27.食事事情の改善
俺がリノに転生して4日目の朝。
午前中は、引き続き掃除をしていた。人数を掛けて行った甲斐もあり、だいぶ綺麗になってきた。
午後に入り、1の鐘が鳴るまで、まだ15分ほどあるのじゃないかと思われる時間から、バーバラ院長は門の前でソワソワしていた。
そりゃあ、寄付をしてくれるというお客様がお越しになるのだ。気が気ではないだろう。
1の鐘が鳴り、豪華な馬車と一台の幌馬車が院の前に着いた。
ダルトン、結構金掛けたな。
豪華な馬車から、スーツで着飾ったダルトンがアルルと降りてくる。
「お招き頂きまして、ありがとうございます。バーバラ院長。」
「これは、これは。ようこそ、わが孤児院へ。生憎と子供達は奉仕活動に出ておりまして、今は年少の子供達と、リノしかおりませんが、歓迎いたします。」
ここで、出迎えに出ていた子供達で一斉に挨拶をする。
「「「「ようこそ、いらっしゃいませ。ダルトン様。」」」」
「これは、ご丁寧にありがとう。」
「そ、それでダルトン様。後ろの馬車は・・・?」
「様はいりませんよ。私は一介の商人ですから。あー、あれですか。お恥ずかしながら、私、これまで孤児院に寄付をした事が無かったものですから、今日こちらに寄付させて頂こうと思い、用意したものなのです。」
「まあまあ!これはご丁寧にありがとうございます。」
目が幌馬車に釘付けだ。バーバラ、目が$になってるぞ。
「どちらにお持ちすれば宜しいですかな。」
「わ、私の部屋で構いませんよ。」
「おや、結構嵩張るものですが、宜しいのですかな?」
「え、えぇ・・・」
「そうですか。では、アルル。皆に運んで貰ってくれ。」
「畏まりました。ミナサーン!運び込んじゃってくださーい!」
アルルが、幌馬車に向かって声を掛けると、中から筋骨隆々な男たちが木箱を抱えて出てきた。バーバラはもう卒倒寸前だ。
「しかし、本当に厨房じゃなくて、お部屋で宜しいのですか。」
「へ???」
あ、もうネタ払しするのね。部屋まで持っていけば良かったのに。
「こちら今回、寄付させていただきます、小麦、各種野菜、ボア肉、鶏肉でございます。初めてなものですから作法が分からず、子供たちが何を喜ぶかと考えまして、やはり育ち盛りですし食べる物は沢山あった方が良いかと思いまして、ご用意させて貰ったのです。」
誰も、寄付金とは言ってません。金だと搾取されるなら物納すればいいのだ。これが、ダルトンが俺に提案した食事問題の解決方法だった。
男達が、門まで持ってきた箱を見て、放心しているバーバラ。もしかして、木箱全部金貨だとでも思ったのか。強欲すぎだろ。
「院長。院長!本当にお部屋にお持ちして宜しいのですか?」
「へ、あ、へ?い、いえ、ちゅ、厨房にお願いします。」
「了解しました。では、皆さん厨房のほうにお願いします。シンシア嬢、案内してもらえるかな?」
「へ?あ、は、はい。どうぞ、こちらです。」
どうやら、シンシアもいきなりの事で放心していたらしい。これは、悪いことをしてしまった。嬉しい誤算という事で許してほしい。
放心から解けたバーバラは、流石というかさっきまでの醜態が無かったように、丁寧な物腰でダルトンを先導する。
ダルトンが、俺とすれ違う時に軽くウィンクした。イケメン過ぎんだろ!
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