13.子供達とシンシア
バーバラを連行しながら、院の庭へと出た。パルムの木が植えてある庭には、入り口近くに後ろ手に縛られた職員、奥の方には子供達が炎狼隊に囲まれて座っていた。
俺達の姿を見つけたそれぞれのグループが叫ぶ。
「「い、院長!!!」」
「「リ、リノ!!!」」
飛び出しそうになる子供達を、炎狼隊の兵が優しく制する。
「行って安心させてあげるといい。」
リディアが声を掛けてくれたので、俺は子供達の方へと走って向かう。リディアは捉えた職員の方に向かうようだ。
「お、おい、リノ何があったんだよ。もう、わけわかんねえよ。」
「リノ、だいじょうぶ?ケガはない?お出かけしてたんじゃないの?」
「な、なんであんたがお貴族様と一緒にいるのよ。しょ、紹介しなさいよ。」
「ん。」
皆が一遍に質問してきて大混乱だ。バニラはブレないし、ボーノは喋ろうか。ただ、皆いつも通りで安心した。
そこへ、ダルトンに支えられたシンシアがやってきた。しまった。リディアにシンシアの事を言っていなかった。恐らく兵が子供達を保護する際に、勘違いしたシンシアが抵抗して制圧されたのだろう。連行されるシンシアを見つけて、ダルトンが保護してくれたのだろうか。
シンシアが俺の目の前にきた。
「リノ・・・。」
俺と目線が合うようにしゃがみ、涙目で俺を見つめるシンシア。
そして・・・
バチーン!
平手が俺の左頬を打った。いったー!
そのまま抱きしめられた。
「もう!なんでこんな無茶をしたの!一言、一言相談してくれてもいいじゃない。私はそんなに頼りない?・・・もっと、もっと頼って。」
「ご、ごめんなさい・・・。」
ぎゅーっときつく抱きしめられる。
「ゆるしません。これはお仕置きです。」
く、くるしい。必死に顔を動かして、ダルトンを見る。
「う、うらや・・・あ、いや、しょうがない。ここは甘んじて受けるしかないよ。」
ひ、他人事だと思ってー。
暫くの間、幸せなお仕置きを受けた。
俺が、お仕置きを受けている間、ダルトンが子供達に掻い摘んだ説明をしてくれた。
「・・・まぁ、要するに、これからは食べる物にも、着る物にも困らないという事だよ。もちろん、働きに出なくてもいい。勉強したい子は学校に通う事も可能だ。」
子供達は最初こそ困惑していたが、最後の要約を聞いて花が咲いたように笑顔になった。
「うぉぉ!飯が腹いっぱい食べられるんだー!」
「働きに出なくてもいいなんてサイコーだね。」
「が、学校・・・、で、出会い・・・。」
「・・・。」
相変わらずブレないバーバラとボーノ。だが、彼らも子供らしい笑顔だ。
皆でワイワイと盛り上がっていると、リディアがこちらに近づいてきた。
皆の顔に緊張が走る。そりゃあ、兵達の親玉だもんな。
「・・・そんなに身構えられると心にくるね。」
リディアが悲しそうだ。
その声でシンシアも我に返り、俺を解放してくれた。
「あ、あの、この度は、私達を助けてくれて、あ、ありがとうございます。・・・す、すみません。お貴族様と、お、お話をした事が無くて、こ、こんな話し方になってしまって・・・。」
「良いよ。良いよ。他の貴族とは話さない事が無難だけど、私はそんな事を気にしないから無理をしなくても良いよ。さて、ダルトン。この子は汚職に染まった職員では無いで良いんだよね。」
「はっ!シンシア嬢はこの孤児院出身で、福祉課は通さず直接バーバラ院長に、ただ働き同然で雇われていた、いわば被害者です。」
「ふむ、院の運営は出来るかな。」
「はっ!ほぼ一人で切り盛りしていたので問題ないかと思います。・・・だよね、シンシア嬢。」
「は、はい。経営の事は良く分かりませんが、院の内部の事は隅々まで把握しています。」
「・・・では、君に次の院長をして貰おうかな。」
「え???」
無茶ぶりきたーー。
お読みいただきありがとうございます。評価・ブックマーク頂けると嬉しいです。




