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AI ray(エイレイ)~小さな蛇は夢を見る~  作者: 紙木 一覇
前章 ~小さな蛇は夢を見る~
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第59話「オレだって負けませんよ」

いらっしゃいませ。

「やー遊んだ遊んだ」


 ホームに戻ってきてう~んと伸びをする涙月(ルツキ)。あまりポイントは気にしてなさそうだけど、オレたちは突破できているだろうか?

 周りを見回してみると笑っている少年少女、泣いている少年少女の姿が見える。本意な戦いができた人もいれば不本意に終わった人もいるのだろう。それでもバトルは一次終了。たとえ今日負けても恨まず妬まず次の大会にかけよう。今日勝ったなら明日のバトルを抜からず駆け抜けよう。

 ……や、絶っ対負けたくないなやっぱり。

 はてさて、今日の運命や如何に?


『第一次予選突破十名を発表します!』


 ざわめきが止まった。


『呼ばれた方は壇上にお上がりください!

 第十位! コリス・冥・ロストファイア選手!

 第九位! 可愛(カワイ) 村子(ムラコ)選手!』


 おお、あの二人か。そう言えばオレたち魔法処女会(ハリストス・ハイマ)に仮入会させられたんだっけ。何やらされるんだろう。


『第八位! 狩松(カリマツ) 勝利(ショウリ)選手!

 第七位! 前野 (マユ)選手!』


 繭、良かった、バトルフィールドで見なかったけど順調にいったみたい。


『第六位! (ハレ) (カスミ)選手!』

「お兄さまー!」


 オオ? 胡桃(クルミ)さんのお兄さまって彼か。


『第五位! 高良(タカラ) 涙月選手!』

「いやっふ――!」

『第四位! 天嬢(テンジョウ) (ヨイ)選手!』

「い、いやっふー……」


 涙月に無理やり右手を挙げられる。いや無表情もあれだけどこれはこれで恥ずかしい……。


『第三位! 遊佐(ユサ) (ユウ)選手!』


 ユニコーン使いの急造パーティメンバー。助けてもらった恩があるけど、本人的には医療の件と相殺させているかも知れない。


『第二位! 地衣(チイ) 氷柱(ツララ)選手!』


 会場がざわめいた。前回の中学生覇者、それが第二位。


『第一位! ソリイス・卵姫(タマゴヒメ)選手!』


 聞いた名だ。誰だったか? オレは壇上へのミニ階段を登る選手を見る。その格好はコリスや村子さんのそれに似ていて――そうか、【魔法処女会(ハリストス・ハイマ)】日本支部長! なぜ魔法処女会(ハリストス・ハイマ)が参加したのかは不明なままだけど、三人も予選突破できたのはきっと良い事なのだろう。


「村子に聞きましたよ。仮入会」


 壇上で下には聞こえない薄い声。卵姫さんの囁きだ。


「これで魔法処女会(ハリストス・ハイマ)は予定人数をクリアできました。願わくは同チームになれるよう。

 ただ、この国の代表は頂きますよ」


 む。


「オレだって負けませんよ」

「ふふ、お手柔らかに」

『以上十名となります! 皆さま紆余曲折恨みも尊敬もあるでしょうがそれらは一旦置いといて! 盛大な応援をよろしくお願いします!

 では明日、二次予選までごゆっくりとお休み下さいませ!

 解散!』






「他の部門はどうなったかな?」


 主にお姉ちゃん。

 オレはホロスクリーンに映る映像チャンネルを大会の中継チャンネルに合わせる。も、既に中継は終わっていて、今はバトルのダイジェストが流されていた。お姉ちゃんが戦っている様子がチラホラと観られるがかなり端折られていて実際どんなバトルだったのかがわからない。

 一方で上位入賞者のバトルは長々と流れている。……ダメだったのかな? そう思って観ているともう一度お姉ちゃんが映った。今度はあるバトルの最初からだ。

 お姉ちゃんと小さなパペットねうねうが稲穂の海に立っている。黄金の稲穂。美しい草原にして海。田舎の風景。


「――?」


 高校生のフィールドではああいった風景だったのだろうか?

 しかしてその考えは違った。

 相手の男が何やら叫んだあと稲穂が波打ってとある形のミステリーサークルを作り出したからだ。

 稲穂が急速に伸びて蔦となり、ねうねうを襲う。


 あれがパペット⁉


 ライガー――ねうねうを囚えようと稲穂は次から次へと伸びる。だがねうねうの移動速度には追いつけず、ならばとねうねうの行き先の稲穂が伸びて前方からねうねうを狙う。ねうねうは大きくジャンプしてそれをかわし、尚も伸びてくる稲穂の先端に足を置いて稲穂を伝って降りては昇がりを繰り返す。

 その時男が再び何やら叫ぶ。するとミステリーサークルが消えて別の模様になった。途端イネの花が咲き乱れて香りが充満する。お姉ちゃんは鼻を押さえて香りを遮断しようとするもダメだったらしく、顔をキョロキョロとさせている。実況の話によると幻覚症状を引き起こす技らしい。今のお姉ちゃんの目には何が見えているのだろう? そう思っていると今度はお姉ちゃんが叫んだ。

 ねうねうの姿が銀河に変わり収束する。黒い毛並み、白い爪、銀河色に輝く炎のような鬣。普通のライガーよりも一回り大きい体躯。ねうねうのLv100の姿だ。

 ねうねうは高く高く宙を蹴って昇り、――スゥ、と空気を大きく吸った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ォ!


 ねうねうから吐き出された空気の圧力が稲穂を地面ごと削り、稲穂のライフが大きく減る。劣勢になったのを見た男は再び何かを叫び、サークルの模様がまたも変わる。今度は稲穂から水が立ち昇った。それはねうねうの位置すらも高く超えて、雲にまで届くかと言わんばかりの高度で花火のように弾けた。小雨となって降り注ぐそれをお姉ちゃんとねうねうは浴びてしまい、二人がバランスを失ってふらついた。


 ――酒だ。


 お姉ちゃんとねうねうはつまり酔った状態を再現されているのだ。

 サークルの模様が変わり、再び稲穂が伸びた。お姉ちゃんとねうねうが拘束され、サークルの模様がまたも変わる。穂が離れ、幾千・幾億・幾兆の粒が二人を襲う。けれどその時には拘束が解けていて――どうやら同時に複数の能力起動はできないらしい――ねうねうの上空に草原が出現した。ねうねうのジョーカーだ。草原から何体もの動物が降りて来て二人を穂から守って消えていく。しかしすぐに別の動物が降りてくる。男の傍に降りた象が長く太い鼻を大きく振って男に一撃を加えた。パペットはホログラムだから実際に男を吹き飛ばしてはいないが男のライフは大きく削られ、そこに草原自体が降りてきた。

 男の顔が引き攣り、稲穂の海は草原とぶつかってバラバラになる。草原の方も一緒に砕けてしまうが稲穂と違ってパペットではないからねうねうにダメージはいかず、稲穂のライフが0になった。

 つまり――


『勝者、天嬢選手です!』


 お姉ちゃんの勝利だ。

 その後いくつかのバトルが映され、予選突破ユーザー発表。お姉ちゃんは第七位で突破となった。

お読みいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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