部長室にての会話
季節は瞬く間に過ぎていき、
年度末の3月が経過したある日
津雲は部長である鶴田から呼び出された…
部長室の前にて…ドアをコンコン…
鶴田「はい、どうぞ~」
津雲「失礼します」
鶴田「バタバタしているところ
すまんな、急に呼び出したり
して」
津雲「いえいえ部長も忙しいそう
何よりで」
鶴田「今年は色々人事異動が
多そうで大変だよ!」
津雲「いくつかの支所を統合する話は
伺ってますけどね…
しかし随分お疲れなんですね」
鶴田「支所の統合は前から決まって
いたからな、それに嘱託の人も
多かったし皆定年による
満了だよ」
津雲「確か70歳まででしたね~
世間から見れば賛否両論
ありそうですが」
鶴田「販売店の人にも色々苦労は
かけているけどな」
津雲「ところで私を呼び出したと
いう事は」
鶴田「結論からいうとお前さんに
論説委員をやってもらいたいと
考えているそうだ!
だが、ただでさえ遊軍と
資料管理の二つを抜けさせるの
はかなり痛いのが実情だ…
コラムも終わらせなくては
ならんからな!売上を考えると
踏ん切りがつかない、そこで、
最終判断を委ねるとするよ!」
津雲「現時点ではお断りせざるを
得ませんね…
支所の統合で人手が
余るのでしたら納得
出来ましたが、
どうやら嘱託職員の
人数だけですから」
鶴田「やはり…お前さんなら
断ると思っていたよ」
津雲「それならば論説委員は
どうされるのですか?」
鶴田「論説委員は帆足さんに
お願いする事になった」
津雲「帆足さんてあのラジオ局の
報道部にいた人ですよね」
鶴田「確かに、だが定年した後は
新千里新聞の論説委員を
していたんだがな、状態が状態
だからな~引退しようと考えて
いたらしい!そこに渡りに船と
いうわけよ、それにお前さんが
論説委員になるのは
大反対だとさ
ただ、毎回というのは
大変だろうから副社長や
専務にも兼任してもらう事に
決まったよ」
津雲「事後報告でしたか…」
鶴田「その前に、今度の人事で
上層部が外部招聘を
検討したそうだが」
津雲「ほう~そんなお金があるなら
取材費を増やして
くれませんかね…」と
少し苦笑いで
鶴田「結局、現状維持だそうだ」
津雲「あらら…そういう所は
抜け目ありませんね」
鶴田「それはそうだろう
利益が増えている訳では
ないのだから」
津雲「それで部長も昇格し
幹部の仲間入りと
いうわけですか…」
鶴田「相変わらず皮肉がうまいな~
残念ながら俺は変化なしだ…
と言いたいんだが
常務兼任で部長もだそうだ」
津雲「部長としては留任でしたか…」
鶴田「増山専務が副社長に
専務には檜山常務が
それぞれ昇格するそうだ」
津雲「出世おめでとうございます」
鶴田「あまり嬉しくはないがな」
津雲「新しい部長の後任を決めてくれ
と社長の狙いもあるかも
知れませんね~」
鶴田「それを言われたら立場が
ないぞ~」と少し笑いながら
津雲「ただ、私の体力も正直限界に
近づいてますよ…
そこで一つお願いが
ありましてね」
鶴田「どうしたんだ」
津雲「誰か遊軍か資料管理に
一人回してもらえませんかね…」
と少し苦笑いで
鶴田「それは無理だ非常勤でない限り
な、でもお前さんが
そんな事言い出すということは
誰かお目当てがありそうだな…」
と腕を組みながら話していると
津雲「少し気になる人間が
いましてね」
鶴田「ほぅ~どんな人なんだ」
津雲「“山井裕典”といえば
分かるかと…」
鶴田「お前さん…何故に山井裕典を?」
津雲「確かに彼は経歴や色々問題は
あるかも知れませんが、
少なくとも真実を追い続けて
いる姿勢に嘘はないと
思いますよ」
鶴田「しかし、彼がこんな地方新聞社
の部署に来てくれるとは
思えんよ」
津雲「確かにそうですね、あれだけ
メディアに出てた人が
来てくれるとは思っては
いません!ですが今の彼は
フリーですからね、
収入もないわけですし、
彼なら過去の事件にあるものを
掘り出してくれるかも
知れません!」
鶴田「まぁお前さんの頼みなら
上も文句は言わないだろう
からな」
津雲「ダメ元ですけど
やるだけやってみますよ」
鶴田「分かった!」
津雲「それでは失礼します」
そう言って立ちあがり一礼をして
部長室を後にした
今回からの登場人物ーーーーーーーー
樋山 朱梨…61歳
東葉日報常務!今度の人事で専務に昇格
帆足 由実…63歳
元ラジオ局エフエムベイの編成局に
勤務し、その後新千里新聞の論説委員を勤めた