33.大物?ポンコツ?
俺がポーションの効果に驚いていると、ローグが話しかけてきた。
「効果が凄いでしょ。これは我が軍の為に特別に調合した一品なのです。普通の店では売っていない特別制ですよ。」
「これで、味が良ければ最高ですね。」
「味は・・・敢えて不味くしているのですよ。これで味まで良かったら若干1名、無謀な訓練・特攻をする人がいるので・・・。」
と、苦笑いしながら一方向を見るローグ。あー、納得。
今だセバスに説教され、シュンとしているリディアがそこにいた。本当に子供みたいだ。そろそろ、助け舟を出すか。
「ローグさん、ありがとうございました。そろそろ、いってきます。」
「あの様にしておりますが、普段は頼りになる主です。1対1の模擬戦であの方に剣技を出させるなんて、君も相当な実力をお持ちなのでしょう。末永くお付き合いください。」
そう言って、ローグ達は道具を片付けて足早に去って行った。
さて、リディアを助けますか。
トコトコとリディアとセバスの所に歩いていく。
「セ、セバスさんその辺りでリディア様を助けてもらえませんか。ほら、この通り僕、全然平気だよ!」
無垢な子供を演じて、キラキラした目でセバスに訴える。
「リ、リノく~~~ん・・・」
リディアが縋り付くような目でこちらを見てくる。ほ、本当に頼りになる主なのか・・・。
「リノ様、わたくしの目は誤魔化せませんぞ。リノ様もリノ様です。お嬢様が剣技を出す兆候はリノ様なら察していたのではないですかな。なぜ、直ぐに降参なされなかったのですか。貴方様なら出来たでしょう。クドクド・・・。」
うげ、とばっちり説教だ。矢継ぎ早に俺とリディアに説教してくるセバス。藪蛇もいいところだ。
チラリとリディアを見ると、あちらも俺をジト目で見ている。なんだよ、その役立たずって言いたげな目は。そもそもアンタが暴走するのがいけないんだろうが。こっちは吹き飛ばされたり、説教受けたりで踏んだり蹴ったりなんだぞ。
お互い目線でけん制しあっていると、
「聞いておられるのですかな!お二人とも!」
更に、雷が落ちた。
◇◇◇◇
「はぁ、次の予定もありますゆえ、この位にしておきますが、くれぐれも無茶をしませぬよう肝に銘じてくださいまし。」
雷が落ちてから10分。やっとのことで解放された俺とリディアは、ダルトン達の所へと向かった。
いつの間にか演習場の脇に、テーブルとイスが用意されお茶を飲んで寛いでいた3人。
「なんで3人だけ寛いでいるんですか。羨ましい。」
「こちらのメイドさんが「いつもの事ですから。」と用意してくれたんだよ。お二人の分もありますよ。」
そう言って、ダルトンは空いている席を指し示した。
「なんか君達、急に遠慮が無くなったね。まぁ、いいけども・・・。」
まぁ、あんな姿を見せられたら畏まる方が難しいよな。
俺とリディアが、控えていたメイドさんに淹れて貰ったお茶を飲みつつ、打合せを始めた。
「最後は、なんかグダグダになってしまったが、リノ君が私に、い、一本を入れたのは事実だ。魔力契約でも何でも結ぼうじゃないか。」
グダグダにしたのはあなたですけどね。あと、一本入れられた事実を認めたくないのかな。一瞬ドモったぞ。
俺はダルトンに目配せをして魔力契約書を出してもらう。予め契約内容と俺のサインは記入済みだ。
「こちらになります。ご確認いただき問題なければサインをお願いします。」
ダルトンが鞄に用意した魔力契約書をリディアに渡す。リディアはそれを一瞥するとササっとサインをした。契約書が光、2枚に分かれる。
「あ、あの、私が言うのも何ですが、ほとんどお読みになっていませんが大丈夫ですか?」
「ん?なんだ。リノ君は私を陥れようとしているのか。」
「いえ、滅相もございません。」
「だろ?なら読む必要もなかろう。時間ももったいないし、そちらのお嬢さんの能力とやらを見せて貰おうかな!」
ほんと、大物なのかポンコツなのか分からない人だなー。
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