宵の晩紛れ紛れてクサノオウ
6月
井草side 雨の匂いに黄昏ながら僕は真っ暗な田舎道でタバコに火をつける
ゲコゲコうるさいカエルに雨上がり特有の匂いじめっとした肌の感じ あー梅雨が来たなと思いながら、吸い始めた頃は不味くてむせたタバコを ゆっくりと吸う
「ムカつくくらい綺麗な星空だ」
「ああ本当に綺麗だまだ俺に星空を綺麗だと思う感覚があるなんて」
「あぁ壊したい」
そう壊したいのだ、僕はたまに無性に綺麗なモノをみると壊したくなる
壊したくて壊したくて堪らなくなるのだ 僕にだって綺麗なものを綺麗と思う感情はあるし、
綺麗なものを凄いとも思う尊いとすら思う
しかし、綺麗だからこそ、凄いからこそそして尊いと思うからこそ壊したくなるのだ
なぜかはわからない いつからかもわからない、強いて言うのならば物心ついた頃には
もう壊していた そう壊したいというわけだはなく、壊していたのだ そして壊したのは、
僕の初恋の子が書いた綺麗な絵だった 無性に壊したくなり、
4歳の僕はその絵を黒いクレヨンでグチャグチャにしていた
その結果周りの大人は僕にこう聞いてくるのだ
「なんでそんなことしたの?」
その時のことは本当によく覚えてる鮮明に僕に焼きついている
「なんでそんなことしたの?」 そんなことは僕にもわからない 素敵なものだと思った
次の瞬間に気づいたらやっていた そうしなければならないと思うほどにそうしていたのだ
4歳の僕はこう答えた 「やりたいからやった」 周囲の大人は苛烈に怒った、
しかし僕には関係なかった 初恋の女の子は泣いていたなぜ泣いていたのかはわからないが
泣いていた
その時僕は綺麗だと思ってしまった どうしようもなく綺麗だと
そんな事が僕の人生では多くあった 多くの綺麗なものを壊してきた しかしあの女の子の笑顔ほど
綺麗だと思ったことはない あー考えている内にタバコを吸い終わってしまった
もう一本に火をつけようとするとふと話しかけられた
「はいダメー、タバコは一本だけほら少しは壊せたでしょ私の綺麗なものを」
「まだ壊し切れてない」
「それはダメ」
「ゆっくり壊していってね、約束なんだから」
「あーどうして君は」
「それも禁止」
「はいはい」
「はいは一回だよ」
ふと横のやつの顔を見る なんだかキョトンとしてこちらを見ている
「どーしたの?」
「いや綺麗だなって」
「ならぼくのこと壊す?」
「壊せるならもう壊しているだろ」
「そうだねー君にはぼくは壊せないね」
そういってケラケラ笑うやつの顔はやはり綺麗だった
「さてさて、もうそろそろ帰りますか」
「あぁそうだな、その荷物持つよ」
やつはスーパーで買い物をしてきたのか、大きめのビニールを持っていた
そのビニールを取ろうとする、しかし
「いいよ君、受け取れないでしょ、その気持ちだけで充分だよ」
「そうか・・・」
僕たちは歩き出した カエルのなく田舎道を・・・
「ただいまっと」
パチン電気をやつがつける 汚い部屋だ、
本当に汚い部屋汚れきっている これが僕とやつの部屋だとてつもなく汚い
「はぁー汚い部屋だ、君片付けてよ」
「誰が汚しているんだよ」
「えーぼく?」
「お前だよ」
「ほらここに落ちてるのはなんだよ」
「下着だよ拾ってー」
「無理だ」
「あはは、だよねー」
「はいはい洗濯物まとめますか」
「はいは一回じゃなかったのか?」
「はーーーい、さて君ぼくに料理用意してよ」
返事はせずに置いてある買い物袋から、ゴソゴソと必要な物をあさりだす その中には特定の場合に使うゴムがあった、僕が使うことは一生ないが・・・
「これはなんだ?」
「えー何その反応つまらなーい」 そういって笑う彼女はケラケラと笑っていたやはり綺麗だ
「ぼくは使うかもしれないでしょ?」
「。。。」
「にらまないにらまない大丈夫だよーほら安心して」
彼女は僕に近づいてくる、僕はとっさに後ろに下がる
「まだダメか」
彼女は悲しげに笑う ん?彼女?やつはやつだろ
「もういいからご飯作ってよ」 僕はコンロに火をつけた
凛ちゃんside
彼は黄昏ながら真っ暗な田舎道でタバコに火をつけた
彼の目線の中にぼくはいないそれが悲しいとはもう思えないけれどもただ悔しい
彼はタバコを吸う、満天の星空のしたタバコを吸う
彼は決してぼくの気持ちは汲んでくれないのにぼくは彼といる
彼は多分少し壊れている、ぼくも多分壊れているどこがとも なにがとも言えないが壊れている、
壊れなければ彼とは一緒にいれないから 彼が何かを呟いたが聞こえなかったが星空を見て綺麗だ、壊したいとかだろう 相変わらず彼は変わらないな、ぼくは変わってしまったと思うが
彼が何かを壊したいと思うのはもはやしょうがないことでありそれは彼が彼である限り変わらないことだと思う。そしてぼくはそんな彼でもいいと思うというよりそうじゃないとぼくが困る
彼がタバコを吸い終わりもう一本吸おうとした時にぼくはそれを止める、
止めるためにぼくは彼に言葉を投げる
「はいダメー、タバコは一本だけほら少しは壊せたでしょ私の綺麗なものを」
そう彼は壊したいのだ綺麗なものを、それは今やぼくの綺麗な物でも壊したがる
「まだ壊し切れてない」
はーいダメだよ壊し切っちゃダメなんだよゆっくりと緩やかに壊れなくちゃダメ
「それはダメ」
そうダメなんだ 「ゆっくり壊していってね、約束なんだから」
そう約束、彼はそれを約束というけれどそれは確かな呪い、ぼくが彼にかけた呪い
「あーどうして君は」 彼はぼくに聞いてくるがそれ以上は言わせない、決して言わせない
「それも禁止」
「はいはい」
「はいは一回だよ」
ぼくと彼はこのまま緩やかに壊れていく少しづつだけど確実に壊れていくん、
ぼく好みだな今はようやく掴んだ今、だけれどぼくは満足できない 満足できないほど乾いている
ぼくは満足するために色々これからしていくつもり
まだまだ足りない、足りないんだよ〇〇くん 彼が私を見てくる、
いや見つめてくるそれもマジマジとなんで見てくるんだろう どーせまた綺麗だとか思っているんだろう
「どーしたの?」
とりあえず聞いてみた
「いや綺麗だなって」 ほらやっぱり、思っていた
「ならぼくのこと壊す?」
そう聞くと彼はとても複雑な貌をした そんな泣きそうで嬉しそうな貌しちゃってさ本当に面白いよね
「壊せるならもう壊しているだろ」
あ、逃げた、最近彼はぼくとは遊んでくれないすぐに逃げる、
もっと遊んでほしいのにな 「そうだねー君にはぼくは壊せないね」
そういってぼくは彼が綺麗だといってくれる貌で笑う あ、少し赤くなった本当に可愛いなー
もうしかしここは一旦これまでにしよう ぼくには今日秘密兵器があるのだから
「さてさて、もうそろそろ帰りますか」 そう提案する、
秘密兵器はこのぼくの持つ袋の中にあるのだイェーイ
「あぁそうだな、その荷物持つよ」
あらー優しい、けれども彼は持てないだろうに、
彼は残酷だよねー それを無自覚にしているあたり、可愛いなー
「いいよ君、受け取れないでしょ、その気持ちだけで充分だよ」
「そうか・・・」
そう返すと彼はまた泣きそうな表情になったこれはいけない、ということでぼくは歩き出した
「ただいまっと」 ぼくたちは帰ってきた、ぼくたちの住む家に 落ち着く落ち着くなー、
けどやっぱり気になるのはこの惨状 あー汚いな
「はぁー汚い部屋だ、君片付けてよ」
出来もしないことをぼくは彼に頼む
「誰が汚しているんだよ」
「えーぼく?」
「お前だよ」
「ほらここに落ちてるのはなんだよ」
そういって彼はぼくの今朝脱いだ下着を指差していた
「下着だよ拾ってー」 どうせ拾えやしない彼はさわれない
「無理だ」
「あはは、だよねー」 あー少し悲しいなそう思いながらもぼくは動き出す
「はいはい洗濯物まとめますか」
「はいは一回じゃなかったのか?」
「はーーーい、さて君ぼくに料理用意してよ」
彼は料理をするために今日買ったものを買い物袋から取り出そうとゴソゴソと漁る作戦どうり、
そして彼は固まった、そして耳が赤くなる本当に可愛いなー、さて彼はなんていうのだろうか?
「これはなんだ?」
あーつまんない予想どうりの反応だ
「えー何その反応つまらなーい」
ケラケラぼくは笑う彼が綺麗だろいってくれる貌で
「ぼくは使うかもしれないでしょ?」
彼に投げかける可愛い彼はどんな表情をするのだろうか
「。。。」
あぁたまらないその表情がたまらない、睨みつつも下唇をかむその表情がたまらない
「にらまないにらまない大丈夫だよーほら安心して」
彼を安心させるように言葉を投げる、あー可愛い抱きしめたい、
包み込みたい可愛いな本当に 彼に近づいていくが
「まだダメか」
彼はぼくから距離をとる
あ、一気にぼくの熱が冷めていく、あーダメだまだダメだった
彼は悲しそうに、悔しそうに笑うその表情はずるい ぼくは逃げ道を作ってあげるいつものことだ
「もういいからご飯作ってよ」
そういつものことだ彼はコンロに火をつける人工的な安定した火が鍋を温める
7月
井草side
ピューとなるヤカンの音 微睡から覚める グツグツ沸騰してる
そんなことを脳裏に浮かべながら ぼくだけの気持ちのいい世界から目覚める 目覚めて
台所に向かうとそこには奴がいた 料理のできないヤツが台所でお湯を沸かしている
「あ、起きたー?お腹すいちゃってさ」 ヤツは朝から元気だ
「あー綺麗だ」
寝ぼけた頭で回らぬ頭で呟く
「なら壊す?」
こいつはまた何を言っているんだか、気怠げに返す
「いや」
「お腹すいたよー、君ご飯作って」
「あー待ってて」
「楽しみー」
ヤツは元気だ、朝から元気だ 正直うざい が嫌なわけじゃない 冷蔵庫を開ける 何もない 何もない
「あー冷蔵庫の中何もないんだが」
「あーないみたいね」
「買い物担当さんどーゆーこと?」
「お金がなくなりました、イェイ」
「は?」
「だからお金がなくなったんだって」
「まじか」
「まじだよー、まぁお互い働いてないからね」
何も言い返せない 俺は働いてない、今まではヤツに養ってもらっていた
しかし奴が働いてないというのは初耳だ 確かにいつも一緒にいるから働いてないのは
当たり前かもしれないが
「だから、ぼくは働こうと思います」
「そうか、ごめんな」 「いいよー君働けないでしょ」
「そうだな」
「それともいっそ二人で餓死する?」
「それもありかもなー」
「君はジョークが通じないな」
「お前とならありかなって」
僕は本気でそう思う僕が生きているのはやつのおかげだ
だからこそ奴がそう選ぶのならばそうしようと思う ヤツはケラケラ笑う お腹を抱えて、
心底楽しそうに笑う 綺麗だ、彼女は本当に綺麗だ
「でもまぁ餓死は苦しそうだからやだなー、まぁお金はなんとかするよ」
「今日はカップ麺でも食べるか」
「そうだねー」
結局その日はカップ麺を食べて、スマホをみて1日を過ごす
次の日になるとヤツはいなくなっていた
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なぜかわからないが頭がぼーっとする
あれから僕は水しか飲んでいない 水だけでもなんとかなるもんだな でももう一週間ヤツが居なくなって一週間 ほとんど寝ていたがもう ミシリ、ギシリ何かが軋む バタン扉が開いた
一週間ぶりに会う、ヤツ やはりとてつもなく綺麗だ、
逆光のせいで表情は見れないがとてつもなく綺麗だと思う 彼女は綺麗だ ヤツはいう
「ジャーンこれなんだ」
「あ”()」
うまく声が出ない そりゃ一週間も声を出さなければ声が出ない とりあえず水を飲む味がしない
ヤツは嬉しそうにそしてドッキリが成功したみたいに嬉しそうにいう
「ジャーン19万どう?すごい?すごい?」
「そんな大金どうしたんだよ」
「えへ、実はねー売っちゃった」
「何を?」
「大事なもの、僕は傷モノになちゃった、でもこれで君とゆっくりと壊れていけるね」
ヤツはケラケラ笑う 俺はぐわっと自分の中で何かが膨らむのを感じる、想像してしまう、
嫌な想像、そして膨らむ増悪 そして俺から出たのは
「ふざけるな、ふざけるなよ、お前を壊せるのは、壊していいのは俺だけだろ」
声が出たかどうかはわからないしかし、叫んでしまった。 体力がないのに叫んだせいか、
まぶたが落ちる
「hahahははははh、ひひひひ、君が僕のことそんなに心配してくれるんだ、でも君が思ってる稼ぎ方ではないよ、それにしてもたまんない、たまんないねーとりあえず重湯でも作りますか、それにしてもたまんないねー」
まだ何かを言っているが限界だ ヤツは台所で何かを言っているが もう。。
おい鍋がふきこぼれて
凛ちゃんside
朝起きる、横を見ると可愛い君の寝顔がある 彼が私より早く起きることはほぼない、
彼を見ると少しうなされているようだが、それもまた可愛い 彼の寝顔はとてつもなく可愛いのだ、
可愛いは正義 さてと、ぼくは寝床から出て、コーヒーを入れるためにお湯を沸かす。
お湯が沸きヤカンがピューとなる、
どうやら彼が起きたみたいだ もう少し可愛い寝顔を見ていたかったなー
「あ、起きたー?お腹すいちゃってさ」
彼が台所に向かってくる、寝癖が跳ねていて可愛い
「あー綺麗だ」
あー寝ぼけてそんなことを言っちゃう彼は可愛い
「なら壊す?」
ぼくは、とぼけて彼に返す
「いや」
おや、一気に眠気が覚めたみたいだ、その切り替えは正直羨ましい
「お腹すいたよー、君ご飯作って」
ぼくはねだるように彼に言う
「あー待ってて」
彼は当たり前のようにぼくを受け入れてくれる
「楽しみー」
素直な感想を零すぼく、はぁ彼が手に入ればいいのになー
「あー冷蔵庫の中何もないんだが」
そうだったぁー忘れていたが冷蔵庫の中には何もない
「あーないみたいね」
「買い物担当さんどーゆーこと?」
この家では買い出しなどお金の持ち出しがあることは全てぼくが担当している
なぜなら彼にお金を渡すと全て使ってしまうからだそれにこの前まであったお金もぼくが昔ためた
お金だから、当然といえば当然なんだがねそしてその貯蓄もついに
「お金がなくなりました、イェイ」
「は?」
「だからお金がなくなったんだって」
「まじか」
「まじだよー、まぁお互い働いてないからね」
そう今ぼくらは働いていない、正確には彼は働けなくて、ぼくは働いていないそして
彼はきっとぼくが働くと言ったらきっと謝る、その感じがまた保護欲をそそる、
そんな彼を想像しながらぼくは彼に投げかける
「だから、ぼくは働こうと思います」
「そうか、ごめんな」 ほら、謝まった、謝ったその表情がまたそそる、その表情がいい、想像の10倍も100倍もいい、たまらない、たまらない、表情が緩むその表情を崩さないようにしなきゃ 「いいよー君働けないでしょ」
表情崩さないように言えたかな、どうかな、わかんないやでももうダメだこの表情
「そうだな」
「それともいっそ二人で餓死する?」
「それもありかもなー」
あーたまらない、たまらないよその提案、もう最高だよ最高すぎて、
最高すぎてた・ま・ら・ない、けれど返事をしなくては
「君はジョークが通じないな」
「お前とならありかなって」
もう最高だよー、たまらないよー、その表情、あぁ私のものにならないかな ここはごまかす意味も込めて笑おう、彼が綺麗と言っているこの貌で。。。
「でもまぁ餓死は苦しそうだからやだなー、まぁお金はなんとかするよ」
そうお金はなんとかなる、私はこう見えても稼げる女なのだ、彼を手に入れるために
私は一つ覚悟を決める
「今日はカップ麺でも食べるか」 彼は驚くかなー、どうなんだろうねー
「そうだねー」
さぁぼくはぼくで準備を始めようかな さてさてさーて、
彼はどんな表情を見せるんだろうか それから彼はスマホを見ていたが、
ぼくは彼に悟られないように、日常を過ごし、彼が寝てから家を後にした、
家を後にするときにぼくは彼の頬に口を近づけてつけようとするが寸前のところで止める
これはぼくがしたい方法じゃない、悲しいけれどこれはダメだ、
これはダメなんだ、これじゃダメだ、どうしようもなくこみあげてくる、
苦しい彼の寝顔はとてつもなく可愛くてとてつもなく綺麗でそしてそして
そして何よりも愛おしい この愛おしいものを守るために、
ぼくはぼく自身につけた約束を破る 何よりも今まで大切にしていたこの決まりを破る
自分の子どもを売るのだこれほど苦しく狂おしいことはないだろうその後
家には帰らずぼくはただひたすら自分の子どもを苦しんで産んだ作品を売った
少しでも高く、少しでも価値があるように。。。。。
そして一週間後家に帰るバタン 家の扉を勢いよく開ける
そこには彼が倒れていた
あーたまらないたまらないよ
狂おしいほどに求めた彼が弱っているたまらない
彼が私を見ている、そして彼が、彼が私を求めているたまらない たまらない
そして私は私の子どもの慣れの果てをできるだけ元気に彼に見せる
「ジャーンこれなんだ」
「あ”()」
そっか声も出ないかー、
そりゃこんだけ弱ってたらそうだよね
でもぼくの子どもを売ってまで作ったお金なのにその反応は頂けない
「ジャーン19万どう?すごい?すごい?」
ほら見てよもっと見てぼくの大事な大事な子どもの成れの果てを 君のために作ったんだよ、
ねーみてちゃんと見て
「そんな大金どうしたんだよ」 そりゃきになるよね
「えへ、実はねー売っちゃった」
「何を?」
「大事なもの、僕は傷モノになちゃった、でもこれで君とゆっくりと壊れていけるね」
もうぼくも大切なものをなくしちゃって壊れ始めてるしね
「ふざけるな、ふざけるなよ、お前を壊せるのは、壊していいのは俺だけだろ」
hahahahahhhahahahaah 怒りとともに、
愛おしさがこみ上げてくる、
その激動がぼくを焦がす 何を勘違いしてるんだ
君は、そんな君が思っていることなんてどうでもいいんだよどうでもいいんだ、
君はぼくをわかっていない、わかっていないでも愛おしい 君はぼくがいないとダメだもんね
笑っちゃうよ本当に
「hahahははははh、ひひひひ、君が僕のことそんなに心配してくれるんだ、でも君が思ってる稼ぎ方ではないよ、それにしてもたまんない、たまんないねーとりあえず重湯でも作りますか、それにしてもたまんないねー」
思わず愛おしい彼への愛おしさがたまらない
重湯を作るためにぼくは台所にたつ 重湯くらい作れるからなーぼくだって
水を入れて鍋を火にかける あーそれにしてもたまらないたまらないたまらない
彼が私がいなくちゃ生きられないこのシュチュエーションたまらないでも
彼がこのお金を勘違いしているのは頂けない頂けないよ ぼくの中で何かが溢れ始めた
8月
茹だるような暑さと吹き出てくる汗、
セミの泣き声で僕は目を覚ます 目を覚ますと、
カチカチとマウスを操作する音 目を開けると僕の視線の先にはヤツがいた
ヤツは仕事をしている、あの帰ってきた日からヤツは仕事をするようになった
ヤツの仕事は絵や写真などを売る仕事らしい らしいというのは怖くて情けなくて、
深くは聞けていないからだ 本当に情けない彼女に食わせてもらっているという
現状が情けなくて仕方ない 自分に対しての価値がひたすら下がっていく
僕は寝たふりを続ける 彼女の邪魔をしないように。。。
「ふふふ、可愛い寝顔」
「ん、ん」
どうやら僕は本当に眠ってしまったようだ 頬に指が刺さる感触がわかる
「寝てれば反応しないのか。。。なるほど」
ん?あ。触られている
あ、あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああ
ヤバイ触られた、触られた ダメだ離れなくてはしかし、
ろくにご飯を食べてないせいか離れられない
彼女まで壊れてしまう、
いやだ、ダメだ やだやだやだ僕を一人にしないで
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ぷつん
扇風機の心地よい風で目が覚める
あぁどうやら眠ってるふりをしている間に寝てしまったようだ ヤツは?
どうやら、仕事に疲れてねむっってしまったみたいだ
机で寝てしまっている
「全く世話の焼けるヤツだ」
と言いつつブランケットを奴にかけるが 心の中では
僕が世話をしてもらっているのに何が世話の焼ける奴だよ
自分の食い扶持も稼げないくせになど 自分を責めることで頭がいっぱいだ
とりあえず料理をしよう 料理に関わっている間は何も考えなくて済む
元々料理は好きだったが餓死寸前を経験して以来料理は僕にとって唯一の安らぎとなっていた
まずはメニューを考える
「あえとアドリブ:レシピを呟く」
そしてそのレシピをノートに書きそれに従って料理を作るできたものを
写真を撮り、レシピと一緒にsnsにあげる最近僕がやっているのはこれだけだ
いつも通り料理を流くり終わった僕はまた自己嫌悪に陥る
まだ大丈夫、まだ大丈夫、まだ大丈夫
そうやって自分を保つ
「これ美味しい」 ふとその言葉で僕は引き上げられる いつの間にか彼女が起きてきたようだ
「ああぁよかったな」
「よかったなってこれ君が作ったんでしょ」
「あぁ」
「最高だよこれ」
「それは〇〇って言うんだぜ」
「へぇいいねこれ好き」
本当に彼女はおいしそうに食べる なんだか胸に温かい何かが宿る
嬉しいなー 彼女に喜んでもらえるのは そうして僕は彼女のためにひたすら毎日料理を作った、
彼女の顔が綺麗に変わるその表情が見たくて
Snsの方も好評でだんだんと人気になってきた
そうして過ごしたある日 彼女がいつになく真剣な表情で語りかけてくる
その貌はいつになく綺麗で美しかった
「ねぇ君それはないんじゃない?」
「どうした急に?」
「君折れちゃったの?」
「だから何が?」
むすっとした表情で彼女は近づいてくる
そして僕は抱きしめられた そして彼女は呟いた
「抱きしめられてどう?幸せ?」
温かい温かいな幸せかも 幸せ?僕が幸せ 突然やってきた
違和感 蓋をした鍋が吹きこぼれるように 次々と溢れる火を止めなくちゃいけないが
もう間に合わない ヤツは何をした、
俺に触れた?
抱きしめた ダメだろそれはダメだ、ヤツにまで写ってしまう ダメだダメだ、
それは許せない 俺には我慢できない、そんなのは僕じゃない そして溢れてくる、
いろんな感情が ヤツの手を振り払い
叫ぶあああああああああああああああああああああああぁ
怒り、戸惑い、恐れ、惨めさetcいろんな感情をぶちまける
「僕に触れるなよ」
「あぁその貌だよ君の顔はそれだ、腑抜けに要はない」
「何言ってんだお前」
「ふふ、おかえり」
「変なヤツだな」
「それでもお帰りだよ」
「とりあえず飯作るから待ってろ」
そうして僕はご飯を作る 彼女が食べる、
僕はその綺麗な顔を綺麗と思いつつ壊したくなる いつもとちょっと違う
日常が過ぎていく そしてスマホがなった、dmがきたみたいだ 何かが変わりそうな通知音
Dmを見ながらタバコに火をつけるがライターのガスがないみたいで火花が散るだけだった。
Side凛
ぼくは朝、セミの泣き声の中、あぐらをかいてP Cをいじる
ぼくは今彼にご飯を食べさせるためにぼくの矜持を捨ててまで彼を食べさせる
ぼくの矜持、それはぼくの子どもを絶対に利用しないこと、
ぼくの子どもぼくの作品それを利用しないそれはある意味ぼくがぼくを守るために立てた誓い
それを捨ててまでぼくは彼を選んだ、
彼が彼であるためにぼくは選んだ
彼を… 仕事がひと段落してぼくは彼のもとに向かう
可愛い寝顔だなー、
これはぼくが選んだ寝顔、、、
「ふふふ、可愛い寝顔」
思わず呟いてしまった ぼくだけの寝顔、
ふぅー可愛い実に可愛い 気づいたらぼくは彼に触れていた、
触れてしまっていたまずい触れてしまった、
きっと可愛い寝顔が壊れてしまう しかし彼の寝顔は崩れない 寝顔は崩れない
「寝てれば反応しないのか。。。なるほど」
ふふふ可愛い、可愛いなー よーし元気が出たもう人仕事しようか ((ずるい、あなただけ))
んんん、寝てしまっていた見たい おやおやこれは、
ブランケット、でも誰が? 彼が?おやおや?
それは変だぞ実に変だ うーん嬉しいなー((嬉しい)) ん?
でも変だ何かが変だ おや、
机に料理が、彼はまだ台所 よしつまみ食いしちゃおう
「これ美味しい」
本当に美味しいだけど何かが違う、何かが。。。
「ああぁよかったな」
「よかったなってこれ君が作ったんでしょ」
「あぁ」
「最高だよこれ」
「それは〇〇って言うんだぜ」
「へぇいいねこれ好き」 確かにこれは美味しい美味しいいと思ったけど、優しすぎるんだこれは
彼は優しそうな顔?表情を浮かべる、え、だれ?
しかしそれも一瞬でまたいつもの彼に戻る 勘違いかな一瞬
彼はまたスマホで何かをしているいつもの彼だ それから彼はあたたかく優しい料理を作った、
日に日にだんだんと彼は優しくなっていく彼はぼくに依存していく あぁぁぼくに依存していく彼、
幸せだーあぁぁぁぁぁ幸せたまらなく幸せもうたまらないいいねーいいねー
彼はぼくなしでは生きられない最高だよー
でもでもでもでもでもそれはダメだ、ありえない、
優しい彼など腑抜けた彼など許せない でも
((幸せだー))
((いいじゃん幸せだよー))
そう幸せなのだ そしてついについについに、ぼくは我慢の限界だ ((ダメだよ今幸せだよ))
ダメだ無理だ許せない看過できない そしてぼくは我慢できないで言ってしまった
「ねぇ君それはないんじゃない?」
本当に本当にないありえないぼくはぼくは
「どうした急に?」
急に?急にじゃないだろ
「君折れちゃったの?」
折れるなんて許さないよ
「だから何が?」
何が?何が?だって ぼくはぼくは彼を抱きしめた
「抱きしめられてどう?幸せ?」
あーいいねいいねどんどんどん彼が戻っていく
あーいいねそうだそうだ彼はこうでなくては こうでなくてはいけないんだ
何かを壊したくてたまらないたまらない そんな彼でなくてはダメなんだ
「僕に触れるなよ」
あぁぁぁあいいいいよいいよこれこそが彼だ彼なんだ 帰ってきた
ぼくの彼が あーお帰りお帰りお帰りお帰り たまらないたまらない
「あぁその貌だよ君の顔はそれだ、腑抜けに要はない」
「何言ってんだお前」
「ふふ、おかえり」
「変なヤツだな」
「それでもお帰りだよ」
「とりあえず飯作るから待ってろ」
[なんでねーなんで] ぼくの日常が帰ってきたぼくの日常愛おししい日常 彼が台所でスマホを見ている まぁーいっか 『セミの泣き声が喧騒が日常の中で警告音のように鳴いている』 ぼくの日常愛おしい日常が帰ってきた
『なんで壊したの』
9月
井草side
夕闇の中僕はノートを書く
このノートはあの死にかけた日から綴ってる
毎日とはいかないが僕が最近やっている趣味だ
そのうち僕はこれを飯のたねにしたいと思っている
先月僕の師匠になる人から連絡をもらった、
師匠と言ってもこのノートに書いてあるレシピについて、
アドバイスをもらっているだけであり、実際にあったことはないし師匠と言っているのも
僕の一方的なものでしかない。
ノートにレシピを綴りつつ、ヤツをみる
ヤツは寝ている、僕のことを抱きしめたあたりからヤツは度々寝込むようになった、
寝込むというより、よく寝るようになったというべきか、
体調に問題はないのだがよく寝る
「もうこんな時間か、起きろ」
「ん。。。」
「起きろって」
なかなかヤツは起きないこういうとき奴に触れられないのは面倒だ あの日から俺はたびたび、
奴に触れるということについて考える あの日奴に抱きしめられたとき
僕の感情はぐちゃぐちゃになった しかし不思議とその後やつを拒絶することはなかった
僕奴に少しづつ浸食されてきているのかも知れない しかしやつを起こさなければ、
どーしたものか。。。
まぁ料理をしていれば起きるだろう 今日は何を作ろうか 食卓に今日の作品を並べる
「ん、、ご飯?」
「あぁご飯だ」
「ご飯、ご飯やったね、、、、」
「あぁそんなに喜ぶことか?いつも通りだろ」
「えぇそんなこと言わないでよープンプンだよ」
そうあの日からヤツはよく寝る以外にたまに子供ぽくなる いつからかはわからないが。。。
「いただきます」
「おぅ」
「おいしいね」
「よかった」
「本当に美味しい」
「おうオムライス好きだよな」
「君が作ってるからだよ」
「そうか」
なんか急に大人ぽくなったな先までは寝ぼけてたのか 不思議なヤツだ 食べた後、
ヤツは食器を片付けようとする
「あぁいいよそれくらいやるよ」
「え?」
「だからそれくらいやるって置いといて」
そう言って奴の食器を片付ける そして洗う
ヤツはどうやら仕事を始めたようだ 俺もsnsをいじる師匠にdmを送る
今日の料理です、レシピは。。。。 しばらくして返信が来る
あえと:おーいいね今日もうまそうだ、やっぱり作る相手がいるっていいねー愛があるよ 愛。。。
あいってなんだよわからねーたまに師匠はこういう風にわからないことをいう
あーわからねー わからないが最近わかったこともある、
綺麗な料理を作ってそれを食べることで壊すこれが僕にとっては堪らないということだ
「うんぅ」
なんかうなされてるな、また寝てるのか 綺麗な半月が出ている
もう宵闇か 壊してーな
「君ぼくが必要かい?」
突然声をかけられる
「は」
「私は必要?」
おいおいなんだなんだ
「いきなりなんだよ」
「いきなりじゃないんだよ」
「どういうことだよ」
「まぁ考えておいて」
そしてヤツはまた事切れたように寝てしまった。 なんだよ、もしかして僕が触れたせいで。。。
僕が触れると関わるとその人は不幸になっていってしまう
何故かはわからないし、本当かどうかはわからないが 何回も何回もそんなことがあった、
死んだやつもいた だからこそ奴らを不幸にした僕は壊してしまった僕は 幸せになってはいないし、これ以上触れてもいけない いけない、いけない、
だけどヤツは今までそんな感じはなかったのに
なんで、なんで、わけがわからない わからねーよ
しかし考える 何故ならヤツはどこか悲しそうにそして、
あいつらのように そんな表情をしていたから 怖いなまた独りになるのか 僕は沈む考える、
彼女のことを意識して沈む 宵に闇夜が老けていく
Side凛
夕闇とまどろみの中 私は眠る 寝ていることがわかる
僕と私がいる場所はチグハグな世界 朝で昼で夜で全ての時間がある世界
そこで僕は私たちは椅子に座り向き合う この世界はいわゆる僕と私の精神世界
僕は私と向き合う この世界でどれくらい私と話してきただろうか
あの日、私の幸せを拒絶し、僕の幸せをとった日から あの日、僕が幸せを選択して
、私の幸せを捨てた日から 僕たち私たちは、話してきた
「「もうこんな話無駄だよ私、もう賽は投げられたんだから」」
(賽を投げたのは、僕でしょ)
「「うん投げちゃった」」
(投げちゃったって、本当に勝手なんだから僕は)
「「でもでも私だって勝手じゃん、だって彼と幸せになるために僕を勝手に作ったんだから」」 (違うよー僕が勝手に生まれたんだよ壊れた私から)
「「へーそういうこと言うんだ」」
(いうよー事実だもん)
「「あっそ、で今更出てきて何の用なの?私」」
(違うよずっといるよ僕、)
「「ふーん、てっきり幸せに慣れそうだから出てきたのかと、残りかすの私」」
(でもその幸せは僕が壊したじゃん、彼の真似事?おままごと?)
「「僕の大好きな彼のためならなんでもやるよ、おままごとでもね」」
(僕のね、私が最初に好きになったんだからね、全くひどいよね)
「「彼のこと拒絶したくせに」」
(でも彼は好きだよ、どーしようもなくね)
「「私のせいで、彼は今ああなってるんだけど?」」
(知らないよーそんなことは)
「「はぁこの会話何回めなのさー」」
(8907086回目だよ)
「「そういうことじゃないんだけどな」」
(そういうことだよ僕)
「「はぁ消えてよ私、邪魔だよもう彼は僕のものだ」」
(あーご飯の匂い、私が貰うね)
「ん、、ご飯?」
「「私は卑怯だな」」
「あぁご飯だ」
「「そこに立ってるのは僕のはずなのに」」
「ご飯、ご飯やったね、、、、」
「「憎らしい」」
「あぁそんなに喜ぶことか?いつも通りだろ」
「「なんで気づかないんだよ」」
「えぇそんなこと言わないでよープンプンだよ」
「「このぶりっ子が」」
「いただきます」
「「いい加減にしろよ」」
「おぅ」
「おいしいね」
「「返せ」」
「よかった」
「本当に美味しい」
(あーずるいまだ一口しか食べてないのにー)
「おうオムライス好きだよな」
(私の好きなオムライス)
「君が作ってるからだよ」
(そんなこと言うんだへー)
「そうか」
「あぁいいよそれくらいやるよ」
「え?」 (え?)
「だからそれくらいやるって置いといて」
「「なんでなんで僕の使った食器触れるの?」」
(あり得ないあり得ない、あり得ちゃいけないのに)
あまりのことに呆然としながら僕は仕事をするが一切仕事が手につかない
彼は私が壊したせいで壊したせいで人と関わらなくなったのに、
その後色々あって触れられなくなったのに、
じっくりとねっとりと私だけを見えるようになっていくはずなのに
彼が彼のままそうじゃなきゃいけないのになんで?
私の知らない彼がいる、僕の知らない君がいる
「「ダメダメダメダメダメダメだめだめ」」 (やだやだやだやだやだやだやだやだやだ)
僕らは気づいたら私たちの世界に戻っていた 全てがあって全てがない世界
「「ねぇ」」
(なーに?)
「「僕は見てもらえないのか?」」
(わからないよ)
「「え」」
(だって彼は彼の世界を作り始めてるから)
「「私の知らない彼?」」
(僕の知らない彼)
その瞬間宵の闇に落ちる沈む飲まれる やみは広がっていきそして
「「僕は、、僕は」」
「君ぼくが必要かい?」
思わず君に問いかける
(私は、、また見つけてくれない?)
「私は必要?」
(聞かなきゃならなかった) 「
いきなりなんだよ」
「「(「いきなりじゃないんだよ」)」」
「どういうことだよ」
「まぁ考えておいて」
それは僕が絞り出した最後の一言
私と彼との隠れんぼ
宵闇に沈んでいく
宵闇に隠れていく
私を見つけて
僕を助けて
僕と私は大好きな彼を見ているよ
ずっとずっと見ているよ
(沈む)「「沈み」」
『『飲まれて』』(呑み込む)
ねー見てよ僕を私を見つけてよ
(宵闇に 溶けてなくなり かくれんぼ)
「「宵の晩 紛れ紛れて クサノオウ」」
「(宵闇に 浮かぶあなたは 望月よ 眺め眺めて 夢のまた夢」)
大好きだよ 愛おしいよ
見てくれてありがとうございます