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2話

 目を開くと、見えたのは木製の茶色い天井だった。

(俺、生きている?)

のっそりと体を起こしていく。

(体が重いし、硬い)

時間がかかり、バキバキと鳴っている。

完全に起き上がると、髪がばさりと視界に入ってくる。

(髪がすごい伸びてる。この体の動き辛さといい、目覚めるのにどれくらいの年月かかったんだ?)

長い髪を切るかまとめるかしたいが、周りにはどちらもできそうなものはない。

(剣でもあれば、ばっさり切れるんだけどな。あのクモに食べられたし)

髪を剣で切るなど、危険で無頓着なことを考えていた。

(あの剣、村から出てきたばかりのときから使い続けていた大事な剣だったんだけどな)

そのときのことを思い出す。

どこか洞窟の中にあって、台座に突き刺さっていた。

一人で抜こうとさんざん引っ張ったが、抜くことはできない。

そばにいたもう一人に手伝ってもらって抜くことができた。

(最初に見つけたから、俺のものだって。よくあいつはそんな俺のわがままを許してくれたよ)

思い出して、声に出して笑ってしまった。

控えめに笑ったが、その声はかすれている。

(どれくらい寝ていたか知らないけど、声も出しづらい。前に風邪ひいたときとは違うし)

何故かそのときより高いような気がすることには違和感を感じている。

それより、ここはどこなのだろうかと、周りを見渡す。

自分が横たわっているベッド。

上に花瓶が置いてある棚。

2人でお茶でも飲めるテーブルと椅子。

シンプルな感じの部屋のようだった。

医者にでも見せているのかと思いきや、どこかの宿屋の部屋と似たような感じ。

(まあ、俺なんかを数日間。下手すりゃ何年間も置いておけないよな。野ざらしにされてないだけましだろ)

また見回している途中、気になるものが視界に入った。

金髪の女性であった。

(あ、ダンジョンで見つけた())

彼女も無事だったようで、安心した。

「あの…」

声をかけようとしたが、かすれているので上手く出せない。

会釈を済ませるだけにした。

目の前の彼女も同じように会釈する。

静かな時間が流れる。

自分が話すことができないので、彼女が話すのを待ったが、黙ったままであった。

仕方ないとかすれながらも、口を動かす。

少し距離があるのでよく見えないが、彼女も同じように口を動かしている。

でも、自分のかすれている声しか聞こえてこない。

どうも様子がおかしいことに気がつく。

ベッドを降りてみることにした。

足を降ろして、立ち上がろうとするが、眠っていて動いていなかった体に筋肉はなく、崩れ落ちてしまう。

ガタンと激しく打ち鳴らしてしまった。

痛みに悶えながらも、這いながら進む。

彼女のいるところに行こうとするが、壁で行き止まりになる。

どういうことかと、棚に手をかけ、立ち上がっていく。

立ち上がったところに鏡が貼り付けられていた。

そこに映るのは、自分の姿ではなく。

ずっと探していた女性の姿であった。


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