9話
ギルドにやってきたものの、結局彼女の正体が分からないままであった。
「でも、身分証明書がないと大変でしょうし、うちで冒険者登録する?」
「え、二重登録になりません?」
オリビアの言葉に、レイチェルは目をぱちくりさせて驚いている。
「そんなこと知っているのね」
「あ、えっと、なんか頭に浮かんで…」
レイチェルに入ったばかりの頃に説明を受け、よく覚えていた。
「そのことを知っているなら、一般人ではなさそうね。冒険者かもしかしたら受付していたのかも。あなたの資格が見つかったら、今登録するのは削除しないといけないけど、問題ないわ。最低のFランクからになるけど」
「私が今何ができるか分からないので、仕方ないですね」
剣の動きはもしかしたらできるのかもしれないが、寝て筋肉が落ちている体で、まともに剣を持てるかも分からない。
「私たちの誰かいれば、採取クエストくらいなら、できますものね」
「このまま、オリビアもパーティーに入れちゃおうよ」
「リーフさん、私を入れるの嫌がりません?ずっと避けられている気がして」
「そうかな。生活リズムが合ってないだけだと思うけど」
3人がいないところで見かけたことがある。
リーフは一旦オリビアを見ると、すぐにすっと視線を外した。
「皆さん役職って何ですか?」
オリビアは彼女たちがリーフのパーティーということで、名前と容姿は知ってはいたが、どうやって仕事をしているかは分からなかった。
「私は格闘家で、主に素手で戦っていますわ」
カメリアは手のひらに拳を打ちつける。
「オリビアに格闘家のセンスがあるかは分かりませんが、簡単な護身術くらいなら教えて差し上げますわね」
「なんだか意外です。私以上にカメリアさんお嬢様って感じなので」
「あなた、自分のことお嬢様だと思ってますのね」
自分でそういうキャラ付けしているから。
「武器の扱いがあまり上手くなかったので。自分の体を鍛えたほうが早いと思ったのですわ」
「私は魔法使いだよ」
セレストはオリビアが持っているより小さな杖を軽く振る。
「魔法使いは魔力ないとできないですよね」
「そうだねー。でも、オリビア魔力あるから覚えればいけると思うよ」
「分かるんですか?」
「何となくだけどね」
オリバーのときは魔力がなく、魔法が使えなかったので、少しわくわくしている。
リーフが使っているのを見て、少しあこがれていた。
「私はガンナー」
カナリーは腰にかけていた銃を構える。
「カナリーは、早撃ちで百発百中の凄腕ガンナーだよ」
「すごいですね」
「普通だよ」
カナリーは口数少ないが、表情が出ていて、照れたところが可愛らしいと、オリビアは思う。
「それでここにいないリーフは魔剣士。剣に魔法を込めて戦ってる」
「同時にサポート魔法や攻撃魔法も使えるんだよね。私の手の届かないところとか本当助かる」
「…そこまで進化していたのか」
誰にも聞こえないぼそぼそとした小声でつぶやいた。
パーティーを抜けた後の評判は知っていたが、そこまで器用にできることが増えていたとは思わなかったのだ。