41.リグラ邸の夕食
「早かったね。もう少し時間が掛かると思っていたよ。」
「おう、応急処置が適切だったから、治療が早く出来たってよ。パリス婆さんが褒めてぜ。火酒のお陰で麻酔が少量で済んだってよ。」
「あ、あの、か、彼の腕は・・・。」
「さすがに、部位欠損はこの村じゃ治せねぇ。イスタールか、各国首都の治療院にいる高位治癒士じゃねぇと、部位欠損を治す回復魔法は使えねぇよ。料金も桁違いだがな。あの冒険者の左腕はもうダメだな。婆さんが傷口を焼いて、縫い合わせてたよ。」
「そ、そんな、わ、私は、は、早く村に戻れば腕が治せる見込みがあるって言うから、つ、積荷を投げ捨てて馬に無理させて戻って来たっていうのに、これでは捨て損ではないか!」
「てめぇ!人の命が掛かってたんだぞ。ちんたらしてたら血が無くなって、奴は死んでたかもしれねぇんだぞ!」
「ひぃぃ・・・」
「やめろ、リグラ。彼も混乱している。今日は休ませてあげよう。」
リグラがノーリスに殴りかかろうとするのを、ダルトンが止める。
「チッ!!・・・すまねぇ。頭に血がのぼったようだ。お客人、あっちに寝床が用意されてると思うから使ってくれ。」
リグラが廊下の方を指差す。そこには案内役であろう従業員が立っていた。ノーリスは、怯えながらもペコリと頭を下げて、廊下へと向かった。
「さぁさぁ、湿っぽい話は終わりだよ!夕食にしようかね。アルル君、皆を呼んできてくれるかい。」
「はい!」
レイナが両手に大皿を持って厨房から出てきた。アルルが従業員を呼びに行っている間に、俺も配膳を手伝う。全員が揃ったところでリグラが乾杯の音頭をとる。
「久しぶりにダルトンが来たってのに、色々あって慌ただしかったが、まぁそんな日もありゃあな。今日は、飲んで食べて楽しんでくれ。乾杯!」
「「乾杯!!!」」
皆が大皿から一斉に食事を取り始める。俺とアルルはその勢いに押されて、中々おかずが取れない。
「はぁ、男ってのはダメだねぇ。こんな小っちゃい子が困ってるのに自分の事しか見えてない。はい、これはアルル君とリノ君の分。ゆっくりお食べ。」
微笑みを浮かべて、レイナさんが俺たちの分の食事を持ってきてくれた。ありがたくそれを頂く。ダルトンが絶品と褒めていただけあって、調味料をふんだんに使ってあって、絶妙なバランスの味付けが癖になる美味さだ。夢中で食べる俺とアルルを見つめながらレイナさんが呟く。
「はぁぁ、小っちゃい子はいいねぇ。産むなら絶対女の子と思ってたけど、男の子も可愛いね。なのにあの人ったら、仕事、仕事で全然・・・ブツブツ。」
あの、それ、子供に聞かせる愚痴じゃないような。苦笑いしながら噂のリグラを見ると、ダルトンと酒を酌み交わしながら談笑をしている。
「イーリスの北がキナクセェ。また、ひと悶着あり・・・」
「なら、小麦は押さえた方がいいね。ルァグが今年は豊作って・・・」
「あと、塩だな。間違いなく高騰する。今から・・・」
「塩はねぇ。イスタールも塩田を持っているけど、完全に行政府が・・・」
「じゃあ、最優先で各地から・・・」
と、凄く気になる話をしているが、如何せん今は普通の子供の振りをしておかないと、レイナさんに不審に思われる。
「はぁぁ、私の服を着てると、リノ君女の子みたいね。どうだい、本格的に女の子の恰好してみないかい。明日、買い物に行こうか。」
「いえ、明日は朝早くから帰らねければ・・・夕方に予定がありまして。」
「そんなの、すっぽかせばいいのよ。一層の事ウチの子にならないかい。3食昼寝付きでお小遣も一杯あげちゃう。」
なんか、変なスイッチ入ってませんか。レイナさん。って、手を見たらお酒を飲んでいる。酔っぱらっているのか。
「そ、そういえば!ダルトンさんの応急処置凄く手際が良かったですよね。商人ってあんな事も出来ないといけないんですか?」
「あ、あぁ。あれ。知らない?あの二人、子供の頃、冒険者目指してたの。」
「「えぇぇぇ!!!」」
アルルも驚いてた。
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