12.捕縛
「おぉ、本当にあった。」
倒壊した、本棚の奥にぽっかりと空間が空いていた。ここからだと中が暗くて見えない。
「ふむ、暗くて良く見えんな。これはちゃんと確認せねば。」
リィデアは声を弾ませて中に入ろうとしている。絶対この人楽しんでいるよね。いや、俺もワクワクしてるけども。孤児院の報告受けた時との落差が凄いな。良くも悪くも感情表現が素直なのだろう。
リディアが本棚の瓦礫を踏みしめて中に入ろうとした瞬間、
「ふ、ふざ、ふざけるなーー!!ワシがどれだけ苦労して貯めてきたと思っているんじゃ!!なぜじゃ!なぜバレたのじゃ!」
バーバラがキレた。ギラギラとした目で俺を睨みつけた。
「お前じゃ!何もかもお前が悪いんじゃ!この、こわっぱがーーーー!!」
突然、バーバラが俺に掴みかかってきた。ドタドタと俺に突進してくる。
が、所詮素人の足運び。どこを狙っているかも丸わかりだ。
俺の首を締めようと、突き出した両手を掻い潜り、けたぐりの要領で足払いをする。自分の走る勢いを止められないバーバラはそのまま床に突っ込んだ。
「ぶべらっ!」
入口で、バーバラの突然の凶行に動きが止めていた兵達が、慌ててバーバラを取り押さえる。リディアは一瞬こちらを一瞥したが、俺が対処すると考えたのか直ぐに隠し部屋へと入って行った。俺もその後に続くように隠し部屋に向かう。
「や”べろ”!ぞれ”はワジのじゃ!ワジの物じゃ!」
後ろで、鼻血を出しながら叫ぶバーバラを無視して、俺も隠し部屋へと入った。
「おや、来たね。見てみなよ。貯めるに貯めていたよ。」
リディアが光源の魔法を動かして隠し部屋全体を照らした。
そこには木箱が何箱も積まれており、その一つの蓋が外されていた。中を覗くと銀貨が敷き詰められていた。
「ざっと1箱に100万ダリはありそうだから、20箱で2000万ダリ。どのくらいの期間横領していたんだろうね。これは取り調べが楽しみだよ。」
リディアが獰猛な笑みを浮かべていた。
「リディア閣下。院の制圧を完了しました。職員は捕縛し、子供達は庭に保護しております。」
兵の一人が、隠し部屋の入口に報告に来た。
「わかった。ここにある物をすべて運び出せ。証拠品となるので丁寧に扱えよ。」
そう指示を出してこちらに振り返るリディア。
「リノ君。お友達を皆保護したようだ。見に行こう。」
リディアが隠し部屋を出ていくので、慌ててその後を付いていく。バーバラの部屋に出ると、丁度バーバラが後ろ手に縛られて連行されるところだった。鼻血はそのままだ。向こうもこちらに気付いたようで、怯えたような目でこちらを見ている。
「おや、手酷くやられたようだね。院長。まぁ自業自得だね。ほら、後ろが閊えているんだ。さっさと歩いてくれないか。」
クックックッと笑いを押し殺しながら、剣の鞘でバーバラの背中を小突くリディア。良い性格している。
バーバラは「ヒーッ。」と悲鳴を上げながら足早に進んでいった。あ、足が縺れてこけた。後ろ手に縛られているので、また顔面強打している。いい気味だ。
「君も良い性格しているようだね。顔、ニヤけてるよ。」
リディアが呆れ顔で俺の顔を覗き込んでいる。俺は慌てて顔を擦って真顔に戻す。それを見ていたリディアがさらに呆れて苦笑いをしていた。お互い様だ。
こうして、電撃的に始まった捕り物劇は終息へと向かうのであった。
次回は2025年11月4日投稿予定です。
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