「だから嫌いなんだ」と、彼は言った。
「お前はほんっっとにどうしようもないなぁ。そんなんだから、女の子にモテないのよ」
そう言えば、男のクセに、彼は泣きじゃくった。
そんな姿を見せつけてくる男にイラッとしたアタシは、彼の髪を鷲掴みにして、アタシが周りからお前をイジメてる様に見られたらどうしてくれんだよっ!? や、泣いて同情をさそってんじゃねえっ!!! と叱り付ける。
今思い返せばアレは、アタシなりの愛情表現だったのだと思う。
素直に「大好き♡」だと伝える事が出来ず、そのフラストレーションが爆発して、彼をイジメる事で、自分の愛情表現を精一杯に伝えていたのだろう、と。
…まぁ、所謂、若気の至りというヤツだ。
「アタシさ…子供の頃から、アンタの事、好きだったのよねぇ♡」
小学校を卒業すると同時に通う学校が別々となり、彼との接点がほぼ途絶えてからの社会人三年目の現在。そろそろ結婚を視野に考えていた今日に、運命的な再会を果たす。
擦れ違い様、最初は気付かなかったが、雰囲気や喋り方が気になり、其処で“大人になった彼”なのだと気付く。
隣に見知らぬ女がいたが、気付かないフリをして、「少年」から「男」になった彼に声を掛けた。
彼は驚いた様に目を見開いて、アタシに視線を注いだ。隣の女には、一切目もくれずに。
それを好機と捉えたアタシは、前述での想いを口にした。
隣にいる女が、彼とどーゆう関係性かはわからないが、如何だってイイ。だって、アタシの方が昔っからの知り合いだし、先に彼に惚れていたからだ。
ポッと出の、何処の馬の骨とも判らぬ人間よりも、素性を知ってる女の方が、彼にとっても結婚相手に申し分ないだろう。
「あー……ごめんっ。君の気持ちには応えられない…」
「………うん…? アタシの聞き間違いかな? 」
大人になったとはいえ、彼は“彼”だ。つまり、アタシの気持ちを断る事なんてあり得ない。
「でっ…でも……“お付き合いしてる女性”はいないんでしょ? 」
その隣に立つ、アタシよりも可愛くなくて、服装もダサい女が、まさか恋人とか言わないわよね?
「ッッ………だとしても…君だけは、俺のパートナーに選ぶ事はない」
「はっ……なっ…なんでよッ!? アタシ、この女よりも可愛いじゃないっっ!!! 」
彼が、隣の女を守って、本当は付き合ってるのに誰とも付き合ってないと嘘を吐いて、その上でアタシの告白を無碍に扱った事に腹が立った。
こんな可愛げが無くてダサくて、大人になってからアンタに惚れた素性の判らない女の何処がイイの? と。子供の頃からアンタの事を知ってるアタシの方がずううぅーーっっと信頼出来るでしょ!? …と。
「……だから、嫌いなんだ…」
「………うん……? 」
「そうやって、他人の気持ちは全面的に否定するクセに、自分の気持ちが否定されたら、ぎゃあぎゃあ喧しく喚いて、周りに助けを求める。それに今回は、周囲の目を気にせず、自分の想いを伝えて、断り辛い雰囲気を作った。……昔っから、なにも変わってないね? 君は」
「………え…っとぉ……」
「昔っから、俺はお前の事が大っ嫌いだった。二度と、“俺達”に関わらないでくれ」
その言葉を吐き捨てる様に言った彼は、隣に居座る女の肩を抱いて立ち去っていくのが、視界に入る。アタシを、置いて…。
メ〇ガキを描こうとして、失敗しました…。