表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/38

3話

 「は?」

自分の見ているものが信じられなかった。

(何で、俺はあの()の姿になっているんだ?)

頬をペタペタ触ると、感触がして、鏡に映る女性も同じように触れている。

頬をむにーっと引っ張ってみて、痛いと感じる。

(夢じゃない?)

今まで見ていなかった首から下を見てみる。

服は白く脱ぎ着がしやすいシンプルなものが巻かれていた。

そして、男の自分の体にはなかった、足が見えないほどの、二つの大きな山が目に入る。

恐る恐る触れてみると、ぷるんと感触がして、揺れた。

(他人のものとしてじゃなくて、自分のものとして感じる)

今の自分は女の体になっているのだと、実感する。

ふと、どんどん走る音がこちらの部屋に近づいてくる。

ばん、とドアが大きく鳴って、開いた。

「大丈夫!?」

水色の髪の女性が入ってきた。

いきなりのことで、オリバーはびくっと体を揺らす。

かなり急いできたのか、はあはあ息を切らしている。

「びっくりしたよー!クエストから帰ってきたら、大きな音がしたから」

ベッドから落ちたときの音だろうかと、頭に浮かんだ。

水色の女性の後ろから、二人の女性も入ってきた。

三人は、オリバーの姿を見ると、目を丸くした。

「目が覚めたんだー!」

よかったーと、水色の女性がぎゅっと抱きついてくる。

この女性の知り合いだったのかと、どうやって誤魔化そうかと考える。

しかし、起きたばかりなのと、何故この女性になっているかも分からないので、頭が回らない。

「セレスト」

赤い髪の女性がオリバーとセレストと呼ばれた女性を引き離す。

「いきなりで驚いたでしょう。ごめんなさいね、騒がしくて」

「い、いや…」

関係性がまだ分からないので、何と言えば分からなかった。

「声ガサガサだね」

「まあ、長い間眠っていたものね」

「じゃあ、ポーション飲む?私が今日使っていない分あるから。こういうときに効くかは分からないけど」

茶髪の小柄な女性が鞄から取り出したポーションを手渡してくる。

オリバーも分からなかったが、かすれた声のままだと話しづらいので、可能性があるならと、ごくごく飲み干す。

「ありがとう」

自分から出てきた声に驚いて、咳き込んでしまった。

「声、すっごくかわいいね」

本来の声かは分からないが、出てきた声はまるで鈴の鳴るようなといえばいいのか、小鳥が歌うようなといえばいいのか。

女の子らしい高く、かわいい声だった。

自分ではない他人の体だとは分かっているが、自分の喉の動きに合わせて出る声だと思うと、違和感しか感じない。

「今はまだ、ベッドにいなさい。あなた、一ヶ月も眠っていたのだから」

赤い髪の女性に連れられ、ベッドに腰かける。

一ヶ月間眠っていたのなら、声のかすれたのも、体の動きが悪いのも理解できた。

改めて、三人の女性を見る。

一度落ち着いて顔を見ると、彼女らがどういった存在であるかを、だんだんと思い出してきた。

(この()たちって、あいつがいるパーティーの…)

「おい、セレスト。帰ってきたのに、ただいまも言わず、どうしたんだ?」

男の声が聞こえてくる。

オリバーにすごく聞き馴染みのある声だ。

顔が引き攣り、冷や汗がたれてくる。

「この部屋から物音が聞こえて、驚いちゃって」

「あなた、今日は一日この家に来たのに、来るの遅いわよ」

「悪い、気づかなくて」

黒髪の男性が入ってきた。

オリバーの知っている男性だった。

(リーフ!)

オリバーの幼なじみで、かつて『オリーフロード』にいた男であった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ