32話
真っ暗闇の空間にリーフの魂があった。
リーフを座り込んでいる。
外の声は聞こえていないので、悪魔に取り憑かれたなんて、思っていない。
一人、殻に閉じこもっている。
全てをあきらめ、目を閉じる。
「これでよかったんだ」
追放を言い渡されたとき、本当に見捨てられたと思ってしまった。
だから、戻るためとはいえ、別のパーティーのリーダーになってしまった。
オリバーが亡くなったあと、反省していたボルドーから、追放は見下してくるパーティーメンバーからリーフを守るためと聞かされた。
力が抜けて、体が崩れ落ちた。
何で、信じることができなかった方だろう。
オリバーはずっと、リーフを馬鹿にする発言をするメンバーに、咎めていたのに。
こっそり使う回復魔法にいつも気づいて、使いすぎるなと注意したのに。
治癒魔法を使うときに、「ありがとう」と笑いかけてくれたのに。
自分はオリバーが大好きでずっと見てきたけど、オリバーだってリーフのことをずっと見てくれていた。
これは、大事な人を守れなかった罰。
自分の体で、大好きな人が生きてくれるなんて、素敵なこと罰になんて、ならないけど。
「リーフ」
オリバーが呼ぶ声が聞こえる。
目を開けると、オリバーの姿があった。
「オリバー、来てくれたんだ」
オリバーがリーフのもとに歩いて、ぎゅっと包み込む。
「俺にはリーフが必要だよ。召使いだなんて、思ったことなんてない。大事な仲間だ」
追放したときのオリバーの言葉。
今なら、それが嘘だって分かる。
でも、実際に耳にすると、心に染み込んでくる。
「帰ってこい、リーフ」
また、自分は勘違いしていたようだ。
オリバーは、誰かを犠牲にしてまで、生きようだなんて、考えない。
ずっと、見ていたはずなのに、何も気づいていなかった。
「ごめん、オリバー」
涙を一筋流す。
「帰ってこい、リーフ」
ダンジョンのとある広い空間で、オリビアがリーフに抱きついている。
「何でだ。力が抜けていく」
オリビアから白いオーラが出て、リーフを包んでいく。
「俺が追い出されるなんて。この力、もう次代の勇者が現れたのか…」
だんだん声が弱り、かき消えていった。
リーフの目が閉じる。
「リーフ?」
リーフの体の動きが止まり、しゃべらなくなって、顔を上げた。
リーフの目が開く。
「オリビア?」
「リーフ、戻ってきたんだな」
「…ごめん、ただいま」
リーフの意識が戻ったと分かり、カメリアたちもやってくる。
「バカやったリーフを痛めつけるチャンスだったのに」
「まあ、後でお仕置きさせてもらいますわ」
「おかえり、リーダー」
みんな、笑いかける。
「オリビアの声よく聞こえなかったけど、何言われたの」
「頭ぼんやりしていて、よく覚えていないよ」
頭を横に振る。
「ただ、オリバーの声も聞こえた」
(俺の?)
「僕が仲間だって」
(ああ、さっきの言葉がそのまま、元の俺が言ったように聞こえたのか)
オリビアは一人頷く。
「僕は、オリバーの真意に気づかずに、追放をあっさり受け入れて、オリバーをそばで守れなかったことを後悔していた」
(リーフ、そんなに思い悩んでいたのか)
オリバーがリーフを守るために追放を言い渡したことは知らなくていいと思っている。
でも、いつか追放のことを謝りたいと思っていた。
「でも、オリバーはそのことで恨む人じゃない。自分のせいで誰かが傷つくことに悲しむ人だから」
「そうです!リーフさんの人生を歩んでほしいと思いますよ!」
オリビアから出た言葉だが、これはオリバーの本心だ。
「うん。本当勝手なことして、ごめん。オリビアも聞こえなかったけど、助けようとしてくれて、ありがとう」
初めて、オリビアに優しく笑いかけた。




