19話
オリビアは千回振り続けた。
さすがにまだ連続で持ち続けるのは厳しかったので、途中で置いて、水分をとったりしたが。
振り終わると、周りから歓声が上がる。
「お嬢ちゃん、やるじゃねえか」
「根性あるんだな」
オリバーのときからの顔なじみが声をかけてくる。
「やり終わりました」
笑顔でピースサインをする。
「あんたみたいな華奢な女が、リーフたちの特訓についていけるのか心配したが、余計だったな」
ガッハッハと豪快に笑う。
「なあ、今はリーフたちのパーティーの世話になっているだけで、別にパーティーのメンバーって訳じゃないんだよな。だったら、俺たちのパーティーに…」
「随分余裕だね」
勧誘の言葉をリーフが遮る。
「僕はいいけど、カメリアたちにさんざん世話になっておいて、別のパーティーに行くつもり?僕はいいけどさ」
最後の言葉を強調させ、こめかみをぴくぴくさせている。
「そ、そんな訳ないじゃないですか」
何で怒っているのかは分からないが、その様子が怖くて、声を震わせる。
「ごめんなさい。私、いろいろできるようになったら、リーフさんのパーティーに入らないかって、カメリアさんたちに誘われているんです」
「カメリアちゃんたち相手なら仕方ないな」
相手もあっさり引いてくれた。
「しかし、オリビアちゃんが可愛いから、取られまいと嫉妬するのも分かるが、束縛が激しいと嫌われるぞ」
「彼女とはそんなんじゃないし。それに君たちでしょ。カメリアたちとのパーティーでも恋愛がどうのこうの、噂しているの」
「あったりまえだ!あんな美女たちを侍らせといて」
「ハーレムとかうらやましぞ!」
「「「そうだそうだ!」」」
「だから、僕とカメリアたちとの間に恋愛なんてないんだっての!」
「ははっ」
感情的になるリーフの姿に思わず、笑ってしまう。
その声につられて、みんな大笑いを始めるし、リーフもふっと軽く笑いをこぼす。
その声はギルド中に響き、レイチェル始め受け付けの人たちから叱られる。
「まあ、そんなに余裕あるみたいだし?休憩切り上げて、トレーニング再開しようかな。さすがにまた素振りは飽きるだろうから、腹筋背筋腕立てそれぞれ百回とか」
「おいおいさすがに素振り千回やり終わった後にきついだろ」
「あ、まだ増やしてほしい?」
自分の発言がオリビアに反映してしまうと、皆口をつぐんでしまう。
「望むところです!」
ガッツポーズを決めると、体勢を腹筋へと変える。
(今のオリビアに体力が必要なのは確かだからな。何、今なら筋肉痛も俺が味わうんだ。徹底的に鍛えて、強くなってやる)
リーフのスパルタなトレーニングは日が暮れるまで続いた。