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夢だと思っていたら現実だった件 ~死にたくないのでソウゾウリョクを駆使して全力で抗います~  作者: 神子島 航希
第3章 生活環境改善

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30.模擬戦

 俺は木剣を正眼に構えて、すり足で自分の間合いへジリジリと入っていく。リディアは構えを取らず右手で木剣を持ったまま自然体なままだ。


 俺の間合いに入った瞬間、一足飛びで飛び込み、左の肩口を差し面の要領で狙う。背丈の差があって面では間合いが遠い為だ。が、リディアが振るった木剣に弾かれたので、そのまま駆け抜け間合いを取り振り返る。


「・・・子供にしては、異常に鋭い打ち込みだね。誰かに師事を受けているのかな?」


「いえ、私はしがない孤児です。そんなお金もってません!」


 答えながら、反時計回りに動いて横から打ち込み。が、すげなく躱される。


「・・・たしかに鋭い、が、所詮は子供の打ち込み。このままじゃ何時までたっても私から一本は取れないよ。」


 それから、何度かフェイントを交えて打込んだが、すべて簡単に躱されてしまった。


「ふぅーー。」


 何度目かの打ち込みの後、距離を取り一息入れる。


「おや、もう終わりかい?・・・このままじゃ君達を冒険者にする事は・・・。」


 リディアが余裕をもって喋りながら振り返っている途中で、一足で飛び込み面を狙う。


「なっ!!!」


 慌てて、木剣を掲げ俺の一撃を防ぐ。


「チッ!」


 不意打ちが決まらず、思わず舌打ちをしてしまった。欲張らず初撃と同様肩口を狙えば良かった。リディアを飛び越え、着地しながらしゃがみ木剣を水平に薙ぐ。


(星陰流 刀術 水面斬り!)


 地面スレスレを横薙ぎに振るい、相手の機動力を奪う技だ。剣が当たる寸前にリディアが一歩後ろに下がって躱した。


 良い反応だ。今まで上半身しか狙っていなかったので意識が上に向いている、プラス、反応しずらい足元を狙ったのに躱すか。


「なんだ急に!異様な速さだぞ!」


 横薙ぎに振るった剣を止めず、そのまま体ごと回転し、回転エネルギーを利用して切り掛かる。


(星陰流 小太刀術 旋風(つむじ)


 大男(バカ)の時は初撃で決まってしまったが、 旋風(つむじ)は本来、回転する連続攻撃技だ。遠心力を剣に乗せていくので、スピードも打撃力も回転するごとに上がっていく。


「くっ!な、なんだ。どんどんスピードと威力が上がっていくぞ!」


 しかも、相手の周りの回りながらの攻撃なので、どこから剣が出てくるか分からない。旋風(つむじ)は後手にまわると非常に厄介な技だ。


 最初は剣を下がって躱していたリディアだが、段々と上がる剣速に躱しきれなくなり、自身の剣で打撃を防ぎ始めた。が、威力もどんどん上がってるぞ。


 防いだ剣が弾かれ始めたリディアは、体ごと前に出て俺自身を止めにきた。だけど、そんな動きじゃ風は止められない。突き出された体に沿うように回転しながらリディアを躱しつつ、首筋へ剣を薙ぎ払う。


 入る!と、思われたが咄嗟に出されたリディアの剣に防がれた。


 防いだリディアが、距離を取ろうと後ろに下がったので、さらに追いかけようとし・・・違う!もう一度体ごと俺を止めようと、後ろ足に力を入れただけだ。


 リディアが先程とは違い、両手を広げ俺に掴みかかろうとしている。旋風(つむじ)の止め方としては正解だ。肉を切らせて骨を断つ。少々の手傷は無視して止めに掛るしかない。


 リディアは、体で止めに入る恰好をしつつも、俺の剣線に注意を払っている。たしかに、これで止めても俺の剣が当たれば一本だもんな。だが、ここは勝機(チャンス)でもある。


 俺はリディアの目線の先に


(【光源(ライト)】)


 生活魔法の光の玉を出した。


「なっ!」


 剣先に集中していたリディアは思わず目を瞑る。


 俺は回転エネルギーを直線エネルギーに方向転換する。無理やり動きを変えたので筋肉がミシミシと軋む。だが、ここが勝負所!


(星陰流 刀術 朔月)


 全回転エネルギーを乗せた神速の突き技。


 リディアも目が見えていないはずなのに、両手を引き戻し防御態勢に入ろうとしている。


 間に合うか?いや、間に合わせる!


 いけーーー!


次回更新は2025年12月1日です。

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