B級アクション映画みたいに—―
B級アクション映画みたいに悪の組織を最後のひとりまで皆殺しにしてめでたしとはいかない。ラナ宰相家はネパールを代表する政府であり、西部の毛沢東主義者の支配地域を除くとしても、エベレストはラナ宰相家の領土――つまり、ネパールの財布を握っているということだ。
銃撃戦の後始末は大爆発ではなく、弁護士がつける。スマートな英語をしゃべる〈第五〉の弁護士とラナ宰相家の弁護士がそれぞれのクライアントの利益を代弁するものとして、インドの高級ホテルでスマートな落としどころをスマートに探る。わたしはこの話し合いの席にいた。フィルもムツノカミもいない。では、なぜわたしがそこにいたのかというと、〈第五〉の弁護士のご指名だ。彼は古い家柄のボスニャック人で、わたしに、
「テーブルの下に隠すように持っていなさい。もし、交渉が決裂したら、撃ちまくるように」
と、言って、フルオート射撃対応のマシンピストルを二丁持たせた。結局使わなかったが。
〈ファクトリー〉について、〈第五〉からは一切の情報は与えない。調べたかったら、自分たちで勝手に調べろ、というのが、〈第五〉の主張だった。ラナ宰相家は〈ファクトリー〉にとんでもないお宝が隠されていると期待して、わたしたちを拷問にかけようとしたらしい。〈第五〉の執行部隊とその協力者に喧嘩を売った罰として、彼らのディズニーアンダーグラウンドは潰した。だが、〈ファクトリー〉にコンタクトするならご自由に。これがスマートな英語をしゃべる弁護士たちの落としどころだった。もし、ラナ宰相家側の弁護士が「ふざけんな、もっとよこせ」と言ったら、わたしはテーブルの下から彼女を蜂の巣にしていたところだ。
交渉が終わると、早速わたしはエア・シップに乗せられた。ムツノカミとはここでお別れ(またすぐ会うことになるだろう。この調子なら)。わたしとフィルは探索機体から戦闘機体へと戻った。今ごろ、〈第五〉の研究所では戦闘機体に異子遮断機能を搭載できないか、スペック表とにらめっこしていることだろう。今回の調査で探索機体の脆弱性が見逃せないレベルのものだと分かった。何せ、フィルは魚に食われていたのだから。
フィルにとってラッキーだったのは、既にそのころには休眠していたから、何があったのか分かっていないことだった。不細工な魚の頭からわたしが彼を引きずり出した記憶など、残っていないほうがお互いのためなのだ。
しかし、どうも、最近のわたしは皮肉屋からめんどくさがり屋へと変わりつつある。パシャの首をリアルに近づけるべく、試行錯誤した日々を懐かしく思っている。だが、ソトフとテロに明け暮れた日々については、――どうだろう。よく分からない。なぜ、わたしは今ここにいるのか。自由になったら、また逮捕されるか破壊されるまでテロに明け暮れるのか。なら、なぜ今すぐここでやってしまわないのか? そして、こういうとき構築機体が避けがちな疑問――わたしは何をしたいのか?
まあ、考える時間はまだまだある。ソトフがそんなに簡単に捕まるとは思っていない。崖からぶら下がるソトフの指を踏み砕くまでに、何らかのこたえが出ているはずだ。たぶん。




