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夢だと思っていたら現実だった件 ~死にたくないのでソウゾウリョクを駆使して全力で抗います~  作者: 神子島 航希
第3章 生活環境改善

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29. 交渉

 整地された演習場で入念にストレッチをする。俺の直ぐ脇にはショートソードサイズの木剣が置いてあり、正面ではリディアがロングソードサイズの木剣で素振りをしている。洗練された素振りの一振りを見ただけでも彼女が強者だという事が伺える。


 俺達2人以外はダルトンとシンシア、ソフィーが離れた所で観戦をしており、それ以外の人間はこの場にはいない。


 なぜ俺らが相対しているか、それは数分前に遡る。


 ◇◇◇◇


「今回の事件の報酬は考えてきたかね。」


 そう聞かれた俺は、一拍置いて答えた。


「僕は・・・、いえ、私とソフィーが冒険者の本登録を出来るように取り計らって貰いたいです。」


「・・・ほう、金や魔道具ではなく、冒険者登録の特例を認めさせろときたか。これはまた面白い。たしか、君は8歳だったね。7年も早く冒険者になりたい理由は何かな?」


「世界を自由に見て回りたいのです。商人でも世界は回れるのでしょうが、護衛が必要と聞きました。でしたら自分の力で世界を回れる冒険者を目指したいです。冒険者は自由なのですよね。」


「そうだ。冒険者は自由だ。だが、自由には責任が伴う。依頼を遂行する責任、護衛対象を死守する責任、そして自分の身を守る責任だ。未成年に本登録を認めていないのは、その責任を負う力が無いからだ。君にはそれがあるのかい。」


「・・・責任を負う力はあると思っています。」


「口では何とでも言えるね。もしかしたら、君にはその力があるかもしれないが、そちらのお嬢さんはどうかな。」


「彼女の分の責任も僕が負います。」


「ほう、足枷を付けたままの自由か。大きくでたね。」


「勘違いさせて申し訳ありませんが、彼女も多少の自衛の力はあります。それ以外の責任は僕が負うという事です。」


「だが、やはり口では何とでも言えるね。それを確認させて貰えるのかな。」


「そこでお願いがございます。彼女の力は特殊なものです。その力を見るのはリディア様お一人、そして見た後は他言、及び一切の干渉を避けて頂きたいのです。」


「そこまでのものか・・・。よかろう。その条件を飲もう。」


「口約束では無く・・・魔力契約を結んで頂けますか。」


 リディアの魔力が一瞬大きく膨れ上がった。


「私が信用できないと・・・。」


「いえ、そのような事は・・・。ただ、保険が欲しいのです。私達はしがない孤児です。後ろ盾も何もありません。権力者に強く出られてしまえば泣き寝入りしかありません。そこをご理解ください。」


「だが、私にも面子がある。子供に言われるがままに魔力契約を結んだとなれば、他の者達に示しがつかない。」


 やっぱり、そういう流れになるよね。・・・仕方ないか。


「では、私をお認めになれば魔力契約を結んで頂けますか。」


「そうだな。私が認める程の人物、対等な契約だったとなれば侮られることも無いだろう。で、私をどのようにして認めさせる?」


「1対1の模擬戦は如何でしょうか。リディア様が実力を認める動きをしてみせます。」


「ふむ、実力を認めさせる動きか。・・・わかりずらいな。私に一太刀でも入れれば実力を認めよう。」


 ニヤリとリディアが笑う。


 ・・・ちっ!言質取られないようにしたけどダメだったか。


「わ、分かりました。善処します。」


 ◇◇◇◇


 と、いった流れで今から模擬戦をするところなのだ。


「私は何時でも準備OKだが、そちらは奇妙な踊りは終わったかい。」


「奇妙な踊りではありません。ストレッチといって怪我をしないよう予防の為の準備運動です。」


「ほう、妙な事を知っているね。では、一太刀入れる事が出来なかったらその動きを教えてもうかな。」


「別に、秘密でも何でもないですからこれは何時でも教えますよ!よし!準備完了。」


 ストレッチを終え、木剣を取り、リディアの方に進み出る。


「では、先手はあげよう。どこからでも掛かってきなさい。」


 ・・・よーし、吠え面かかせてやる。


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