第315話「できたら惚れるかも知れんな」
いらっしゃいませ。
是非に読んでいってください。
☆――☆
時は少々遡り、一時間前――
「これは……」
アトミックの指の先、光の壁に触れるそこから火花が散っている。
「無理っすね、侵入できません」
そう報告する相手は第零等級を欠いた星冠の暫定リーダー、ララ。ワタシ。
「剣でも槍でもミサイルでも無傷っす」
星冠総勢五十名余り。
魔法処女会総勢三百名余り。
王室ネットワークからの使者アンドロイド総勢十体。
アンチウィルスプログラム総勢十名。
パトリオット総勢一名。
そして切縁・ヴェールに敵対する各国軍――統一政府有志国家軍二万名余り。
対するは
切縁・ヴェール。
そして切縁・ヴェールに同調する各国軍六万名余り。
ジャンヌ・カーラ周辺国で戦闘が始まって既に三十分が経過し傷を負っていない者など最早存在せず。
風切り音が聞こえる。こちらに向かって飛来するミサイルの群れだ。それらはジャンヌ・カーラを覆う光の壁にぶつかって炸裂し、火炎と黒煙をまき散らす。雲が蒼い空の半分程を染めている中に暗雲として広がる黒煙は不吉の表れのように見えて。
「アトミック、貴方の能力で中に『潜れ』ない?」
「やってみます」
指先に集中し、海中に潜る要領で光の壁への侵入を試みる。けど。
「……ダメっすね」
「できたら惚れるかも知れんな」
「もっと頑張ります!」
ゾーイに言われてやる気を出すアトミック。愛は何より強いと言うけれどそんな都合の良い展開にはならずに。
「……ゴメン無理」
「……………………………………………………………………………………役立たず」
「すんません!」
あ、ゾーイの表情が曇りに曇ってる。できれば舌打ちの一つもしたいのかもだけどそこは一応女の子。
しかも自分に惚れてくれている男に向かってするのは忍びないと自重している表情だ。
「御三方~!」
戦闘の爆音に負けないように大声を張るのはアンドロイドのクィーン・パフパフ。
「上の方はどう⁉」
パフパフのそれには劣るものの精一杯声を出すワタシ。それに上空に舞うパフパフは。
「ダメです~! この壁きっちり天井があります~!」
「んじゃ天井に向けておっきなの一発やっちゃって!」
「了解で~す!」
おっきなの。それは勿論。
「核レーザーいっきます!」
手加減一切なしの核レーザーの青い輝きが遠慮なしに撃ち出される。天井部に当たったそれは花火の如くに四方八方へと飛び散って、
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ⁉」
「でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」
友軍にすら慌てさせてしまった。
「てへ」
「「「てへ、じゃねー!」」」
「ララさま~! ダメで~す!」
「「「あっさり終わるな!」」」
そんな抗議の声は無視してパフパフはワタシたちに合流する。
「せめてこの光の壁の発生装置をどうにかしないと」
「しかし姫さん、オレだったらまず間違いなく壁の内側に配置しますよ」
「そうね……当然よね」
大事なものはしっかり守られる。これはこちらもあちらも同じだろう。
「なら、やはり幽化さまの『吸収』が必要になるか……だが……不機嫌になるだろうね」
様子を想像し、四人は渋面になった。
「せめてこの場の敵ぐらいは掃討しておきたいわね」
それでご機嫌を取れればと思う。
「んじゃ今は光の壁は置いときますか。姫さまたちはオレからあんま離れないで下さい。パフパフ、あんたはどうする?」
「ロシアからこっちに向かって来る【アルターリ】がいますんでそちらを排除してきます」
「一人で?」
「あ、失礼しました言葉足らずです。【アルターリ】は機械なのでクラックして同士討ちをさせます」
怖いのか凄いのか。
「そ、そうか」
「では行ってまいりまーす」
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次回もよろしくお願いします。




