8話
「今日はどうしよっか?」
セレストが問いかける。
「杖使えば歩けるようになりましたが、まだリハビリが必要なのでは?」
「でも、いつまでも家にこもっているのももったいないよ。せっかくのいい天気だし、散歩でもしようよ」
窓の外を見ると、まぶしい太陽の光と青空が見える。
「そうね。せっかくだし、ギルドに行きましょうか。オリビアの調査の中途経過も気になるし」
そうして、ギルドに向かうことになった。
まだ、歩くのに時間がかかるので、杖とともに、倒れそうになったときのために、カメリアたちも支えてくれた。
「ここが私たちの所属しているギルドですわ」
レンガで並べられた二階建ての広い建物が見える。
(知っているよ。俺も数年通っていたんだから)
一ヶ月来ていなかっただけなのに、懐かしく感じる。
(俺の冒険者資格もうなくなっているんだろうな。死んだから、当たり前だけど)
ギルドの扉を開く。
ギルドの始業時間から数時間が経ち、間もなくお昼を迎えるが、ギルドの中はたくさんの人がいて、喧騒が聞こえてくる、
クエストの受け付けや、終了の報告やクエスト時の拾得物の換金、ギルドに備え付けの酒場で食事している者たちもいる。
「レイチェルさん」
「あら、セレストちゃんたち」
声をかけたのは、レイチェル。
ここのギルドでベテランの受付嬢である。
オリバーやリーフが所属したばかりの頃も、大変お世話になった。
「今日もリーフくん来てたわよ。前よりはましになったとはいえ、隈もひどくて」
「貯金の蓄えはあるから、働き詰めにならなくても余裕はあるんですけどね」
リーフに対する呆れのため息をつく。
「あら、もしかして例のあの子?」
「初めまして、オリビアです」
既知の人物に対して、初対面のフリをするのは違和感を感じる。
「オリビアって…」
レイチェルの顔が引き攣る。
「それって、あなた本来の名前?」
「いえ、リーフさんにつけてもらいました」
「そうね。オリバーくんと名前の雰囲気似ているものね」
名づけの可笑しさは誰もが共通で気になるようだった。
「セレストちゃんたちから聞いたけど、オリビアちゃん記憶喪失なのよね」
「そうですね」
「ギルドの方でも調べているけど、あなたの冒険者登録の資料がまだ見つかっていないのよね。ごめんなさい」
「いえ…」
自分が今取り憑いている彼女の正体が分からない。
そのことに不安を感じる。
「でも、入るのに資格がいるダンジョンにいたんだよ」
「そうね。言い方は悪いけど、不法侵入したか。もしかしたら、ダンジョンに拉致されたかもしれないわね」
「最近問題になっているよね。ダンジョンの隠し部屋を拠点として、人身売買している犯罪組織がいるって」
「誘拐されて、行方不明になっている人も聞きますものね」
自分が寝ている間にそんな問題が発生していたのかと驚いた。
「そうかもしれない前提のもと、いろんな街の行方不明者も調べているから、もう少しかかりそうなの」
「いえ、調べてくださってありがとうございます」