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第一話のその二


ここまでのあらすじ。

なんか突然、神罰で雌化した。

しかも王立学園在学中に婚約までしないといけないらしい。(子作りを前提に)


「…………以上、あらすじぃ」


いやまさか、そんなんなー。

マジでどうしようかなぁ。

我ながらやりたい放題したな、とはちょっと思ってたけどなー(後悔はしてない)。


「ぬぅあんて事だっ!!こんなにかわいいヴィーちゃんを外に出すことなんて出来ないっ!ぅあぁっ、僕は、僕はッ、どうすればいいんどぅぁ!僕はどうすればいいんだッ!いっそ近隣の若い衆を全て殺すべきか……」


この目の下にクマがびっしりとついていて、顔色が悪く非常に不健康そうな線の細い男は、我が兄トルフェイだ。

大変に病弱そうな見た目だが実際のところ、悪魔的に強い。

あと、こんな見た目だが肉体は頑強にして健康そのものだ。

彼は本当に強くて、成龍くらいなら単独で瞬殺できる位には強い。おそらくウチの商会では、親父に次ぐ強さである。人は見かけによらないを地でいく男だ。


「…………おちつけ、お兄」


ウチの家系は地属性魔法に長けているので、異常興奮するとナチュラルに地震が起きる。

マジでやめて欲しい。


「でも確かに兄さんをこのまま外に出すわけにはいかないよ。だって本当に愛らしいもの。男の時ですらあんなに可憐であった兄さんが、こんなにも麗しい女性になった以上、やっぱり近隣住民の男どもは皆殺そうよ。だって、兄さんと婚約する可能性があるんでしょ?このKAWAII兄と?論理的に考えてありえないよ。やっぱ殺そう?」


野生的でワイルドなイケメンに高身長高筋肉を兼ね備えた恵体な少年は、我が弟イブリースだ。

少年とは言ったが、それは実年齢的な意味であり、その見た目年齢はどう見たって二十代前半である。当然だが僕よりはるかに背が高い。僕とお兄は細身ではあるが、イブリースは親父似の骨格である。マッシブ系イケメンって感じだ。


「…………おちつこ、一旦、おちつこ?」


この弟も相当に強い。まだトルフェイお兄ほど隔絶した強さはないが、多分現時点でカインスより強い。僕より三歳下なのに、末恐ろしや。


「ぐわあああああああっ!唯一のエレナ似のヴァレットが嫁として貰われるなんて、ワシの脳が破壊される!受け入れられない!絶対に嫁にはやらんっ!ぐわあぁあぁ!でも四肢欠損と失明とか可哀想すぎるし、もうワシどうしたらいいのぉぉぉぉおおおおおおお!!」


この海賊に山賊を足して、獄卒の鬼を掛け合わせたような男が我が父オウガである。世界に名を轟かすシルファリオ商会のドンであり、すべての商談を腕力で叩きのめしてきたと言わしめる猛者中の猛者である。ちなみにエレナと言うのは今は亡き僕の母だ。


「…………ダディ、ステイ、ダディ、ハウス」


僕も突然トランスセクシャルしてそれなりに動揺していたのだが、そんな僕よりもはるかに狼狽えているこいつらをのんびりと眺めていたら、なんだかんだ落ち着いた。


「しかしヴィーちゃんっ!お兄ちゃんは心配で心配で心配で心配でッ!」


「そうそうだよ!ヴァレット兄さんに何かあったらと思うと、僕はもういてもたってもいられなくて、最寄りの男性を大虐殺してしまいそうだよ!」


「そうだそうだ、パパはとにかくお前が可愛くて仕方がないんじゃ!誰にも渡さないんじゃあああああああああっ!!」


「…………お前ら、うるせぇ」


その後、馬鹿共を鎮めるのに1時間ほど要した。


ーーーー


そして落ち着いた頃。


「とりあえず、めぼしい男子がいなかった場合、ディアと婚約しなさい」


だいぶ落ち着いたダディが、そう締めた。嫌そうな顔で。


「まあ、ディアなら、しかたな、ぐぎぃぃ」


仕方なし感全開で、お兄が同意する。嫌そうな顔で。


「ぐ、ディアさん、なら、仕方なななななななな」


血の涙を流しながら、イブ君が認める。嫌そうな顔で。


そして…


「自分は、ヴァレット様が良いのであれば」


…そして、当のディアさんこと、ディア・ボロス君(18歳)がそう答えた。

彼はウチの商会で10番目位に強い若手一番のホープだ。(お兄は規格外なので除く)

現時点でも十分強いのに、まだまだ伸び代があるらしく、その上礼儀正しく真面目で、ウチの商会への忠義も厚い。

つまり、我が商会きっての超優良物件なのだ。(お兄はちょっとヤベェ奴なので優良とは言い難い)


「…………えっと、ディアさん、無理してない?ヤなら、断って良いよ?」


せっかくの優良物件だ。何もこんな元男のキープ君に成り下がる必要はあるまい。

嫌々なら、かわいそうだ。


「いえ、自分は、イヤではないです」


「…………ふーん」


いつだって、はっきり物事を言うディアさん。

彼との付き合いは、実の所浅くない。


彼は、ウチの商会が運営する孤児院育ちの元戦災孤児だ。

ウチの商会の孤児院は、しっかりとした教育カリキュラムがあって、そこでの成長と適正に応じて商会の仕事を斡旋していく。

ちなみに、孤児院でかかった養育費はしっかりと、ここでの仕事で回収する仕組みだ。

結構アコギだが、請求する養育費自体はだいぶ格安に設定されているし、どんな馬鹿でも真面目にやってさえいれば見捨てないので、そんなに悪い組織ではない。


そんな中、彼は幼少期から既に、幹部候補生として抜擢されたエリートである。

なので、経営者一族の僕とは、年が近いこともあって幼少期からの交流がある。

勉強とかも結構一緒にやったし、一緒に遊びもした。要するに、彼もまた幼馴染だ。


そんな彼なので、それなりに彼のことは理解している。


「…………ふーん、そっか」


彼はどうやら、満更ではないようなのだ。

これは意外である。


「…………ねぇ、多分、僕、ディアさんは選ばない、と思うよ?」


「それで構いません」


結構最低な発言をする僕を見て、彼は曇りなくそう言ってのけた。

なんでこの男は、そんなに覚悟決めてんのだろう。


「…………じゃあ、お言葉に甘えて、キープ君を、お願いしちゃおっかな、ゴメンね?」


「いえ、光栄です」


こうして僕は、割と最低なムーブで最低保証を手に入れたのだった。


ちなみにマイファミリー共は、自分で言い出した事なのにめちゃくちゃディアさんにガンをつけて絡みまくっていた。

そしてディアさんはそれを完全スルーしていた。強い。


ーーーー


「うひょおおおおおお!ヴァレット様、可愛すぎてでしゅううううううう!」


さて、この娘はヒロインである。


「…………エミリ、うっさ」


そう、「わたプリ」のヒロイン、エミリ嬢である。


「だってあさってしあさって!よもやただでさえキャワワなヴァレット様が、このように女性化してギャラクティカコズミックKawaiiになってしまうとは、このエミリ、思考回路がショート寸前で黙ってなどいられようかっ、いや、いられん!!」


本編のエミリは幼少期に戦災で両親を亡くし、その後、あまり環境の良くない孤児院で虐げられながらも逞しく育ち、そして王立学園の入学一年前くらいに伯爵家に引き取られるという経緯を辿る。なぜ伯爵家に引き取られたかというと、実はエミリの母は伯爵の末の娘で、彼女は冒険者であったエミリの父と駆け落ちをしていた。つまりエミリは伯爵の孫なのである。そして伯爵はずっと娘の行方を気にしており、その果てにエミリを見つけたのだ。


「もうヴァレット様しゅきしゅきだいしゅきなエミリは、ヴァレット様をどう着飾ってやろうかぐへへとしか、考えられない!頭の中がヴァレット様でいっぱい!ああ!もう!!エミリをこんなに好きにさせて、ヴァレット様ったら酷い、でもしゅき!!」


僕がエミリを探し当てた時には、もう既にエミリは戦災孤児だった。だけど、そこから直ぐに引き取って、両親をなくした心の傷に寄り添ってやって、そして僕の専属の侍女にした。

そしたら、何故かこうなった。


本編のエミリは、芯がしっかりしていて、優しくて、でもどこか影がある、みたいなキャラだったのだが……


「エミリはねぇ、ヴァレット様が男でも女でもお慕い申し上げておりますよ!むしろ女の子の方がお風呂にまでついていけて、お得まであります。あと、トイレにもついていけますしね。ご排泄も是非エミリにお任せくださいまし」


「…………トイレにはついて行かないだろ、嘘つくな」


「いやいやそんな、ヤベー高貴な家だとマジであるらしいです。シルファリオ家も今日からヤベー家です?」


「…………違う、です」


「ちぇっ、エミリざーんねん」


幼少期の辛い所を取っ払って甘やかしたエミリは、影など皆無の、「僕キチガイ」というでっかい芯がぶっ刺さった、やべぇ女になってしまった。

あと、僕が戦闘能力皆無なせいか、エミリは戦闘特化型に成長してしまった。

本編ではバッファー兼ヒーラーだったのになぁ。


正直、一番人格改変してしまっている存在である。

我ながら「こりゃ神罰降るよね」という感じだ。(後悔はない)


「…………エミリ、王城にいく、支度して」


「え、王城いくんです?」


「…………そ、一応、おーさまに、報告しなきゃ」


ウチに説明に来た神官が言っていたが、どうやら僕に下された神罰兼祝福は最高神様からのものらしい。

そして最高神様からの祝福は、初代国王以来、一度も無い。

ので、どう考えても直接説明する必要があるのだ。


「…………ほんで、あした入学式だから、王城に泊まってく」


「うえっ、入学式いくんです!?ちょっとは様子見した方がよいのでは??」


まぁ、確かに性別が変わったのだから、準備を兼ねて少し休んでもいいのだろう。

しかし、性転換までして逆らった運命の結果を、この目で確かめない訳にはいかぬのだ。


「…………僕可愛いから、ぶっつけでもなんとかならぁ。あとエミリも学園に、一緒いくから、なんとかなる、でしょ?」


「ふわあああ!そうです!エミリにお任せですぅ!エミリさえいれば万事解決オールオッケー!!それに、そうです!ヴァレット様は超絶可愛いから準備せずとも、どうとでもなりますね!!」


それと。

僕、実は前世からずっと皆勤賞なんだよね。

休むとかないのだ。


「…………あとエミリ」


「です?」


「…………今日から、ヴァレッタ、だよ?」


「うっわ、くっそ可愛いなこいつ、犯してぇ」


おいおい。

エミリ、素がでとるぞ。



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― 新着の感想 ―
[一言] 身内の人達戦闘力高過ぎる…… なおその「身内」の内にヒロインちゃん入ってる模様 ……うん流石にこれは女神様激おこぷんぷん丸でも仕方ないわ モノローグが「ヴァレット様Kawaiiヤッター!しゅ…
[一言] 候補四人との過去で、割りと破天荒だったヴァレッㇳ改めヴァレッタさんが抑え役に徹する程に濃い身内の皆様が登場し、本編開幕。 唯一の女の子エミリさん、色々ぶっ飛んでいて心配になりますね。
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