4話
勇者、オリバー・ナイジェル。
そして、彼のパーティー『オリーフロード』。
その名前がに威光があったのは、もう過去のものである。
そうなったきっかけは、リーフがパーティーから抜けたことであった。
数ヶ月前。
「リーフ、お前パーティーからクビな」
ギルドにある酒場。
喧騒しているなかで、オリバーはリーフにそう言い放った。
『オリーフロード』のパーティーメンバー、全員で5人が丸いテーブルの周りに集まっている。
「…どういうことか、説明してくれるか?」
険しい顔でリーフが問いかける。
「僕たち、今まで一緒にやってきただろ、オリバー」
オリバーは呆れたように、大きなため息をつく。
「お前、このパーティーで本当に役に立っていると思うのか?」
タンクであり、鈍器での戦闘も可能な、ボルドー。
弓使いで、戦略を立てるのが得意な参謀的立ち位置の、アンバー。
あらゆる魔法生物や精霊を召喚できる、ジェイ。
勇者であり、その剣の腕で数多のモンスターを倒してきた、オリバー。
そして、剣士のリーフ。
「パーティーに同じ役職の奴がいることは珍しくねえよ。でも、俺とリーフは剣の腕は対等じゃねえじゃん」
「…っ」
悔しそうに唇をかむ。
「でも、だから俺は、魔法も使えるように勉強していて…」
「ジェイの召喚した魔法生物で、魔法の攻撃はできるでしょー?」
ジェイはにやにやと笑いかける。
「魔法生物だけじゃなくて、精霊の強力な魔法だって使えるんだから」
「それに、そんな中途半端なせいで、今の自分が足を引っ張っている自覚あります?」
「そうそう。お前が詠唱している間、俺は他の奴をかばえないんだぜ?」
仲間たちからの提言に、リーフは顔を上げることができない。
「せめて、詠唱に集中してくれればいいのに、オリバーに攻撃がきたら、中断して敵に切りかかっていくじゃないですか。今までの時間が無駄になるんですよ」
「それだけじゃなくて、重症を負うこともあるだろ?タンクの俺、丸無視か?」
「剣をやめて、魔法一本で行くなら、まだ…」
「それは嫌だ!」
バンとテーブルを叩きつけ、立ち上がる。
「剣は、オリバーとずっと特訓してきた、絆の証だ。やめるなんて、できない」
「…どれだけ、オリバー様に執着してんのよ。うざ」
ジェイは誰にも聞こえない小声でつぶやく。
「なあ、オリバー。お前が勇者になるとき、一緒に来てくれって。小さい頃からずっと一緒だったじゃないか」
リーフはオリバーを縋るように見ている。
「召使いが欲しかっただけに決まっているだろ」
そう冷たく言い放ち、リーフを見下ろす。
「俺とお前が対等な訳ねえだろ。勘違いしてんな」
「オリバー?」
オリバーの言葉にリーフは動揺する。
「俺は村の貴族の息子で。たまたま親のいなかったお前を引き取ってやっただけ。そこには主従関係しかねえよ」
「お前のこと、友達だなんて思ったこと一度もねえ」
その言葉に、リーフはショックを受け、崩れ落ちる。
オリバーは食事代を支払うと、リーフを残し、立ち去っていった。