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王太子 アーヴァイン・エルロ・サンテペスのその一

連載開始します!

どうぞどうぞよろしくお願いたします!

大人しくて、静かで、顔が整ってる。

こいつの第一印象は「人形のような奴」だった。


「…………ヴァレット・シルファリオ、です、よろしくおねがい、します」


「アーヴァインだ」


だが、それは大きな間違いであった。


「…………殿下は、将来、どうなりたい、です?」


「……は?」


何故なら、こいつは初対面でいきなりそんなことを聞いてくる、なかなか頭のおかしい奴だし。


「…………いいじゃん、ね、いいでしょ、ねえ、ねえ、ね?」


「しつこっ!?あぁっ、もうっ!わかったよ!!」


そして、答えるまで抱きついて離れない、非常識な奴だし。


「…………そっか、立派な夢、えらい」


「……なんなんだ、お前、調子狂う」


そして馬鹿みたいに笑顔が綺麗で、阿保みたいに素直な心根の奴で。


「…………じゃ、一緒にがんばろ、です」


「……は?」


なにより、人形みたいに大人しくしている奴では、全くなかった。


ーーーー


「…………おうさ、まー」


「ちょ!?お前っ!!マジかよっ!!」


俺が制止する間もなく、ヴァレットは父の執務室へと突入していく。

いくら、許可を取っているとはいえ、王の御前。

本当ならもっと畏まるべきだということは、子供の俺でもわかる。

なのにコイツときたら、一切の躊躇なく、気軽に入っていってしまった。


「どうした」


執務室の中では丁度、父がお茶していた。

まぁ、前もってヴァレットが休憩時間を聞いていたので当然なのだが。


「…………お茶請け、持ってきました、一緒に、食べましょ」


ヴァレットが紙袋を掲げ、そんなことを言う。


俺はそれを見て、このヴァレットと言う少年を、不覚にも少しだけ尊敬してしまった。


我が父、ガイノス王はとにかく怖い。

体がでかくて、筋肉も凄くて、顔が怖くて、そして何より覇者のオーラが尋常じゃない。

どんな相手であろうとも強制的に畏怖を抱かせる、密度の高い圧倒的存在感を常時発しているこの父相手に、ここまで自然体で居られる人間を俺は他に知らない。


「…………おせんべ、っていう東方のしょっぱいお菓子、です、うまい」


「ふむ」


父の側近ですら、父の前では常に緊張感を持って接している。

それは国の英雄であるフリューゲル騎士団長であってもだ。


「…………うま、僕にもお茶ください、ありがと、うま」


「物怖じせん子だな」


それがどうだ、まるで実家のリビングであるかのようなくつろぎっぷり。

王の御前だぞ!?

わかってるのか!?


「…………おーさま、美味し?」


「うむ、いける」


「…………ふひ」


おいおいおい、父に頭を撫でられてるだと!?

嘘だろ!?

俺でも撫でられたことないのだぞ!!


「…………おーさま」


「なんだ」


「…………アー君も撫でて」


アー君!?

アー君ってなんだ!?

もしかして俺のことか!!??

本当にこいつマジでわけわからんな!!

なんでいきなりアダ名呼びなんだ!?

ついさっき始めて会話したばっかりだよな!?


……って、今、こいつ父になんて言った!?


「い、っっいいいや、そんな、別に撫でるとかっ!!」


「……こい、アーヴァイン」


「………ぁ…、は、はい」


王が、父が、俺の頭を、なで…


「頑張っていると聞いた」


「…っ、はい」


「これからも、精進せよ」


「は、はいっ!!」


父の手は、凄く硬くて、ゴツゴツしていて、とんでもなくでかくて、そして力強かった。

俺は、その時、凄く、改めて「俺が次の王になるんだ」と思った。


「…………次は、また、僕を撫でていいよ」


「…うむ」


いや、お前なんでいつのまにか王の膝に座ってんの?

なんかもう、マジですげぇや、こいつ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 新連載、開幕 ヴァレット、いきなり大胆な行動、この頃はまだ付いていたのかな。
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