32.ポーションの効果
「セバース!セバース!ポーションをありったけ持って来い!あと、医療班を全員かき集めろ!リノ君が!リノ君が・・・。」
リディアが慌てふためいてセバスを呼んでいる。遠くからドタドタと多数の足音が聞こえる。人払いをしていたので、慌てて駆けつけている感じだ。そろそろイタズラは辞めておくか。大ごとになりそうだ。
「いつつつ・・・。」
目を開けて、ゆっくりと体を起こす。
「リ、リノ君!気が付いたのか!あー、よかった。死んだかと思ったぞ!あ、まだ起き上がらない方がいい。君なら避けられると思って剣技を使ったのだが、まさかまともに受けるとは思わなかったぞ。どこか痛むところはないか。じきに医療班が来る。直ぐに良くなるからな。」
「擦り傷だけですので、そんな大ごとにしなくても大丈夫です。ほ、ほら、もう、うご・・・」
「お嬢様!!!!」
俺が、大丈夫アピールをしようとしている所に、セバスが飛び込んできた。ダルトンやシンシア、ソフィーもこっちに向かってきている。
「こんな、小さな子に剣技とはどうい事ですか!お嬢様はいつもそうです。夢中になると子供の様にはしゃいで、前後不覚になられる!いつも言っているではないですか。為政者として、上に立つものとして自覚を持ちなさいと!」
「す、すまぬ。」
シュンとするリディア。子供みたいだ。剣技とやらを出す前も、自分の攻撃が当たらなくて子供みたいになっていたな。意外に幼い面があるんだな。
「すまんで済んだら衛兵はいらないのです。この間も・・・。」
セバスの説教を下を向いて、半べそで聞くリディア。なんか可愛いな。
そんな風にリディアを眺めていると、ダルトン達3人も俺の周りに集まってきた。
「大丈夫だったかい、リノ君。無茶をするなぁ。」
煽ったのはあなたですよ。ダルトンさん。
「リノが吹き飛んだ時は心臓が止まるかと思ったわ。でも、リノってこんなに強かったのね。ビックリしちゃった。」
シンシアに素直に褒められるとなんかこそばゆいな。
「リノー!お空に飛んで楽しそうだったね。私も飛んでみたーい!」
マジで死ぬかと思ったよソフィーさん。もう二度とあんなのはごめんです。
遅れて、白い服と帽子を被った人たちが俺の周りに集まってきた。リディアの言っていた医療班だろうか。その中でも年配のおじさんが前に出てきて、俺の前にしゃがんだ。
「リディア閣下直属の医療隊、隊長のノーグです。閣下の命により診察治療させていただきます。眩暈、吐き気はありませんか。気になる症状は?」
そう言って、俺の下瞼を下げて診察する医療隊隊長のノーグさん。
「いえ、ありません。擦り傷による痛みと、気だるさぐらいです。」
「ふむ、疲労の症状が少し出ていますね。それ以外は確かに異常はなさそうです。このポーションをお飲みください。直ぐに症状が改善すると思います。」
そう言って、青色に透き通った液体が入った瓶を渡された。ほう、これがポーションか。コルクの蓋を開けて匂いを嗅ぐ。特に匂いはしないな。無臭だ。一口飲んでみる。
うげー!なんだ。これ。口の中が一気に緑臭くなったぞ。草をそのまま煎じて飲んだみたいな味だ。
俺が顔を顰めて、まだ3/4以上残っている瓶を睨んでいると、ノーグが苦笑しながら
「苦いですが効果覿面です。さー!一気にいってみよう!」
と、飲み会のイッキコールのように煽ってきた。周りの医療隊の人間も一緒に煽ってくる。なんだこの集団は!
止まりそうにないので、覚悟を決めて鼻を摘まんで一気にポーションを飲み干す。にがー!
おお!と拍手がおきた。
俺が苦さに悶えていると、擦り傷が段々と塞がってきて瘡蓋ができ、それもポロポロと落ちて、元の綺麗な卵肌に戻った。さっきまであった気だるさもない。
ポーション凄いな!確かに効果覿面だ。
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