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夢だと思っていたら現実だった件 ~死にたくないのでソウゾウリョクを駆使して全力で抗います~  作者: 神子島 航希
第3章 生活環境改善

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34.攻撃魔法とは

 ソフィーの攻撃魔法を見てもらうにあたり、(まと)を用意して貰った。


 お茶を飲んでいた場所から50m程離れた所に、藁で組まれた人形が置いてもらったのだ。ご丁寧に鉄の鎧も着せてある。


 既に人払いは済ませて有り、ここには俺とダルトン、シンシア、リディア、そして不安そうな顔のソフィーだけだ。


「リノ~~・・・。」


「大丈夫。昨日みたいにただ撃てばいいだけだよ。あの鎧の真ん中を狙おうか。はい、大きく息を吸ってー、吐いてー。」


 俺はソフィーの後ろに立って優しくアドバイスをする。深呼吸をして少し落ち着いたのか、ソフィーが覚悟を決めた顔と指を的に向けた。


「【穿て】。」


 ソフィーが呪文を唱えた瞬間、突き出していた指に光が集まる。


 ん?なんか昨日よりも光の集まる量が桁違いじゃないか?何んか光が(ほとばし)りはじめたぞ。こんなのコントロールできるのか?


「え?え?なに?こ、こんなの知らない!な、なんで・・・。」


 は?ソフィーも初めての現象なのか。まずい!パニックを起こしかけている。


 俺は、ソフィーの後ろからそっと両腕に手を添えて、優しく話しかけた。


「ソフィー、落ち着いて。僕の声だけに集中して。はい、大きく息を吸ってー、吐いてー。はい、また吸ってー。よーし、糸をイメージしよう。ほそーい、ほそーい糸だよ。シンシアお姉ちゃんのお手伝いで紡いだ毛糸だよー。」


 俺の声に合わせて、(ほとばし)っていた光が落ち着き始める。咄嗟にイメージと言ったがどうやら正解だったようだ。


「よーし、じゃー、チョットだけあそこに向けて撃ってみようか。距離を間違えないようにー。チョットだよ。」


 ソフィーがコクっと頷き、狙いを定める。


 次の瞬間、光の線が走り、遅れてキンという金属を擦り合わせたような音が鳴り響いた。


 ソフィーの指にはまだ光が収束している。


「よーし、じゃー残りはお空にでも飛ばしちゃおうか。」


 そう言って、空を指差す。ソフィーもそれに習って指を上に向けて、光を解放した。


 キーンと金属音のような音と共に、一本の光の線が空へと引かれていく。


 5秒ほど続いた光の線が収束した。ふうー、何とかなったか。


「びっくりしたー。あんな事初めてだよ。リノ。」


「僕もびっくりだよ。なんであんなに光が集まったんだろうね。魔力は大丈夫?」


「うん、全然平気。あと何回できるかは分からないけど。」


 お互いに何とか成功したことを喜んで、大人たちの方を見ると、口をあんぐりと開け、目を見開いた3人が呆然と立ち尽くしていた。


「リ、リディア様、見て頂けました?今のがソフィーの攻撃魔法です。」


 フリーズしたままのリディアに話しかけるが、ワナワナと震えるだけで返事が無い。しばらく待っていると、


「な、な、な、なんだ、今のは・・・。」


 やっと、絞り出すように言葉を発するリディア。


「え、ですからソフィーの攻撃まほ・・・。」


「こ、こんな攻撃魔法があってたまるか!なぜ、詠唱があんなに短くてあんな威力で撃てるのだ!なぜ、威力の調整ができる!」


「お、落ち着いてください。何故と言われましても、私達は貴方様方が使う攻撃魔法を見た事がありません。どう違うのか比べようがありません。」


 フゥー、フゥーと鼻息荒く、捲くし立てたリディアを落ち着かせる。ソフィーがあまりの剣幕に怯えてしまっている。こ、これはまたセバス案件か・・・。


「お、お願いですから落ち着いてください。ソフィーが怯えています。セ、セバスさんよびますよ!」


 俺の最後の言葉に、リディアがハッとなる。


「す、すまん。取り乱した。だ、だが、本当に私の知っている攻撃魔法とは違うのだ。み、見ていろ。」


 そう言って、リディアが的に向かって手をかざした。


「【熱き炎よ!この手に宿りし力を糧に力を解き放て!【火球(ファイアボール)】】。」


 リディアが詠唱をすると、かざした手の前に魔法陣ができ、そこからソフトボール大の炎が、勢いよく飛び出し、的へと当たった。的の藁に炎が燃え移り勢いよく燃えている。


「これが、初級攻撃魔法の「ファイアーボール」だ。攻撃魔法は、威力が上がる度に魔法言語が増えていく。威力の調整もできん。ソフィーちゃんの魔法は規格外すぎる。」


 そ、その前に、俺達に攻撃魔法見せて良かったの?リディアさん。


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