28.入店雇用契約、なお本人は立ち会わない模様
ダルトンとバーバラが、俺の雇用契約について話をしている間、俺は食堂でアルルと話をしていた。年少組は、筋骨隆々のお兄さん達が一緒に庭で遊んでくれている。
あのお兄さん達は、ダルトンが贔屓にしている運送屋の従業員で、昨日店に荷を運んで来ており、今日1日休みだった為今回の件を手伝ってくれたそうだ。子供好きらしく、年少組に優しく接してくれている。
子供達も、最初は体の大きな大人に怖がっていたが、慣れてくると懐いて今では鬼ごっこや肩車をして貰って遊んでいる。おい、そこ「大地逆大男」を頼むじゃありません!
最近、小さい子供達の間で「大地逆大男」、略して「グラメン」が流行っている。
一昨日、院の前にあったオブジェが子供達の琴線に触れたらしく、事あるごとに年長組の男の子に逆立ちになる様に頼んでいる。
ただ逆立ちになるのでは無く、腕を曲げ頭を地面に付け、足の開き具合を調整し、少しでもあの時のオブジェに近づけようとしている。
年長組の男の子達は、直接オブジェを見ていない(帰ってくる頃には連行されてしまったので)ので、年下の子に言われるがまま再現しようとしているが、なかなか上手くいかない。年少組はそれがまた面白いらしくはしゃいでる。因みに、1番再現性が高いのは、体の大きなボーノのようだ。
「な、なかなか斬新な遊びが流行っているんだね。」
アルルが、運送屋と年少組の「グラメン」を見て引いている。
「子供って、変な遊び考えるよな。」
お、あの人、再現性たけー。首だけで体支えてるよ。
「リノも十分子供だと思うけど・・・」
「あ、いや、ちいさい子は、って事!」
やべ、「グラメン」に気を取られて、素の自分で返事しちゃった
「ふーん・・・。ま、いっか。それより、さっきも言ったけど、明日から1泊2日で、グリット村に出張だからね。」
「入店1日目に出張って、もの凄いブラック臭がする?」
「ブラックシュウ?」
「あ、いや、何でもないよ。でも、何でいきなりそんな話になったの?」
「元々、店長は2ヶ月に1回、あの運送屋の人達の会社、リグラ運輸に、在庫の確認と運送屋ならではの各地の情報と、店長がイスタールで仕入れた情報を擦り合わせて、次に仕入れる商品を決めているんだ。」
「そんな大事な仕事に、僕がついて行く意味が分からないよ。」
「と、言うのが表向きの話。実はリグラ運輸の社長リグラさんは店長と幼馴染なんだ。情報収集と言う名の飲み会がしたいんだよ。あと、グリット村には、天然の露天風呂があって村で管理してるんだよ。2ヶ月に1回の仕事を兼ねた慰安旅行でもあるんだ。出張の間、店は閉めちゃうからリノ君も空いちゃうし、じゃあ、入店初日だけど、一緒に行っちゃおうって、なったわけ。」
超絶ホワイトでした。
「院には店長から伝えて貰ってるから心配ないよ。急な話だし、何も用意も無いと思うから、こっちで必要な物は揃えておいたから。」
ダルトン商店侮りがたし。段取り良過ぎませんか。
「ありがとう。でも、僕だけそんな良い思いをして、みんなに申し訳ないな。」
「流石に、院の子供達全員は連れて行けないかな。将来、リノ君が沢山稼いで、みんなを連れて行ってあげて!」
「うん!そうする!うわー、楽しみになってきた。」
「興奮し過ぎて、眠れなくならないようにね。明日は、1の鐘に門の所に迎えにくるから、待っててね。行きはあの人達と一緒だから安心していいよ。」
「が、頑張って起きるね。」
地球であれば、スマホのアラームで直ぐに起きれるのだが、今は自力で起きなければならない。夜更かし厳禁だな。
そんな話をしている所に、ダルトンとバーバラ、シンシアが食堂に入ってきた。
「アルル、そろそろお暇しようか。リノ君には明日の件伝えたかい?」
「はい、伝えてあります。」
「そうかい、じゃあ、外の彼らにも伝えて、馬車も回してきてくれるかい。」
「承知しました。じゃあ、リノ明日な!」
「またね!アルル。」
「あはは。気が早いな。残念だけど、リノ君もちょっと一緒に店に来て貰うよ。明日の打ち合わせだ。」
「あ、はい。承知しました。」
「リノ。しっかりとご奉仕しておいで。」
バーバラは、ニコニコと笑顔だが、目が全然笑っていない。
何かあったのか?
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