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AI ray(エイレイ)~小さな蛇は夢を見る~  作者: 紙木 一覇
前章 ~小さな蛇は夢を見る~
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第87話「脳みそぐちゃれ!」

いらっしゃいませ。

 仮想災厄ヴァーチャル・カラミティ


「――知ってるわよ」


 だからこその睨み。


「そりゃ話が早い。

 良いか? ここでオレの本当の力を使われたくなけりゃ向こうの【魔法処女会(ハリストス・ハイマ)】をぶちのめすのに力貸しな」

「お断りね」


 ランプの火が一つ消えた。すると。


「――⁉」


 アエリアエの胸が弾けて穴が開く。


『ちょ⁉』


 流石にまずいと思ったのか実況の言葉が乱れた。オレにも人を殺したように映った。他の皆もそうだろう。戦っていたふた組みも思わず手を止めていた。


「システム修復」


 だがアエリアエの目が点滅して体が治っていく。


綾音(アヤネ)、来て」


 聖女女子が北海チームの魔法処女会(ハリストス・ハイマ)メンバー・魔法の杖を操っていた女子――綾音――を呼び寄せる。綾音はすぐに駆けつけて、アエリアエを中心に聖女女子の正面に位置した。聖女女子はチョーカーに触れて通信機能をオンにする。オレと涙月(ルツキ)の持つチョーカーにも受信中のランプが点った。


胡々(ココ)から日本支部魔法処女会(ハリストス・ハイマ)メンバーへ。仮想災厄ヴァーチャル・カラミティの一つ『人類侵入プログラム』アエリアエ・ポテスタテスを確認。これより削除します」

「オイオイ何してんだお前ら⁉」


 いきなりな同士打ちに敵も加わって動揺を隠せない両チーム。それぞれのバトルを放棄して集まってくる。


「彼は害悪。わたしと綾音はこれよりこの男を排除する、現時点でわたしの言葉の意味が理解できず戸惑うなら手を出さずに離れてなさい。でないとどうなっても承知しないわよ」

「胡々? どうしたんだ?」

「離れるのを勧める」

「そうだな」


 体を修復し終えたアエリアエが傷ついていた部分を指でかきながら事もなげに言い放つ。


「離れねぇと、いや~なもん見るぞ!」


 ゾ……。


 気温が下がったように感じた。肌には鳥肌が立っていて身震いを何度かする。これは――殺気? 心底から浴びるそれに涙月(ルツキ)は自分の腕で体を抱きしめた。


「「「――⁉」」」


 何かが脳裏にちらついた。何? 目を開けているのに……。視界が真っ暗になって晴れた時にはオレは椅子に座っていた。……痛い……痛い! オレが座っていたのは棘のついた拷問椅子で。

 叫びたい。いや叫んでいるのだろうか? 背中からお尻、足に棘が刺さって激痛を感じる。涙が止めどなく流れていてじたばた暴れるも体を拘束するベルトが外れてくれない。


「アエル!」


 呼んでも現れない。どうした? なぜ来てくれな――⁉ 頭に衝撃が走った。

 脳が麻痺したのか一瞬痛みが感じられなくなって、代わりに。


(ヨイ)!』


 アエルの声が聞こえた。


「――え?」


『戻ったか。やはり【紬―つむぎ―】には仮想災厄ヴァーチャル・カラミティに対抗できるものがあるらしい』


 幻覚? 頬をさすってみると本当に涙が流れていた。服の袖で涙を拭い、ハッとして隣を――涙月を――見た。


『気絶しているだけである』


 彼女のパペット、クラウンジュエルがグッタリする涙月の頭にちょこんと乗りながらそう言った。オレと同じで涙月も涙を流していて、呼吸も荒い。


「大丈夫なの?」

『イメージ侵略からは脱したのである』

「イメージ侵略……」

『あれが脳にウイルスを流したらしい』


 アエルの言葉に顔を向けてみると、アエリアエが唇の端を釣り上げながら倒れている人たちを満足そうに眺めていた。

 仮想災厄ヴァーチャル・カラミティ――アマリリス無力化AIプログラムのはずだったが、これ明らかに人間を対象にしていないだろうか? いや、それは後回しだ。今は!


「ん?」


 オレの動きに気づいたアエリアエが顔を向けた。と同時にその顔が歪んだ。シールドを越えた『血王(チオウ)』の牙を前にして。


「――っち!」


 舌打ちをしつつ瞬時にUFOから攻撃の光を放つ。だが一歩遅い。牙は既にアエリアエの上下にあって、攻撃を受けても反動で噛み殺せる。はずだった。アエリアエが粒子にさえならなければ。


「――⁉」


『覇王』の頭に乗っていたオレは光の粒となって消えたアエリアエを目で追う。アエリアエは別の場所で体を再構成し、じろりとオレを睨む。


「【紬―つむぎ―】――アマリリスに標識をつけた一人か」

「皆を解放しろ!」

「嫌だね」


 頭上にあった影が消えた。上を見るとUFOの形が変わっていて、十機の新型UFOになっていた。


「潰せ」


 UFOが目に見えない速度で『覇王』を殴り飛ばした。投げ出されたオレを『泉王(イズミオウ)』が頭で受け止めてくれるもすぐに別のUFOが追ってきた。速いなんてもんじゃない! UFOはアエルの首の間を縫って着実にオレを追ってくる。だから見逃した。


『一刺し必中!』

「――⁉」


 UFOの三機が突然吹っ飛ばされてアエリアエの表情が止まる。乱入したのは――


「平気よー君⁉」

「大丈夫、涙月」


 回復した涙月だった。アエリアエは彼女の乱入に表情を凍らせていたがすぐにまた唇の端を釣り上げる。


「じゃあこう言うのはどうよ?」

「?」

「空を見な」


 視線を外すのは危険だと思いつつも、ソっと目を向ける。向けて、ぞっとした。


「火の玉」


 巨大な火の玉が幾つも降ってくる。


「ジョーカー。隕石だ」


 洒落にならない。核爆発より酷い惨状になるのではないか? ――まともに受ければ。


「『覇王』!」

『了解した』


『覇王』の口に赤い光が集まってきて、隕石に向けてそれを放つ。


「――⁉」


 隕石が消えていく。『覇王』のジョーカー、過去の時間消滅。隕石の存在した時間は消滅した。


「へぇ⁉ へぇへぇへぇ! なんだお前雑魚じゃなかったのか! ならこっちも本気で行くぜ! 脳みそぐちゃれ!」

お読みいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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