第307話「貴女の先祖は――」
いらっしゃいませ。
是非に読んでいってください。
卵の中から圧倒的な程の威圧を感じる。よー君やユメから感じられるものに似ている。これは――神の威圧だ。
「やっぱり」
「え?」
ピュアの持つ銃の口が私ではなく卵の方に向いていた。
「第五の元素、思念。それに第六の元素――思考」
「思考……」
「けど貴女の制御下にはないみたいね」
希望がピュアの銃に集まって、トリガーに触れている指がゆっくりと引かれて、希望の込められた光の十字が放たれた。
「――!」
卵を貫く光の十字。卵の殻は粉々に砕け散り、中にあったもの――六色の光の粒が露わになる。
今一度銃に希望を込めるピュア。今度は光の粒を撃ち抜くつもりだろう。
「まっ、待って!」
私は体を動かそうと四肢に力を入れる、が希望の十字に固定されて全く動かない。
「えっと、えっと……切縁・ヴェールはこの子を欲しがってるんじゃないの⁉」
ぴくり、とピュアの目元が動いて。
「……この時間ここでの発現は必要ない」
「ほら! 冷凍しておくとか!」
「食品じゃないし」
ごもっともです!
そうこうしている内に光の粒は隣にある光の粒と融合し、また隣と融合し、一つの白い光になった。
トリガーにかかるピュアの指が引かれた。
「――!」
けれど、放たれた光の十字は白い光の粒に触れたところでぴたりと止まる。防がれた――と言うよりも停止させられた、って感じだった。
光の十字が崩れるように消えていき、白い光が強くなる。
「なに⁉」
その光に照らされて私を拘束する希望の十字も消えていく。自由になった腕で目元に影を作るも光量はどんどんと増して行き、
『ぴあ』
「――へ?」
光の中心に、小さな白い鳥が産まれた。
……はい?
『ぴあぴあ』
可愛らしく、否。超可愛く鳴く小鳥さん。姿もとても愛らしい。参ったねこりゃ。全米が涙するよ。
小鳥さんは体に比べて少しばかり大きな翼をパタパタと動かすと私の頭の上に乗っかった。フンはやめてね。出すのかもわかんないけど。
『ぴあー』
と鳴きながら私の頭を嘴でつついて髪の毛を咥えてみたりする。
えっと……この子が私の新しいジョーカー……なんだよね?
ピュアの方を見てみると彼女も彼女で戸惑い気味。まさかこんな可愛い子が産まれるとは思っていなかったのだろう。
「……ピュアさんや、この子どうすれば良いと思う?」
「……私に聞かないで」
オオ困ってらっしゃる。
「さっきまでわけ知り顔だったくせに!」
「そんな子が産まれるなんて聞いてない」
あやっぱり。
「んじゃどんな子が産まれるって聞いてたのさ?」
「……そもそも生物型とも聞いてないし……本当にその子が……?」
「だからどんなのが産まれるって聞いてたの?」
「……“産まれの灯”」
「“産まれの灯”って――あれ?」
世界は、宇宙は無から誕生した――
それはもう何十年も前から続く最有力な説である。
その無に最初に誕生したのがあらゆる可能性を秘めた“産まれの灯”と呼ばれるものだ。なぜ無からそんなものが誕生したのかは誰にもわかっていない。綺羅星とエレクトロンが完成させようとしているタイムポーテーションシステムで判明するかもと噂されているけれど、さてどうなるやら。
でだ、この子がその“産まれの灯”? そんなバカな。
「何で……私がそんなの産めるのさ?」
「それは貴女が――」
そこで言葉を区切るピュア。
ちょっとちょと、気になるんですけど。
「何かあるなら教えてよー」
わざとらしく唇を尖らせてみる私。ぶりっ子っぽくね。
「切縁に必要ないって言われているし」
「状況は刻一刻と変化するのです」
教えなさい。お願い。
「…………ちょっと連絡取ってみ――」
「ダ―――――――メ!」
「……何で?」
「逐一誰かの同意を求めるのは自主性のない人だけですよ」
本当は切縁・ヴェールに連絡入れられたら「ダメ」言われるのが目に見えているからだけど。
「ほれほれ言ってみ」
「…………」
私から目をそらして考え込むピュア。なんだなんだ可愛いじゃないか。
「……貴女は――」
「うん」
「切縁の血を引いているから」
「……………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………うん?」
今なんてった?
「えと……りぴーと?」
「貴女の先祖は切縁とそのお兄さんの子供」
「……………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………アハハハハ……………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………
………んなアホな!」
お読みいただきありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




