部長室にての会話(その6)
その日無事に仕事を終えて
みんなに挨拶をして帰ろうと
遊軍部を後にした津雲はその足で
部長室で向かいそして部長室の前に
到着して…ドアをコンコン…
鶴田【はい、どうぞ~】
その頃の部長室では…
立花【分かりました!
謹んでお受けさせて
いただきます】と
挨拶をしていた
鶴田【後を頼みますよ】
津雲【失礼します】とドアを開けて
一礼をして入っていく
鶴田【おお~津雲…確か来週からと
聞いてたんだが】とメガネを
かけたまま視線を合わせる
津雲【ご心配ご迷惑おかげしました!
本日から復帰しましたので
挨拶をと思ったのですが、
またの機会にしたほうが…】
立花【津雲さん、復帰するならするで
連絡下さいよ~それに見舞いも
ダメだというから
心配していたんですよ】と
少し安堵した様子を見せている
鶴田【いや、立花君に少し話が
あってな、その話が終わった
所なんだよ】
津雲【立花部長の誕生ですか】
鶴田【お前さんは相変わらずの
鋭さだな~そうだ来年度から
立花君にお願いする事に
したよ】
津雲【そうですか…これで少しは
ひと安心ですね】
鶴田【ただ、困ることもあるんだよ】
津雲【困ることと言いますと?…】
立花【私はまだ現場のデスクでいたい
気持ちがありまして、話として
は伺っていたのですが】
鶴田【とりあえず腰をかけてくれ、
ここに来る人は少ないから
話相手になってくれよ】と
ソファーの方に視線を向ける
津雲【話相手って家に帰れば、
色々グチこぼせる
じゃないですか】
鶴田【仕事のグチはカミさん
嫌うんだよ】
津雲【そう言えばそうでしたね、
それではお言葉に甘えまして】
と硬めのソファーに腰を掛ける
鶴田【はいよ】と缶コーヒーを渡す
津雲【ありがとうございます】
立花【ありがとうございます】と
それぞれ受け取る
鶴田【今度はマックスコーヒー
いただいてな~】
津雲【なかなか甘いコーヒーをでも
ありがたく】と缶をプシュと
開けて一口飲む
立花【甘いのですか?】
津雲【子供でも飲めるコーヒーだよ】
鶴田【しかし、体調はどうだ】
津雲【おかげ様で何とか、ですが
しばらくは通院とデスクワーク
を中心にせざるを得ない事に
なりそうです】
鶴田【そうか…現場復帰はストップが
かかったか】と腕を組んでいる
津雲【まあ、こればかりは
仕方ありませんから】と
窓越しの夕日を見つめていた
立花【本当に気をつけて下さいね!
ただでさえ知らぬ間に
いなくなって取材して苦情を
受けるのは私なんですから】と
少し語気を強めて話している
津雲【何の事だ…】と
とぼけるフリをしている
鶴田【ハハ…大体津雲の事で苦情を
言う奴は言う方にやましい点が
ある証拠だよ、それに津雲は
その時点で確証を
つかんでいるよ、
特に権力や有力者なら
尚更な…】と得意げに語る
津雲【そんな事はありませんよ】
立花【まぁ、それが津雲さんらしさと
いえばそれまで
なんですけどね】と少し呆れた
感じの表情をして話している
鶴田【それに会社自体が
変革期の様相でな…】
津雲【といいますと?…】
鶴田【来年度から社長が会長に
増山副社長が副会長だそうだ、
増山副社長もお前さんと同じで
入院して最近の会議も
欠席がちでな】
津雲【そんなに悪いのですか?】
立花【知らなかった…普段そんな
素振りを全く見せて
いませんでしたから】と
驚いている
鶴田【本人は大した事ないと
話しているんだけど、
このままでは社長職は
厳しいだろうと自身で
判断して辞退してな、
それで檜山専務が社長に
昇格する事になったんだよ】
津雲【そうでしたか…初の女性社長
誕生ですね】
鶴田【それで後任の専務は
俺が昇格する事になった】
津雲【ついに幹部への
出世おめでとうございます】
立花【おめでとうございます】と
2人共に鶴田に軽く
頭を下げている
鶴田【あまり嬉しくはないがな】と
言いながらも照れていた
津雲【社長への道が開かれた
じゃないですか】
鶴田【皮肉か…それだけ責任
重いんだぞ~】
津雲【それで後任の部長を
立花に推挙したわけですね】
鶴田【ああ、現場経験豊富な
実力の女性社長が誕生するから
には、その流れを継続させよう
と思ってな】
津雲【それなら良かったです】
鶴田【お前さんの推薦もあったしな】
立花【そうなんですか?】
津雲【一応記者としては先輩だからな
入院する前に尋ねた時に
新しい部長にどうだろうかと
話していたんだよ】
立花【津雲さん、色々観察していたん
ですね】と感心している
津雲【それが仕事だからな~
人間観察は必須だよ】
鶴田【しっかり頑張ってくれよ~
立花部長】
立花【はい!頑張ります】と
スクッと立ち上がり
気合を入れている
津雲【リラックスリラックス】と
座るように合図する
鶴田【そう言えばお前さんの
コラムは】
津雲【とりあえずは休載する事な
免れましたよ】
鶴田【そうか…助かったよ小鳥遊先生
の小説と共に評判だからな】
津雲【前から思うのですけど、
ウチの購読者って
奇特な集まりですね~】
鶴田【そんな奇特な人の心を
つかんでいる記事を書いている
人間が何を言うか】と
ぼやいている
津雲【忘れてましたが、デスクの後任
は決めているのですか?】
立花【そう言えば】
鶴田【そこが思案としどころ
なんだよ】
鶴田【しばらくは立花君に
兼任してもらおうと思ってね】
立花【部長とデスクとですか?】
津雲【なかなか負担のかかる事を】
鶴田【一応副部長に石川さんと
乾君に話を通して
了承を得ているよ】
津雲【それを早く話して下さいよ…】
立花【そうですよ~】
津雲【なんでしたら共同部長という
形にしてみたら
いかがでしょう】
鶴田【お前さんはたまに突拍子も
ないことを思いつくな~】
津雲【すぐではなくても、一地方新聞
の新たな挑戦で良いと
思いますけどね】
鶴田【新たな挑戦か…とりあえず上に
話をしてみるよ】
鶴田【もうこんな時間か…】と
腕時計を見る
鶴田【くれぐれも健康には
気を付けようや】
津雲【ありがとうございます、
それでは失礼します】
立花【失礼します】
そう言って立ちあがり一礼をして
部長室を後にした…