新聞社へ思わぬ訪問者(その9)
さてさて…津雲は資料管理の仕事を
して一段落を終えた時の出来事
津雲【しかし、毎度の事だけど
やってもやっても減らない
とはまさにこの事だよな~
老眼が進む進む】と眼鏡を
外してからぼやいていると
佐山【津雲さん、自業自得ですよ~
本来の仕事をしないで
取材に行くからですよ】
津雲【コラムを書くにはやむを得ない
んだよ、誰かさんに頼まれてな
~終わりがこないんだよ】
佐山【そう言いながら直帰とか
されてる人ですからね~】と
疑いの眼差しで
津雲を見ていると
小谷【まあまあ、やるべき事は
やっていますから】と
たしなめている
津雲【キャップ!、褒めても何も
出ないぞ~】
小谷【ダメですかね~色々ご迷惑
被ってますからお歳暮とか】
佐山【それなら私も】と手を上げる
津雲【それは却下、そもそも何で
同僚や上司にお歳暮送らなきゃ
ならないんだよ。
それを言えばこっちも
もらわないと】
小谷【いや~津雲さんには今年も
苦労させられましたからね~
おかげで胃薬の瓶を何箱
開けた事やら】
佐山【そうなるとキャップには
お歳暮を送らないと…】
津雲【2人共に単純にお歳暮が
欲しいだけだろう】と
腕を組みぼやきながらも
笑いをこらえている
立花【あっ!津雲さん、津雲さんに
お客さん来てるわよ
応接室にいるから】
津雲【客?この年末に一体誰ですかい】
と椅子から立ち上がる
立花【ここに来るという事は
少し厄介な事態の人達よ
とにかく早く向かって
先程から来られて
お待ちなのだから】
津雲【はいはい、分かりましたよ】
そういって津雲は会議室へ向かい
到着した…
津雲【果たして、どこのどなた様かね
~面を拝むとしますかね】
ドアをコンコン…
津雲【失礼します】と一礼をして
入室する
多村【津雲さんお久しぶりね、
相変わらずのご活躍で
なによりです】
津雲【これはまた珍しい方が、
お久しぶりですね】と
苦笑いする
多村【いえいえこちらこそ
まさか再び津雲さんには
お会いする事になるとは
思いもみませんでしたよ】と
こちらも少し苦笑いしている
津雲【まあ、とりあえず
お座りになって下さい】
多村【それでは失礼して】と
ソファーに腰をかけている
コンコン…失礼致します…と
一礼をして入室して
受付担当がコーヒーを
テーブルの上に置いていく
多村【ありがとうございます】と
軽く頭を下げている
受付【失礼致します】と一礼をして
退室していった
津雲【しかし、天下の週刊誌の
編集のトップがこんな所で
時間潰しで来るとは】
多村【皮肉を込めれば津雲さんの
コラムのおかげでやりにくくは
なっていまさすけどね】
津雲【正直な感想を言えば
ぼちぼち来るだろうなという
考えはあったけどな】
多村【こちらはこれで苦情を言えば
地方新聞にしてやられたと
言われますし、今では
ネットでも叩かれますしね】
津雲【元のキッカケはそちら
なんですけどね】
菅野【見事にブーメランが
帰ってきてますよ
困った事にウチの人間の
個人情報や家族情報まで
漏洩しているようで、
迷惑な配信者が学校前で
警察の張り込みみたいに
いたそうですから】と
渋い表情をして津雲に視線を
向けている
津雲【どうせならそちらもウチと
同じようにすれば
良いじゃないですか?
記事にやましい点がなければ
とことん出来ますよ】
多村【それが出来たら苦労しません】
と少し苦笑いしている
津雲【あれだけ稼ぐために飛ばしを
やれば転換は難しいですかね】
と話しをしながらコーヒーを
1口飲んでいる
多村【正直難しいというより
無理と言わざるを得ません
まあ電話やネットで叩かれるの
にはそこまでではないですが
個人情報はさすがに犯罪です
からね】
津雲【こちらの人間は常に命を
狙われる覚悟を持たないと
撮る人は撮られる人の
業界ですから】
多村【津雲さんお得意の100%ですか】
津雲【それをしないと納得しない
のが今の世の中ですよ
それはこれまでのツケを
払う時が来ただけに過ぎません
からね、といってもSNSよりは
信頼性はあるとは
思いますけどね
新聞社は速報性よりも
正確性が1番ですから】
多村【そこは間違いないわね、
少なくとも私は津雲さんや
東葉日報さんの皆さんは
信頼できる人達ですよ】
津雲【お世辞はほどほどに
それにここに来るという事は
何かあるのでしょうから】
多村【津雲さんにはお世話に
なりっぱなしなので
それに何件かは大分前に
やり取りさせてもらっていた
じゃないですか】
津雲【しかし、あの人は男運か
とことん悪いですね
尽くし過ぎて自分が破滅
して、この世界からは
足を洗う事になるだろうし】
多村【再起不能ですか!】と
驚いた表情を見せている
津雲【そんな記事にGO出した人が
何を言う、それにあの人は
もうそんなに長くはない
記事云々よりも病気に
よって大幅に制限せざるを
得なくなりましたから、
これで覚悟を決めたでしょう
唯一の懸念は自らという点だ
ある意味で決断を促したとね】
と渋い表情をして多村に視線を
向けている
津雲【まぁ、ネットや電話の苦情は
正直こちら側からすれば
大した事じゃないんだよ
メールやスポンサーや広告に
苦情がいく事だろう
ウチみたいな地方新聞社は
ほとんど来ないけどな
質問はあるけど】
多村【質問?】
津雲【調査方法のやり方だよ
年代や場所まで正確に
しているからだよ】
多村【そこまでやると向こうも
文句言えませんからね
しかし、同じ人が来る事も
あるのではありませんか?】
津雲【まあ、あらゆる場所でやれば
そうなるのもあるだろうさ】
津雲【そう言えばこの情報は
どこまで掴んでいるんだい】と
幾つかの資料を提示していく
多村【これをどこで!】と驚いた表情
を見せている
津雲【とっくに掴んでいるだろう
驚く事は何もないだろう】
多村【しかし、あのアイドルグループ
に熱愛や結婚の話とは】
津雲【そんな話は良くある話
その世界の闇はこちらだろう】
と更に追加資料を提示する
多村【津雲さんには完敗です】
津雲【今ではご法度の部分だがな
それでもこれとこれは
お前さん方の出番だろう】
多村【さすが津雲さんですね
これは確認します
もうこんな時間ですか…】と
スマホの時計に視線を向ける
多村【すみませんそろそろ
社に戻らないと】と
慌てて支度している
津雲【いえいえこちらも長時間の話に
花を咲かせまして】
多村【ありがとうございました
失礼致します】と
頭を下げて応接室を後にした
津雲【ありがとうございました】と
こちらも頭を下げた後、
一息ついて応接室を後にした
今回の登場人物(週刊誌関係者)
多村 仁成…49歳
某週刊誌の編集局次長
困った時によく津雲を訪れている




