26話
それから数日間。
リーフから教えることは何もないと、セレストの授業以外は完全になくなった。
その代わり、初心者ダンジョンなど、簡単なクエストに女性陣と一緒に取り組むようになった。
リーフは一人で朝早く出て、夜遅く帰ってくる日々に戻った。
オリビアどころかカメリアたちとも顔を合わせていないらしい。
(オリビアとして、距離が近づいたと思ったのに。まあ、今までの全部俺の想像で、本当にリーフが考えていることなんて、分からないからな)
今日はオリビアだけがオフである。
全員でオフのつもりが、急にカメリアたち指名の仕事が入ってしまったのだった。
そのため、オリビアは一人街を歩いている。
「とりあえず一度話をしよう。今日が無理でも明日でも。根気よく続けていこう」
せっかく一人になったので、みんなにお礼をしようと考えた。
報酬が出る度に、定期的に今までお世話になった分返してはいるが、それだけが恩返しになるとは思っていない。
一人でごちそうを用意して、プレゼントを準備する。
リーフは食べてくれるか分からない。
帰ってくるのがいつもの通り遅かったら、カメリアたちが作ったものとして、置いてもらおう。
やはり、オリビアは嫌われている。
それでも、助けられたのは事実だから。
助けられたのは、オリバーではない。
ただ、オリバーもリーフを傷つけてしまったという事実があって、彼に何とか報いたいのだ。
「あ…」
雑貨屋を見つけたので、中に入っている。
様々なマグカップのコーナーがあった。
赤い椿、青空、カナリア、そして葉っぱのついたオリーブ。
いいものを見つけたと4つ購入。
喜んでもらえるといいなとスキップする。
「ふん、浮かれちゃって」
最近聞いたばかりの声がする。
その声の主を見ようと、振り返ようとするが、眠気が襲ってきて、倒れる。
「幸せになることなんてないんだから。ねえ、リーフ」
歪んだ笑顔のジェイがいた。
ジェイが召喚したモンスターでオリビアを運ぶ。
オリビアの持っていた紙袋の存在には気づかなかった。
オリビアの手から落ちた紙袋の中は、葉のついたオリーブのマグカップだけが割れていた。




