24話
着々と、層を降っていく。
「私たちいなくても大丈夫だったみたいだね」
「ええ。訓練場にいた方々から、まだ基礎訓練しかしてないと聞いていましたけど、ちゃんと戦い方も教えてましたのね」
「いや、まだ何も教えてないよ」
「え?」
「今日の様子を見てから、合った方法を教えようと思っていたから」
今は9層まで到達していて、複数体に増えたモンスターも倒し終えている。
鼻歌交じりで、素材を回収していく。
「オリビアー、疲れてない?大丈夫?」
「はい。体力ついてきました!」
盛り上がってない力こぶを見せる。
「何者なんだろうね、あの娘」
「本当にな。あの歌も知っているし」
「オリビアの鼻歌ですか?確かにたまにリーフから聞いたことがありますが」
「僕とオリバーの呼吸の村の歌なんだよ。でも、彼女を見たことがない。1年に1回は帰っているのにだ」
「謎が深まるね」
話が聞こえてないオリビアは気にせずに、進んで行った。
オリビアたちは10層前の門にたどり着く。
「オリビア、あなたは強いのかもしれません。でも、フロアボスはとても強いです。油断しないで」
「もちろんです」
門を開く。
そこにいるのは何度も見たことがある。
人の背丈の何倍もの大きさの熊。
「援護必要?」
「平気です!」
(首までは届かないから、まずは足を攻撃して転ばせる。仰向けに倒して、心臓を直接狙う。たとえ力が足りなくても、何度だってやってやる)
今の背丈じゃ足りないので、少し跳んで斬りかかろうとする。
しかし、1回踏み切った途端、熊を越えて飛んだ。
(体が軽すぎる。いつの間に、こんな跳躍できるようになったんだよ)
リーフたちが目を丸くしているのもよく見えた。
(予定変更。このまま、切る)
剣の向きを変えた。
「はぁー!」
オリビアが力を込めると、剣から炎が出る。
そして、胴体を真っ二つにした。
オリビアが地面に着地する。
その様子を唖然と見ていた。
「今の何!?」
最初に声を上げたのはオリビア自身だった。
「何か剣から炎が出てきたけど!これそういう剣なら、先に言えよ!」
演じるのも忘れて、リーフに詰め寄る。
「いや、僕が使っているときはそんなことなかったけど」
「オリビア、マジックセイバーなんだね!」
「ま、まじっくせいばー…」
初めて聞く言葉でたどたどしくなる。
「魔剣士の一種だよ。普通の魔剣士は、自分の強化と相手の弱体化の魔法くらいしか使えないんだけど、マジックセイバーは属性の魔法を重ねるの!オリビアみたく炎とか、素早さが上がる雷とか」
「へぇ」
魔力がなかったので、魔法関係のことはあまり知らなかった。
「マジックセイバーは希少職だから、しっかり使いこなせば、名前もどんどん売れるよ」
(じゃあ有名になれば、この娘の所在も分かってくるのか?)
希望を見いだしていた。




