31.リベンジ戦
旋風によって舞い上がっていた砂煙が徐々に晴れていく。
リディアの引き戻されていた両手は、胸の前でクロスする寸前の中途で止まり、俺の剣は喉に当たる寸前で止めていた。
「・・・私の負けだな。」
リディアが、万歳をするように両手と上げた。俺は剣を引き、血振りをするように一度木剣を振り、納刀の構えを取り大きく深呼吸をした。稽古後の癖の様なものだ。
「その歳で、ここまでの動きが出来るか・・・。末恐ろしいな。」
「リディア様が防御に徹してくれたからです。こちらが防御を考えず攻める事が出来ました。」
その言葉を聞いてリディアがニヤリと笑った。
「ほう、では次はこちらも攻めてみよう。君の防御力も見てみたい。」
げ、余計な事を言ってしまった。
「いえ、ほら、次のご予定もあるでしょうし、魔力契約をして頂かなければなりませんし・・・。」
「時間はそれほど経っていないから、まだ大丈夫だ。ほれ、構えないとすぐに終わってしまうぞ。」
そう言うと、リディアが大きく木剣を振り上げて、振り下ろしてきた。
ぬお!あっぶねぇ。間一髪、自分の木剣を差し込んでリディアの一撃を防ぐ。
が、木剣が止まらない。お、重い。
自分の木剣を斜めにし、力の流れを変えると共に、その場を跳び退く。寸前まで自分のいた場所に切り上げの一撃が飛んできた。
「良く躱した。ではいくぞ!」
そう宣言したリディアが、怒涛の連続攻撃をしてきた。振り下ろしからの切り上げ、横薙ぎ、また振り下ろし。それらを躱し、受け流していく。早すぎて反撃する隙がない。うぉ!あぶね。髪を掠めてるよ。
大きな振り下ろしを大きく後ろに躱して間合いを取る。木剣で地面を爆ぜさせるってどれだけの威力だ!
「むー、ちょこまかとー。これならどうだー!【ストームソード】!」
リディアの木剣の剣先が光、振るわれた剣から何かが射出された。
(なんだ?魔法?)
射出されたものが、俺とリディアの間にある地面の砂を巻き上げて進んでくる。
「た、たつまき!?」
以前見たあの嵐みたいな竜巻か!避けようにも、もう魔力が底をつきかけていて魔紋の維持もやばい!え?これ受けたらやばくないか!
この後にまだ打合せもあるので、流石に魔力枯渇で気を失うわけにもいかない。魔紋への魔力供給を打ち切り、防御姿勢を取る。竜巻がクロスした腕に触れる。い、痛ってー!
「え?え?な、なぜ避けない!?い、いかん!吹き飛ぶぞ!リ、リノくーーーん!」
強烈な風に俺の軽い体が浮き上がり、上空へと吹き飛ばされる。
あー、秋の空がきれいだ。「天高く馬肥ゆる秋かな。」てか。
いかん、現実逃避している場合ではない。受け身を取る準備をしなければ・・・。げ、ダメージが大きくて体が思うように動かないぞ。う、うそだろ。この高さから地面に叩き付けられたら最悪死ぬぞ。
衝撃に備えて体を強張らせていたが、ボフッと何かに受け止められた。リディアが受け止めてくれたようだ。
「なんで避けなかったのだ!君なら軽く避けられただろう。お、おい、リノ君?どうした!」
俺は、動かしづらい腕を空に向けて呟く。
「あ、あ・・・、ぼ、冒険にで・た・・・かった・・・な。ガクッ。」
掲げていた手がダラリと落ちる。
「リノくーーーーーーーん!!!」
リディアの絶叫が演習場に響いた。
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