去を聞いた後、酔っぱらったレイナさんが、リグラさんのプロポーズ話をしようとして、ひと悶着あり寝かしつけに行ったり、従業員同士でイッキ飲み大会が始まり収拾がつかなくなってきた頃、
「明日、本当に帰るのか。2~3日もすれば野党も討伐されるかだろうから、それからでも遅くないだろう。」
と、今日のイスタール行きを取りやめるようリグラが忠告してきた。
「明日、どうしても会わなきゃいけない人がいるんだ。レイモンドさんだよ。」
「チッ!それじゃあすっぽかせねぇか。だが気をつけろよ。お前に何かあればレイナも悲しむ。」
「あぁ、わかってる。こう見えても元Dランク冒険者だよ。」
「何年前の話だよ。無理して自滅するのがオチだ。おい!てめぇら!明日もはえぇ!そろそろお開きだ!」
と、宴会はお開きとなった。親友同士っていいね。少しアイツを思い出した。
そして、現在。慌ただしく出発の準備をして、レイナさんに朝食と昼食のお弁当を貰い、村の乗合馬車停留所に来ている。
「ダルトン君、アルル君、リノ君、気を付けてね。何かあったら直ぐに逃げるのよ。」
「そうだぞ、ダルトン。お前は弱いんだから無理するなよ。あと坊主ども。ちょっとこっち来い。」
そう言って、リグラが俺達2人を近くに呼び寄せ、布に包まれた品物を渡してきた。
「餞別だ。南のアレクサ連邦では数打品だが、こっちで買えばそれなりの値段するんだぜ。護身用に持っておきな。」
布を解いてみると、鞘ベルトに収められたナイフが入っていた。鞘から抜いてみると刃渡り20cm程はあるナイフだ。
「いいか、これはれっきとした武器だ。こんな成りでも、人を傷つけることは出来るし、傷によっては死に至らしめる事もある。むやみやたらに振り回すんじゃねえぞ。」
リグラの脅しに顔を青褪めさせて頷くアルル。俺も決意を持って頷く。
「よし、いい子だ。なぁ、ダルトン。やっぱどっちか俺にくれよ。」
「物じゃないんだから。お前は早くレイナとの間に子供を作れ。」
「やだよー。ダルトン君!」
バシッとダルトンの背中を叩くレイナ。体格差があるのにダルトンがよろめき咽ていた。
「いつつっ。そ、それじゃそろそろ行こうか。」
そう言って乗合馬車に乗り込んだ。俺達も後に続く。乗合馬車は、荷台の両脇に長椅子が設置してあり、向かい合わせに座るようになっている。馬車は木製の屋根がついており、6本の柱で支えられていた。
「お揃いのようですので、出発します。今日の護衛は昨日に引き続き、Dランク冒険者パーティー「テンペスト」の皆さんです。よろしくお願いします。」
そう紹介された冒険者パーティー「テンペスト」は長槍が2人、長剣が1人、短弓が1人の計4人のパーティーだった。全員16~17歳くらいに見える。
「テンペストのリーダー、ルークです。野党の噂がありますが、僕達4人に掛かれば問題ありません。それに国の乗合馬車に手を出せば極刑です。奴らもそこまで馬鹿では無いでしょうから、大船に乗った気持ちでいてください。馬車ですけどね!」
笑いがおき、軽くおどけた長剣使いに、野次や激励が飛ぶ。
4人はそれぞれ、御者台、荷台の後方と屋根上部にある見張り台に乗り込んだ。
乗客は俺達3人の他に、商人風の男が4人、フードを被った旅人風の恰好をした男が1人の計8人。
リグラとレイナに見送られ、グリッド村を後にした。
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